1555年 三好騒動、大内畿内進出

「ああ〜なんかこう興奮が足りない···」


「義植様、今に始まったことではないですが、あなたの特殊性癖の為に神は神秘を与えたのではないと思いますが···」


「え? 義植様って特殊性癖なのですか?」


 茶室にて私は龍円とその部下の鍋島直茂と一緒に茶を飲んでいた。


「ナベシマーなら話しても良いかな。私人体排出とか人体実験とか人体錬成とか脳移植とか薬を使った肉体改造とかしてるよ〜」


「とんでもないこと言い出しましたよ! え、龍円様冗談ではなく?」


「ああ、敵対派閥を粛清したり、時には侍女、時には兵士を···」


「ええ···何してらっしゃるんですか···」


 茶を吹き出して驚く鍋島に対して私は新しく茶を点てながら話をする。


「特殊な性癖も使い用によっては有用になるのですよ。変態が時代を作ると言いますし」


「となると職人達の中や絵師で凄まじい春画や木像が量産されているのは···」


「テヘ!」


「金出してたの義植様かい! あなたは元禁慾の坊主だったはずでは!?」


「そんな坊主も今では30人の子供がいますからねぇ」


「龍円様もなに納得してるんですか!」


「クックク、エロは世界を救うのです。まぁ天狗になるって言って政務をほっぽりだして城から飛び降り自殺をした元管領も居ましたし、父上も男色酷すぎて家臣統制が崩壊しましたし···」


「それ、変態が国を混乱させてませんか?」


「まぁ中華の皇帝も何故か霊薬を求めて水銀の毒による中毒死を繰り返していますからねぇ」


「異国でもそんなんなんですか···というかキリスト教でしたっけ? この国の事めちゃくちゃ褒めますが唯一淫乱過ぎるとか春画については信者に禁止令を出していましたが、マリア像で行為を行って破門になった一派がマリア信仰を開始したと聞きましたが」


「ええ、そんなんでキリスト教分裂したのかよ」


 龍円はため息をつくが、私は日本人らしいね〜と笑っていた。


 なおこれには温厚なザビエルもブチギレていた。


「で、特殊性癖だけど実は隠れて色々やってたんだよね」


「何やってたんですか?」


「人間に昆虫の性質の付与をしたり···とか?」


「昆虫の?」


「女王蜂って精液を一生体内で蓄える性質があるんだよね。だから受精卵を体内で一生保管し、毎年出産を行う···生命への冒涜と思いますか」


「相変わらず酷いことをするな」


「ええ···」


 鍋島はドン引きしていたが更に話を続ける。


「人体への探求は人を神秘へと導く。まぁ私の技術では一代限りで失効してしまう程度のものですがね···まぁそろそろ次の性癖を試したくなりましたね」


「ほう? 何でしょうか。聞きたくないですが聞かないと欲を抑えられないでしょ?」


「流石龍円、わかってるね」


「ではなにを?」


「人体錬成により人は泥から作られたという神話の再現は行われた。では次は伝説の再現をしようかと」


「伝説?」


「例えば源頼光と彼ら四天王の再現等はいかがでしょうかねぇ。彼らを性転換させたら凄く興奮しませんか」


「うわぁ···」


「えぇ···昔の人物を復活させるってことですか?」


「いえ、彼らの伝説を模した存在を作るだけですがね。あぁ、酒呑童子や茨木童子、その四天王も復活させよう! 楽しくなってきた!!」


「頼みますから民に被害がいかないようにしてくださいよ」


「えぇ···これが本来の義植様ですか···」









 私は今度は伝説的存在の復活をしようとその素材の為に貴重な賢者の石を使用し、世界樹を生み出した。


 世界樹は瀬戸内海の大黒神島に植えられた。


 世界樹は元になったのは桃の木であり、凄まじい勢いで成長していった。


 一日1メートル成長し···100メートル以上に大きくなった半年後には黄金色に輝く桃が実った。


 その実を食べた者は叡智が流れ込むが知識量に耐えきれずに死んでしまう。


 島民は恐れ、当初の私の命令通り熟れた果実を私に送っていた。


「まぁ事故は仕方がないよね···畿内にも幾らか行ってしまったらしいけどこれは錬金術に使う危険物質だからねぇ」


「さて、神は人に知恵を与える林檎···知恵の実を食べることを禁じたけれど食べてしまった人は楽園から追放された」


「まぁ私は神ではないからその模倣でしかないけどねぇ」


 私は12体の英雄を作り出した。


「桃太郎と源頼光及び四天王、酒呑童子とその配下の五鬼。まぁ全員女の子になってもらったけど力は本物だ。まぁ力ありすぎるから試運転として台湾に投入しようか」


 私が生み出した疑似英雄12体は台湾に渡るとその怪力や武力をもって敵対部族を次々に制圧。


 後々台湾の12英雄と言われることになり、1556年をもって台湾全土の制圧が完了するのであった。








 一方で、畿内に流れた黄金の桃の行方だが、度重なるストレスにより鬱状態になっていた三好長慶を励まそうと親族衆が買い取り、三好長慶に献上されて、親族衆と一緒に食べてしまった。


 三好事件と言われる集団変死事件が発生。


 亡くなったのは三好長慶、十河一存、三好実休、三好義興他、三好政権を支える重臣10名。


 発見された時には亡くなっており、毒殺と断定され、まず料理人達が処刑、次に桃を卸した商人も処刑された。


 三好政権の中軸が一気に亡くなったことで安定し始めていた畿内の治安は崩壊。


 松永兄弟と三好三人衆、篠原長房による暫定政権が発足し、制御を試みるが、死を隠すことが不可能···というか足利義輝が周辺大名に三好討伐の号令を発し、六角、朝倉等の勢力が呼応し、再び京が戦場となってしまう。


 これが1555年初頭に行われた三好騒動であり、毒殺から一連して三好の大乱とも呼ばれる。


 三好政権誕生から僅か6年での瓦解により畿内の混乱は頂点に達し、朝廷より内閣府に畿内での室町幕府の権限を全て移譲し、畿内平定及び安定化の号令が私に届けられた。


「ええ、なんで連鎖爆発してるの?」


 と普通毒見してから食べるでしょと思ったが、中華でも水銀飲んでるくらいだから薬と思ったのかな? 


 と、納得する理由を考えた後に、畿内制圧の号令を九州と中国地方の大名に発表。


 山陰、山陽、中国地方と三方向から総勢10万の兵を動員して制圧を開始した。










 四国地方方面は三好本拠地である阿波と讃岐が存在し、西国海軍による上陸作戦で多方面から海岸沿いを制圧。


 畿内との連絡網を遮断し、制海権を奪取した状態で血気盛んな南九州の兵を投入し、島津兵達による圧倒的な攻撃(戦術島津)により野戦にて多くの死傷者を出した三好家は各城に籠ったが、新兵器であるカルバリン砲を投入。


 四国制圧に1万発に及ぶ砲弾を消費したものの、三ヶ月で二国を制圧することになる。


 山陽街道は毛利が大暴れであった。


 元就がハッスルして大内から物資を提供したり前金として銭をたんまりもらったことで裏切りや一揆を誘発。


 尼子支配によって弱体化していたこともあり、有力な国人や大名が不在だったため、毛利による本気の攻勢で城は次々に陥落していった。


 特に毛利両川の本領発揮であり、毛利本家も合わせて5日で備中を平定、続く備後に突入し、戦国の暗殺王である宇喜多直家が毛利に同調したことでこちらも短期間で制圧され、畿内への道が開けた。


 一方山陰街道では北九州軍が伯耆を通過し、但馬に突入。


 衰退著しい山名氏では九州の精鋭を抑えることは叶わずに短期間で陥落した。


 そして大内本軍である4万人は毛利が備後に突入した時に海上輸送で堺に上陸。


 堺衆は畿内混乱を望んではおらず、三好が崩壊した今、大内に従うことを決めた。


 畿内に降り立った私はこう宣言した。


「さあ、50年前の続きを始めよう」


 1507年に祖父である大内義興が畿内に突入したように、約半世紀後に再び大内は畿内に突入するのであった。

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