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都心のやや北部の国道に面した二階建てで、一階が駐車場と言う土地柄的な店構えのファミレス『ガスディー城北店』駐車場奥に……Ⅼマークの覆面車『1104』ナンバーが前向けに止まっている。
その二階の店内……奥の窓際テーブル席に、芝田竜次と南城真美が隣り合って座っている。テーブル上に展開されているメニューはハンバーグランチセットサラダ添えに、エビドリアドリンクのみセットで、カップの中の色合いからコーヒー。
「どうしてだ? 南城」と、やんわりと問う芝田。
「だから、恋人設定必須でしょ、竜次さん! あれから解除してないし」と顰める真美。
「おお南城もキレるんだ」
「竜次さんじゃなければ、グーパンチかましているわよ。往生際悪し野郎って嫌いだし」
「なんか、別のキャラが……」
「私だって、ありますよ、表裏」と掌の裏表を繰り返す真美。
「……まあそうだな。生身の人間なら感情はあるな」
「竜次さん!」と、その肩に頭部を預けて恋人的甘えを行う真美。
「おい!」と押し返す芝田。
「もう観念して、本当に私をカノジョにしてよ」と、また頭を肩に預ける真美。
「ファーストネームで呼ぶなぁー」と芝田。
「どうしてです?」
「真のカノジョ限定だ」
「でも……デカ長さんだあってぇ……」と真美。
「ああー彼奴は……別」
「えっ? それって! もしかしてぇー」と真美。
「そう」
「竜次さんってぇー……ジェンダー」
「ちっがぁーう!」
「――」とマジオコな迫力に押されて、普通に座り直す真美。
「馴染みダチだ!」
「え、えぇえ…………えぇ!」と脳天直下的に驚く真美。
「奴は準キャリで各上に成っちまったがな。ははん」とエビドリアをパクっとやる芝田。
ツインの尖り帽子屋根ホテル前ロータリーで、手荷物多めでタクシーを降りて……、
「どこかでって思ってはいたけれど」と仁美。
「そう。何処にでもいる女だよ、あたし」と妃美華。
「謙遜? 似合わないからそのビッジ面には」と仁美。
「なら、こんな美人。そうそういないから!」と気取ってお道化る妃美華。
「ぷふっ」と仁美。「イヒッ」と妃美華。『ははははは……』と馬鹿笑いする仁美と妃美華。
……玄関へと入って行くミリタリー仁美と赤髪妃美華。
ファミレス『ガスディー』店内の奥の席で食事する芝田竜次と南城真美。
「でね、竜次さん。お仕事なんだけどね。タレコミ(爆弾魔)の一件は?」と白い液体の氷入りコップを啜る真美。
「今のところ、現場の報告以外は、何も。あちっ!」と湯気立つコーヒーを啜る芝田。
「東京方面って、捜査範囲広過ぎよぉ。デカ長さん」と真美。
「仕方ないだろう、付近と、東北道と、タレコミだってガセの可能性もある。今のところ、まだ見ぬ本星候補な容疑者を刺激せずに探れって、一理だな、デカ長も」と芝田。
「じゃあ、ちゃっちゃと行くし。パクリ現場」と一気に所謂白いジュースを飲み干し、氷をガリガリ食べる真美。
「おお、そうだな」と急いで少しずつコーヒーを飲む芝田。「あち、熱いって」
「もう冷めてるし。相当なにゃんこ舌だね、竜次さんって」と呆れ顔の真美。
上目遣いの真顔でコーヒーを啜る芝田竜次。
尖りツインの帽子屋根のホテル内――女子トイレの個室に入っているホテルメイド姿の北条仁美が、蓋をしたまま便座に座って……スマホで、父さん宛にメールする。
「姉さんと母さんの仇、泊ってたけれど、何かあったみたいよ。父さん」と打つ仁美。
「銀次。あいつは、銀座で買い物中の娘を誘ってレイプした上に、心配でとるもの取らずに駆け付けた母さんまでをも亡き者にした!」と父さん差出名の返信が届く。
「アタイはまだ、中学生で、父さんも仕事休めず、母さんに任せるしかなかったよね」
「状況証拠は、銀次を示している。当時はもう各界の権力者となっていたその兄、金雄の舎弟というだけで、警察も深くは追及できずじまいだった」
「まもなくだね、姉さんの命日……」とくすりと鳴き声をたてるが、顔を歪め堪える仁美。
「トカゲのシッポ切りだが、後に警視庁の担当刑事らから届いた、調書を弁護士立ち合いで目にしたが。少し探偵小説齧りの素人のわたしにさえ、判断がついた。だが、物的証拠は出ていないと」
「そこで、ママの口利きからネットで見つけた闇のキャッチャーⅬSね、父さん」
「そうだ。闇には闇しかない! お! 何かあったとは? 仁美よ」
「小江戸支配人が、私服の男女を従えて、昨夜泊まったであろうスイートの銀次の部屋から出てきて。幼馴染で好敵手の真美っちだった。いつもの挨拶アニオタパフォーマンスしたから間違いないよ、父さんの好きだったボクシングの名場面のマジパフォーマンスをね」
「そうか。別件の警察沙汰か? ま、きな臭さは有名だからな。金雄七光りのくせして」
「そのことも含めて探るね、父さん。クラブしのぶで。具体的な証拠を」
「銀次の奴の店だ。だがくれぐれも気をつけてな、仁美」
はにかみニンマリした仁美がスマホの画面をタッチして、上を向き潤んだ目で笑う。
同・ホテル『QUEENのお部屋』内――リビングで買ってきた衣服をすべてソファやテーブルに広げている妃美華……。色やデザインの多少の違いは有れど、アウターコートのインナー臍だし、グラディエーターサンダルが基本のコーデっぷりだ。スカートかパンツは自在のようだが。満足顔の妃美華がフラッシュする。
ファミレス『ガスディー』を出る……フロントガラスの中に芝田竜次と南城真美が乗るⅬマークの覆面車。
尖りツインの帽子屋根のホテル内――女子トイレの個室から出るホテルメイド姿の北条仁美が、手洗いの鏡に写った自分を見る……。
同ホテル『QUEENのお部屋』内――リビングで広げた衣服をすべて交互に着て、姿見でコーデ具合を見ては、ときより頷き全身から閃光を放つ妃美華……。それはまるでコピー機が複写したかの如くに。
昔ながらな住宅やコンクリ建物街沿いの都内――通りを走るⅬマークの覆面車車内。運転する芝田竜次と、助手席に南城真美。
「え? こっちなの? 竜次さん」
「王子南から乗って首都高から東北道へと連絡する」
「その先って、東北……」
「確か栃木の県南だったよな、下野所轄署って」
「え? ああ、まあ……」とポシェットから紺のスマホを出してタッチ操作する真美。
横目で見る芝田……。「砕石所だな、現場は」
「出ましたよ、そうです。いま、データ送ってカーナビに……」と、また操作する真美。
カーナビ画面の地図に反応が出て! 導きルートラインが太青で道を指示する。
「え、ここって、山奥のぉ……虫がいっぱいいそうなぁ……」と身震いする真美。
「知らなかったのか? ファミレスであれだけの啖呵、切って! 苦手か? 虫」
助手席でしょげる真美を、横目で一瞬見て、その頭を撫でる芝田。
「触ったし。セクハラだしね」……外そうとする芝田の左手を抑えてなでなでキープする真美。「守ってね、竜次さん」
迫りくるインターチェンジ手前のドラッグストアーに入っていく……Ⅼマークの覆面車。
尖りツインの帽子屋根のホテル『QUEENのお部屋』内――リビングでフラッシュしたシルエットが露になると、マッパの妃美華がお目見えする。買ってきた衣服をすべて丁寧にたたんで、スマホでリサイクルショップを検索する妃美華……。
『Ⅿt.不二の湯』は閑静な住宅街外れの銭湯――昭和のころからその姿を維持している外観は柱の杉がささくれ年輪に彫りが深くなっていて。薄瓦屋根にちょんちょこりんな煙突が、遠巻きに背伸びを擦れば見えなくもない……。
同・内――湯船にとっぷりと肩まで浸かって泡にうたれている響太浪……。
「少年だって綺麗なお姉さんのヌードを堪能できたがぁ……」とザブンと上がって、頭に置いていたタオルを掴んで、「スローライフで。ここではコンプラ何とかも皆無だ」と歩いていく響太浪……お姉さんが戸口で迎え待つドアに入っていく……。
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