第6話 ウチの悪の科学者が飲んだくれるわけがない
「となると、この本はその理論が書かれている可能性が」
「うん、十分にありえると思うよ」
ピンクのモニターを撫でながらヒノキは楽しそうに言った。
「さて、幽霊の正体見たりだな。世の全ては科学で証明できる。あとは見つけるだけだよ。この本の使い方をね。さぁカスト君、セキュリティの方にケリがついたら手伝い給え。デビルレイが戻ってくるかこないかで、君の今月の給料が左右されるのだよ!」
カストにとっては死活問題であった。普段の生活に、仕送り、その他もろもろが出来なくなる事は世界が変わるよりも由々しき事であった。
しかしヒノキに雇われて、そこまで悪い思いはしてこなかったのでカストは頷いた。
「分かりました。自分は何をしたらいいですか?」
「今日は研究所に泊まり込みだ! 夕食の準備と夜食の買い出しを頼むよ」
元々、ヒノキはこの研究所に住んでいるので、事実泊まり込みはカストただ一人であった。
深夜ドラマの録画がまだだったなと思いながらカストは研究所を出た。ヒノキは人工知能のツヴァイとドライと一緒に一枚一枚本のページを捲っていった。
「文様において、共通点が見つかる物がいくつかあるね。全く意味が分からないのが問題だけど、分からないなぁ」
「錬金術、西洋魔導、宿曜術、陰陽五行、どれにも該当しないですわね」
「せやったら、だまし絵とか暗号が隠れてへんかサーチするは」
ヒノキは腕を組んで目をつぶった。そして腹の音が大きく鳴った。
「あぁ、もう無理、お腹すいたから考えられない」
ソファーに寝転がりながらヒノキはそう言って再び呻きだした。
「うぅーーーーーー!」
ピンクのモニターと黄色のモニターからも同じ呻き声が聞こえ出す。
一人と二機が不気味なうめき声を上げていたが突然、ヒノキの鼻がひくひくと動いた。食べ物の匂いを感じ取り、ソファーから飛び起きた。
「この匂いは照焼バーガー!」
ファーストフードの紙袋とスーパーの袋をいくつか持ったカストの姿がそこにはあった。
それが今晩の夕食である事にヒノキは頬を緩める。
さらにスーパーの袋には冷凍のピザが大量に入っていた。
どちらもヒノキの好きなジャンクフード。カストから紙袋をむしり取ると中のハンバーガーを食べ始めた。
「うんめぇー、冷蔵庫に確かビールがあったよなー」
ヒノキが冷蔵庫に向かおうとした時、ヒノキの目の前にロボットアームが伸びた。その先には冷えた缶ビールを持っていた。
「はい、お姉様」
黄色のモニターが点滅し、ドライがヒノキの為にビールを用意した事を語った。
「ドライ、何て出来た妹」
ヒノキが感動するとピンクのモニターもまた点滅した。
「お姉ちゃん、ウチもぉ!」
ロボットアームがポテトを掴むとそれをヒノキの口元に向けた。それをヒノキはパクりと食べる。
「このポテトうめぇー、何か入ってる?」
ただのファーストフードのポテトフライだったが、ピンクのモニターは激しく点滅すると言った。
「愛が入ってるんやって!」
「そうか、ツヴァイの愛がこもってるからかー、そりゃ美味いや!」
徹夜で本の事を調べると言っていたヒノキだったが、既にビールの空き缶が数本転がっていた。随分ハイペースで飲んでいるヒノキはカストに抱きついて絡んでいた。
「まったくデビルレイは何処いったんだよぉー! カスト君このやろー」
「ははっ、どうでしょうね?」
コーラを飲もうと手を伸ばしたら、コーラをロボットアームが取り上げた。
そして黄色とピンクのモニターが同時に言った。
「カスト、お姉ちゃん(お姉様)にセクハラするな!」
コーラを飲むのを諦めて、ポテトに手を伸ばすがそれもロボットアームが取り上げる。
溜息をついて少し考えるとカストは言った。
「はぁ、すんません」
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