第28話
俺は彼女に伝えるべきか迷ったが、秘密にしていたと思われたくないので話す事にした。
『時間の流れが違う事は、もう1つの可能性を示唆している。可能性は限りなく低いけれど、転移以外で地球に帰る方法があるかも知れない―――』
彼女が興味を持ってくれたようだ。だが余りにも可能性が低すぎて説明する俺自身も、確証が持ててない。でも帰れる希望が有る事は知って貰いたい。
『―――地球、というよりも太陽系って銀河の端っ子の方に位置してる事は知ってるかい?』
『え? そうなの? よく知らないけど』
『早く動く物は時間がゆっくり進むって理論があるんだ。銀河はグルグル回っているから地球って超早く動いてるんだ。だから時間もゆっくりなんだよ。逆にここは地球に比べて時間が早く進むから、あまり動いて無いと思うんだ。つまり、ここは銀河の中心に近い場所だと思う』
『・・・それが、どうかしたの?』
『ここの人達って昔、地球から来た移民だと思うんだ。地球人そっくりに進化するなんて偶然にしては出来過ぎてるからね。もし移民だとしたら、どうやって来たと思う?』
『えっ? 私達みたいに転移したんじゃないの?』
『その可能性もあるけど、転移で来れる人なんて少ないと思う。だから、どこかに宇宙船のような技術があるんじゃないかと思ってる。もし、地球とここが同じ銀河の中で宇宙船が見つかれば……』
『……夢物語ね。それって大昔の事でしょ? 見つかったとしても、まだ使えるとは思え無いわよ』
『転移する魔法のような事が出来る世界なら、宇宙船だって可能性はゼロじゃないだろ?』
『可能性ねぇ・・・どうせ探すなら宇宙船じゃなくて”どこにでも行けるドア”を探してよ』
それは国民的なアニメの話しだろ! 宇宙船よりも無茶振りじゃねーか。
『忘れて無ければ探すよ……そう言えば全財産使ったって言ってたけど住む所は有るの?』
『無いわよ~。だからお金ちょーだい』
清々しい程のおねだりだ。売りをしていただけの事はある。思わずお金を出したくなってしまうな。
『じゃあ、金は出すから商業ギルドに行って家を借りよう。その後、街の外でホーンラビットを狩ろう』
『えーっ。狩りなんてする必要無いじゃん』
俺が収納魔法を取得したのはホーンラビットを始めて狩った時だ。だから地球人がこの世界で狩りをしたらスキルかステータスか何かを取得出来ると思った。全く確証は無いが試す価値はあるだろう。
『デュオは作っただろ?』
俺は自分のデュオのステータス欄を表示させて渡した。
彼女も自分のを取り出して見比べている。
『それがステータスだ。ステータスが無いとスキルは取得出来ない。又はスキルを取得すると同時にステータスも取得するんだ』
『へー。じゃあ、狩りをしたら取得出来るの?』
『それは解らないが、試すだけの価値はあると思うんだけど、どうかな?』
俺たちが商業ギルドへ出かけようとした時、ドロシーが帰って来た。
ドロシーが俺たちを見た瞬間、俺を睨みつけるような眼で迫って来た。その眼には怒りとも憎しみとも思えるような、俺に対しての敵意を感じた。
だが、ドロシーは俺には何も言わずにリリナに優しく語りかけ始めた。
「大丈夫よ。あんな朴念仁に何されたって気にしちゃダメ。リリナは悪くない。悪くない。悪いのはあのダメ店長だから気をしっかり持ってね。・・・」
何がどうなってるのか全く理解出来ないが、ドロシーはリリナを慰めている。
どうして俺はドロシーに睨まれたのだろうか。
最近のドロシーって精神が不安定なのかな。計算を教え続けてるから疲れてるのかもな。今度、休みをあげよう。
「リリナ~。商業ギルドに行くぞー」
「リリナさん。何が有っても私はあなたの味方だからねッ」
えー。店長である俺の見方をしてくれよ。
店長なのに、俺だけ除け者にされてる気がする。
『ハァ……朴念仁』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます