第24話
「ドロシー。ただいまぁ。倉庫に在庫を補充したらから、確認しておいてくれ」
「ご主人様お帰りなさい。調理が終わったら見ておきます」
どうやらドロシーはピリヨとリィズに料理を教えているようだ。
図書館を出た俺はアメリカに転移して、コンテナの中身をゴッソリと回収してきたのだ。
今後は給料日の翌日に商品を仕入れに行く事になるだろう。現地のアメリカは丁度夜中で、誰にも気付かれずに商品を回収出来るので好都合だ。
だが、俺が扱っている商品は永遠に売れ続ける商品では無いだろう。
石鹸は消耗品とは言っても、高級品だし異世界産のもある。ある程度売れたら売れなくなるだろうな。
ライターも需要は有るが、ライター自体の寿命が長い。1つで2000回以上着火出来るから節約して使えば5年くらい使えるのだ。
今の売れ行きなら、半年後には半分くらいの売上に成りそうな気がする。今の内に次の商売を考えないとなぁ・・・
沢山売っても消費され続けて、売れ続ける物と言ったら……やっぱり食料品だろうか。
異世界定番の胡椒は・・・この国では見た事が無い。需要が無い物は高くは売れない。
「ドロシー。ちょっと訊きたいんだけど、塩や砂糖って高いのか?」
「んー。高いですけど、普通に買えますよ。塩だと1ムーア銀貨1枚で、砂糖は銀貨2枚くらいですね」
「・・・ムーア? ってなに?」
「店長って何処の国の人ですか? 量り升ですよ。量り升1杯で1ムーアです。……これが塩1ムーアです。少し使ったので減ってますけど」
そう言ってドロシーは袋に入った塩を渡してくれた。ズッシリと重い。2Kgくらい入ってそうだ。
塩が2kgで1000円。砂糖は1kgで1000円って事か。日本から持って来ても、大儲けするのは難しそうだ。
塩は海や岩塩でも取れるだろうから、安くても不思議では無いが、砂糖まで安いのか?
砂糖は高分子だから、植物が糖分を生成するにも太陽光が必要だと思う。こんなに薄暗い異世界で、どうして砂糖が安く作れるのだろう? 光が少なくても糖分が作れる特殊な植物があるのだろうか?
「ドロシー。砂糖ってどんな植物から作ってるか知ってるか?」
「え? さぁ、それは知りませんが、ダンジョン産ですよ。産出ダンジョンによって若干値段も違うんですよ」
「えっ!?」
今、ダンジョンって言った? ダンジョンって何だよ。異世界定番の、あのダンジョンの事か?
初耳だぞ! この異世界にはダンジョンがあるのか? ダンジョンで魔物を倒したら砂糖がドロップするのか? どんなファンタジーだよ! 想像が出来ないぞ。
「何を驚いてるんですか、店長。 塩や多くの食料はダンジョン産ですよ」
全部ダンジョン産!?
言われてみれば、城壁の中で畑なんて見た事が無い。城壁の外には何度も行ったが、そこにも畑は無かった。食料の生産を考えたら街の面積の数倍は小麦畑が必要だろう。畑が無い事を、どうして不思議に思わなかったんだろう。
・・・そうか。
俺、異世界で殆ど食事してないから意識して無かったのか。
食料とか、どうでも良いって思ってたんだろうな。マヌケな話しだ。
「ダンジョンって、どこに有るのか知ってるか?」
「私は行った事無いですけど、山のふもとらしいですよ。ローバーで1日くらいって聞いた事があります」
ローバーで1日なら、歩いたら1日以上必要かもな。行って見たいが転移を使っても日帰りは難しいそうだな。
金が出来たらスクーターでも買って、ダンジョンに行って見るかなぁ。
今はまだスクーターを買うお金も無い。
店番が有るからダンジョンに行く時間も無い。
もっと簡単に、ガッポガッポ儲かる商売って無いだろうか。
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