第23話

 異世界の定番、図書館の利用料が高い!

 異世界ではまだ紙が開発されていない。品質が一定の紙が作れてからの、活版印刷だ。

 印刷が出来ないと本を手書きで写本する事に成る。非常に手間と時間がかかる作業なので本が高い。結果、本を集めている図書館の利用料も高くなる。


 商業ギルドで両替をしたあと、商売をする上で必要な法律や政治の事を訊いたのだが、詳しい事が知りたいなら図書館に行くように言われてしまった。

 商業ギルドは国の管理下にあるだけあって、お役所仕事た。不親切だとグチを言っても仕方が無い。

 そのくせ、両替の手数料はチャッカリ取りやがる。

 異世界、マジでムカツク!


 図書館に入口でデュオを見せて、金貨1枚払って中に入った。

 金貨1枚って日本円換算で10万円だぞ! だがれ利用するんだよ!!と思って奥に進むと数人利用者がいた。

 異世界にも金持ちはいるんだなぁ。と思ったが、入口にデカデカと料金表が書いて有った。


 〇商業ギルド―無料  〇冒険者ギルド―銀貨1枚  〇一般―金貨1枚


 図書館を作るにも維持するにも金がかかるから、国家事業なのだろう。この国は識字率も低そうだから一般に公開する意味は殆ど無いんだろうな。特権階級だけが得をしているような気がする。

 異世界、マジでムカツク!


 ただ、1つだけ褒めれる点もあった。

 館内は火気厳禁のため、ランプが必須なのだが無料で貸し出してくれたのだ。ジェムの料金も取られなかった。


 蔵書の数は、小学校の図書室より少なそうだ。

 ジャンル分けが3つしかない。

 1、国について

 2、商業ギルド関係

 3、冒険者ギルド関係

 蔵書の割合は、国が6割で商業ギルドが3割、冒険者ギルドが1割くらいだろうか。


 俺は片っ端から全部の本を見ていく事にした。

 流石に全部を読む気力も時間も無いので、殆どは流し読みだ。最初の数ページしか見ない本も多い。


 ★


 6割あると思っていた国に関しての本だが、半分以上が”俺TUEEE”と”俺SUGEEE”を書いた自慢話だった。

 神を奪った闇の神に反旗を翻す話しとか。

 伝説の剣を盗み出して火を吐く巨人と戦う話しとか。

 空飛ぶ船を盗んで世界を廻る話しとか。

 権力者から奪い取った金でハーレム作ってウハウハする話しとか。


 誰得だよ!という話しばかりだったが、共通しているのは誰かから盗んだり奪ったりする事だった。露店で俺の商品を盗んだのも、これの影響だろうか? でも一般市民はこんな本を読む機会も無いか。

 日本で異世界物の話しが人気になるように、異世界では盗む話しがトレンドなんだろうな。



 この国の政治と法律が書いて有る本を見つけた。


 法律については、殆どが一般常識だった。放火は死刑とか。盗賊は死刑とか。当たり前と言えば当たり前の法律だ。

 ドロシーが言っていた法律も見つけた。12才以下と関係を持ったら死刑だ。俺はロリコンでは無いが気を付けよう。


 ただ、日本には無いような法律もあった。

 25才以下で結婚するには多額の税金がかかるらしい。どうしてこんな法律があるのだろうか? 中世頃の文化圏では20才前に結婚するのが普通だと思っていたが、この国では違うようだ。


 異世界に来て初めて税金という言葉を見た。

 だが、結婚税の記載はあるのに、人頭税が無い。街に入る為の関税も無い。当然、消費税も所得税も無い。

 税金が少ないのは良い事だが、俺からしたらチグハグな感じがする。こんなので国の収入は大丈夫なのだろうか。


 本の後半には政治の事が書いて有った。

 この国は其々の街からの代表が集まって政治をしているようだ。日本でいうなら国会だろう。

 予想と違ったのは、この国には貴族や王族はいないようだ。生れながらの特権階級が居ないという事は、帝王学を学んだエリートも居ないと言う事になる。識字率が低い中世の文化で、民主主義のような政治体系が成立している理由が解らない。

 一度権力を握った者はその権力を手放さないように悪巧みをすると思っていたが、どうして貴族が生まれなかったのだろうか。


 国の歴史が書いて有る本には、詳しく書いて有るかも知れないな。

 また機会があったら、図書館に来て探そう。


「金貨1枚分の収穫は無かったな」


 大金を払ったのでもう少し居たかったが、予定があるので図書館をあとにした。


「転移!」



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