第19話
昨日は色々と驚いた。2人の知力の高さにも驚いたが、俺よりも年上だと思っていたドロシーが実は年下だった事には驚愕した。
最初に出会った時は、年増だとかオバサンだとか心の中では思っていたが、口に出して無くて良かった。今後も口を滑らせないように気を付けよう。
今日は俺の店、”スーパーヒーロー”の開店日だ。安全の為にも、最初の数日は入場制限を付ける事にした。
昨日、人員整理の為に冒険者を雇おうと思い、冒険者ギルドで吞んだくれてる人達に話しをしに行った。だが、誰も俺の話しに耳を貸してくれなかったのだ。銀貨10枚でダメなら、銀貨20枚で雇うと言っても誰も手を挙げてくれないのだ。
吞んだくれてる冒険者に理由を訊いたら、自分も買いに行く予定だからその日は働けないと言われてしまった。
冒険者してるようなゴッツイ人が大量に押し寄せたら、俺の店が大変な事になってしまう。最悪、雇ってる店員の誰かがケガをするかもしれない。
そこで俺は、銀貨20枚の報酬を辞めて、銀貨10枚とライター1個と固形石鹼1個で雇うと言ったら多くの人が手を挙げた。その中から3人を雇い、今日1日は店の前で人員整理をしてもらう。店の入口に立ち、店内に入る人数を制限するように働いてもらう。
「それじゃあ、みんな良いかい? お金を受け取るのは俺とドロシーが担当する。良いね?」
「「「「はい!」」」」
「ミンミ、ピリヨ、リィズはお客さんの注文を聞いて、袋に入れたら俺かドロシーに渡すんだよ」
「「「「はい!」」」」
「商品はカウンターの裏に沢山用意してあるけど、減って来たら奥の部屋から持って来る事!」
「「「「はい!」」」」
「最後に、一番重要な事だ。 絶対にケガをしない事!」
「「「「はい?」」」」
「……冒険者のお客さんは武器を持ってるから怒らせちゃダメだよ」
「「「「はい!」」」」
「入口を開けて、お客さんを入れて下さーい!」
俺は入口で肉壁となってバリケード役をしている冒険者に声をかけた。その向こうには100人以上の人が見える。
最初に5人が通され、肉壁の間から店内に入って来た。
★
肉壁は非常に良い仕事をしてくれている。
1人帰ると1人入店させる。単純な事の繰り返しだが、決して肉壁は崩れる事無く人員整理を続けている。
開店から4時間経過したが、全く客が途切れる雰囲気がしない。売った商品の数は露店で売った数を既に超えていると思う。
俺は入口まで行って外の様子を見ると、朝より並んでる客が増えていやがる!
★
昼食を取る時間も無く、ひたすら働き続ける。
そろそろ日が沈む頃だと思い、外を覗くと・・・昼よりも増えていやがる!
ヤバい。このままでは24時間営業になってしまう。そんな事になったら俺たち5人が倒れてしまう。
否! 俺たちが倒れる前に、肉壁が崩壊するだろう。そうしたらもう収拾がつかなくなる。
俺は肉壁の1人に声をかけた。
「今店の前に居る客には商品を売るがこれ以上はムリだ! 外の客を1列に並ばせろ。その最後尾にお前が立て。お前の後ろに並ぼうとした客には、今日はもう終わりだと言え!」
やる事を明確に指示したら、初めての事でも何とかするのが冒険者だ。
咄嗟に日本のやり方を押付けてみたが、なんとか整理が出来ているようだ。
★
開店から12時間。やっと今日の販売が終了した。
肉壁の努力もあり、店内では大きな騒ぎは1度も起きなかった。店の外の様子は・・・見なかった事にしておこう。
肉壁の3人には、銀貨10枚とライター1個と固形石鹼1個、更に特別ボーナスで銀貨15枚を追加で支払った。勿論、明日も来てくれるようにお願いした。
「みんな、お疲れさま。俺とドロシーはお金を数える。3人はカウンターの裏に商品を補充してくれ。終わったら今日は俺が飯をオゴるよ」
「「「「はい!」」」」
飯と言っても、日本産の菓子パンとカップ麺で良いだろう。特別にショートケーキも付けよう。
あまりジャパンクオリティーに慣れられても困るので今回限りだけどな!
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