第17話

 部屋に戻った俺は、看板が届くまでにする事があった。

 全財産を数える事だ!


 日本でも看板なんて買った事が無いから、いくら請求されるか分からない。だが今有る金額を確認しておかないと、払うに払えない。



 ・・・まず金貨が17枚だ。

 レッサーウルフの素材を売却したので3枚増えた。この枚数ならギリギリでカード払いした分の支払いに届くかもしれない。


 で、残りは・・・大銀貨と銀貨を合わせると、銀貨1600枚分だ。

 日本円換算で160万円だ。商売を始めるには結構ギリギリの元手だろう。商品は既に購入済みだが、看板代と調理室の改装を考えると超厳しいな。



「店長、店長~。看板が届きましたよー」


 1階に降りると、職人っぽいオッサンが高い位置に看板を付けている所だった。

 そう言えば、看板のデザインとか何も打ち合わせして無かったな。それ以前に店の名前も決めて無いな。


「まいどー。店長さんですか? この看板の出来はどうですか!」


 どうですか。と訊かれても、異世界の看板って……こんな感じなのか?

 俺が看板の評価に困っているとドロシーが説明してくれた。


「この国では看板のデザインは販売する商品ごとに決まってるんですよ。雑貨関係を販売する場合はこのデザインなんです。お店の名前は申し訳程度の大きさでしか書いちゃいけないんです」


 へー。そうなのか。他の店の看板なんて注意深く見てないから気が付かなかった。


「デザインは、まぁ、決まってる事だから良いよ。この店の名前を考えたのって・・・?」


「私です! 店長にはピッタリだと思ったんですけど、ダメでしたか?」


 店名が”スーパーヒーロー”って・・・地球の文化を知ってる俺からしたら、色んな意味で間違ってるだろ!と言いたい所だが、異世界的にはOKなのだろうか。

 名前は何でも良いか。どうせ俺以外の地球人が見る来る事なんて無いんだから。


「うん。良いよ。気に入った。支払いはいくらかな?」


「本当は金貨2枚と言いたい所なんですが、調理場の改装もウチでやらせて頂けるようなので……看板の分は金貨1枚と大銀貨5枚です」


「全て大銀貨での支払いだが良いか? それと、改装はいつ頃終わる予定なんだ?」


 へー。調理場の改装もこのオッサンに頼んだのか。


「今日から始めるので、明日の昼には終わります」


 本当に仕事が早いオッサンで助かるよ。

 俺は大銀貨15枚をオッサンに渡した。


「あと、お父さん。調理場に椅子とテーブルも欲しいんだけど、家に在庫有ったよね?」


 ん? オトウサン?? って、このオッサンってドロシーの父親なのか?

 看板も改装もすぐに手配したから、ドロシーの人脈が凄いって思ってたけど、全部家族だったのか!

 ドロシーすげーって思った俺の感動を返せ!!


「ドロシーのお父さんって大工なのか?」


「違いますよ。家は作りません。木工関係の細工師です。普段は椅子とか作ってますよ」


「でも、露店でドロシーは野菜を売ってたよな?」


「店長、木って乾燥させないと使えないんですよ。普通は半年から1年は乾燥させるんです。だから乾燥させるだけで結構広い場所が必要なんです。それだけ広いと家庭菜園もやりたい放題なんです!」


 そういう物なのか? 俺には本業サボって野菜を作ってる、って聞こえたけど。

 野菜を作るだけ暇だったから、看板が翌日に完成したんじゃないのか?


「てんちょー。ジェムの片付け終わった」


 ミンミがジェムを全部仕舞い終わったと、俺に知らせに来た。

 では次のお仕事だ。

 俺は収納魔法から百均で購入したライターを山のように積んだ。3本1セットになっているので、パッケージから出して1本1本にする仕事だ。


 お手本を見せて作業内容を伝えると、ミンミがまた涙目になってしまったが……お仕事なので頑張て下さい!

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