第15話
俺はレッサーウルフを倒して取得したジェムを収納魔法から全部出しだ。
「ミンミ、ドロシーが欲しがってたジェムだ。店のランプに使うから仕舞って置いてくれ」
山のように積まれたジェムを見て、ミンミが涙目になっているが……お仕事なので頑張て下さい!
途方に暮れているミンミを置いて、俺は冒険者ギルドへ向かった。
「レッサーウルフを狩って来たんだけど、どこに出したら良いかな?」
「あら♡ ヒーロさん、いらっしゃい♡ ここに出しちゃって良いわよぉ。ついでに私も狩っていく?」
日に日に受付のお姉さんの態度がオカシク成って行くのだが、俺は
「いや、結構あるから奥の解体部屋?の方が良いかもしれない」
「そうなのぉ? じゃあ、いってらっしゃい♡」
★
「おいおい。ここは解体する場所だぞ。皮だの牙だの山積みにしてどうする」
「受付にこの量は出せないから、こっちに持って来た」
「ハァ……。数えるからお前も手伝え!」
暇そうにしていた若手の職員にも手伝ってもらって数え終わると、レッサーウルフ730匹分だった。
「なぁ、あんた。一応聞くが、こんだけのレッサーウルフを何処で狩った? この街の近くって事ならギルドマスターに報告しなきゃ成らない量だぞ」
そうなの? 街のすぐ近くの森で狩ったんだけど。歩いて1時間もかからないような近くだけど。
「ま、まさか。色々な所ですよ。色々な・・・」
「・・・まぁ良い。ほら、この木札もって受付に行きな」
「そう言えば、こんな量を出しても驚かなかったけど、俺みたいな人は他にも居るのかい?」
俺は不思議に思った。前回のオークの時もだったが、トンデモない量を何も無い所から出したのにその事については誰も訊いて来なかったのだ。
「あんたのはスキルなんだろ? この街にも何人か似たようなスキルを持ってるヤツは居るからな。スキルが無くても魔道具屋に行けば似たような鞄が売ってるぞ」
えっ!? マジックバック? 売ってるの? 異世界の定番だけど収納魔法が有ったから探しもしなかった。
欲しいなぁ・・・でも今の俺は金が無いから買えそうにない。
異世界に来てまで貧乏が足を引っ張るとはなぁ。
なんか、俺が想像していた異世界と違うなぁ・・・
★
冒険者ギルドを出た俺は、魔道具屋を探し歩いた。
今は貧乏で買えないとは解っていても、誘惑には勝てないのだ!
物語の中では個性的な店が多いイメージだったが、俺が見つけた店は普通の雑貨屋だった。普通の雑貨屋と違う点は、異常に値段が高い事だ。
何に使うのか解らないような道具が沢山あるが、どれもこれも目玉が飛び出るような金額をしている。
「貧乏人が買える商品は置いて無いよ!」
店主に声をかけられた。だが一目で俺が貧乏人だとなぜバレたのだろうか。
「沢山物が入る袋? マジックバック? っていくらくらいするのか知りたくて来たんだけど」
店主がカウンターの奥からモゾモゾっと出して来た袋は、手のひらサイズの巾着だった。
「これで金貨10枚だよ」
中に入る容量を訊いたが、ジェムが100個以上入ると言われた。
ジェム100個の重さなんて知らないよ! 異世界に来てから重さを量ってる所を見た事が無い。オークの肉を解体した時も見た目で判断してたくらいだ。異世界では重さは重要視されてないのだろう。
たぶん、この巾着なら1Kgか、2Kg入るのだろう。地球の基準で考えたら凄い事なんだろうけど、収納魔法を持ってる俺の基準ではショボ過ぎる。
もっと大きな袋は無いのか訊いてみたが、10倍の大きさの袋は金額が100倍するという。とても俺に手が出せるような金額では無い。
大きくなれば高騰するのは予想していた。袋は面積、つまり2乗に比例するが体積は3乗だ。袋が大きくなれば、面積当たりの魔法の密度を濃くする必要がある。
マジックバックとは言っても、便利なだけで物理的な制限がある袋だと良くわかった。
「ばあさん。金が出来たら買いに来るかも。また来るよ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます