第12話
「転移!」
俺は自分の宿に戻った。
「午前10時か」
商業ギルドでの約束まで、もう少し時間が有るな。
本当はアメリカにも行って、今持っている金貨を換金したかったが、現地時刻がまだ夜なので諦めたのだ。
数時間後、つまり異世界時間で3日後か4日後にアメリカへ行く事にしよう。金貨を換金して、口座に現金を入れて置かないと家賃や電気料金の支払いにも支障が出るからな。
約束の時間まで、仕入れた商品の数を確認する事にしよう。
俺はカード払いしたレシートを広げて計算を始めた。
「・・・マジか! 俺こんなに買ってたのか」
カード払いした合計は174万円だった・・・
露店販売で得た金貨は11枚だ。オークを狩った時の残りも有るから合計で14枚の金貨を持っている。日本円に換金したら140万円になる予定だ。
「ヤバい! 全く足りないぞ!」
これは早々に店をオープンさせて稼がないと、日本で俺のカードが止まてしまう。
それにしても無理矢理作らされたカードだったが、限度額の設定は無かったのだろうか。1件当り20万円程度の支払いだったから大丈夫だったのかな?
俺は現金派だから詳しい事は知らないが、何の制限も無く1日で174万円も使えるカードって凄いような気がする。
★
「あなたは今、店員です。お客が銀貨1枚の商品を23個と、銀貨5枚の商品を9個買おうとしてます。金貨1枚で支払った場合、お釣りはいくらですか?」
俺は今商業ギルドで店員候補の面接をしている。商業ギルドからは面接の方法は任せると言われたので、集まった4人を並べて質問をする事にした。
「はい!」
唯一の男性候補者が、俺の質問が終わると同時に手を上げた。結構筋肉質の体付きをしている。彼なら商品を運んだりする肉体労働も熟せるだろう。
「はい。わかりません!!」
彼は満身の笑みで答えやがった。
考える事も無く、ノータイムで”わからない”という答えを出した彼の
だが、ウチの店では使えない。彼の採用は見送る事になるだろう。
次に手を上げたのは、背が低く中学生くらいに見える女性だ。
「あのっ……だいだい大銀貨2枚」
んーーん。算数で”だいたい”はダメ! 努力は認める。まだ若いからこれから教育したらキチンと計算も出来るようになるかもしれない。
だが、ウチの店に必要なのは即戦力なのだ。半年や1年も教育している時間は無いのだ。
次に手を上げたのは、俺よりも年配の女性だ。40代後半だろうか、恰幅も良く”肝っ玉母さん”って感じだ。
「あたしなら、釣りなんて渡さないね。その方が儲かるだろ?」
これは・・・確信を突いた答えだ。釣銭を渡さなければ、確かに儲かるだろう。しかし、それを認める訳には行かない!
異世界の教育水準ってこんなのかよ。マジで勘弁して欲しい。日本の小学生よりも悪いんじゃないのか?
最後に手を上げたのは、ちょっと年増のお姉さんだ。
「大銀貨3枚と……銀貨2枚と……商品を入れる袋を渡します」
計算は合っている。が、袋?
「君は、俺が先日販売していた露店に商品を買いに来ていたのかい?」
「えっ!? 買いに行ったんじゃなくて……隣で露店をしてました」
あっ! 思い出した。
自分の手を洗ってイキナリ吠えた、お
個人的には、店番をするならもう少し覇気がある人の方が良いのだが、選り好みを出来る状況にはないようだ。
「あのぉ。私も訊きたい事があります。お給料っていくらですか?」
そう言えば考えてなかった。この人達って給料も聞かずに集まったって事か?
計算も出来ない人が集まる訳だ。高い給料を提示していれば、もっと優秀な人が集まったかもな。
部屋の外に商業ギルドの職員が待機していたので訊いてみた。
この国では10日毎に給料を払うのが一般的で、1日当たり銀貨3枚~5枚が相場らしい。俺の店で働くなら、相場の2倍出しても問題無いだろうな。
10日分の給料を金貨1枚でもう一度募集をかけれるか訊いたら、止めるように言われてしまった。優秀な人が集まる反面、腹黒い人も多く集まって来るらしい。優秀な人は大歓迎だが優秀過ぎて帳簿を改ざんするような人は願い下げだ。
人を雇うって結構大変なんだなぁ・・・
俺は悩んだ末に、お
商業ギルドには、引き続き給料の提示無しで募集をかけて貰う事にした。
先日の客の多さを考えると、計算が出来る店員が1人では、俺が常に店に居ないと仕事が回らないだろう。そんな状態では店は開けない。
だが、早く現金を稼がないと日本での俺の銀行口座がヤバい事になる。
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