第5話
「以上で説明は終わりです。何か質問は有りますか?」
「ここに来る途中、ホーンラビットを倒したんだが買取は出来ますか?」
「では、こちらに出して下さい」
俺はカウンターに戦利品を並べた。
ホーンラビットのジェム 10個
ホーンラビットの肉 9個
ホーンラビットの角 4個
ジェムと言うのが何か解らないが、物語でよくある魔石のような物だろうか。買取ってくれるなら、それに越したことはない。
「あぁ、それと、今から泊まれる宿ってあるかな? 出来ればこの金額で泊まれる所が良いんだけど」
「んー。それでしたら、3軒隣に冒険者用の宿が有りますので空き室が有ればいつでも泊まれますよ」
★
なるほど!流石冒険者専用の宿だ。
完全な素泊まり。ベッドは木製で布団類は無い。椅子もテーブルも無い。
俺は収納魔法から愛用の毛布を取り出して仮眠する事にした。
異世界に来て6時間経過している。この世界の1日が何時間なの知らないが、起きたら明るくなってる頃だろう。
街の市場調査や金策は明るくなってから考える事にしよう。
★
「んーーーん、体が痛いな。お金に余裕が出来たら良い布団がある宿に泊まろう・・・」
仮眠のつもりだったが、8時間も寝てしまった。
窓から外を覗くと、まだ薄暗いのに多くの人が街中を歩いている。
部屋から出ると、宿屋のカウンターには昨夜と同じオバサンがいた。
「あんた、もう昼だってのに、そんなに寝てる冒険者なんて初めて見るよ」
え!? 昼?? 外は暗いんですけど・・・
俺は通りに出て空を見上げて、、、愕然とした。
たしかに、太陽はあった。それも、とびきりデカい。
ただ・・・太陽が黒い!!
明るく光っているのは太陽の周りだけだ。
俺の記憶にある一番近い表現なら、日食だ。
どういう事だ? これが異世界の太陽なのか? 意味が解らない・・・
「・・・オバサン、もう少し、部屋で、寝て来る」
異世界はファンタジーだから何でも有り! って事なのか?
・・・いや、流石に無理があるだろう。常時日食の世界なんて……
常に日陰じゃ、惑星が凍り付くだろ?
あれ・・・もしかして、惑星じゃ無いのか?
なんて言ったかなぁ……あぁ……ラグランジュポイントだ!
太陽に見えた黒いのが惑星で、今いるここが衛星だ。衛星の位置がラグランジュポイントのL2で、偶然にもハビタブルゾーンに入ってる、って事か?
・・・もし、そうなら
この衛星の重力が地球と大差ない事を考えると、あの惑星は木星サイズって事に成らないか?
この衛星の場所が日陰でもハビタブルゾーンに有るって事は水星よりも近い軌道で、恒星も太陽より大きいって事になる。
それ程大きな恒星なら太陽よりも寿命が短いはずだ。生命が人間のような種族に進化する時間は無かっただろう。
あ・・・この世界の人間は、元地球人って事なら……
俺のように地球から転移して来たか、宇宙船で連れて来られた、って事か!
推測が正しなら全てに説明がつくが、全部俺の想像だ。なんの証拠も無い。
それでも1つだけ確かな事がある。
俺の想像していた異世界と違う!! 常に夜の異世界なんて、何が楽しいんだ!!
俺は収納魔法から出した弁当を食べて、2度寝した。
ラグランジュポイントの図
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