第4話
その男は何かを喋りながらゆっくりと近付いて来るが、何を言っているのか聞き取れない。
男の後方からゾロゾロと人影が増えて来る。
1人1人鑑定してみるが、
コチュンLv.15 エルグLv.12 ベルトーLv.14 パノパLv.10
最初に出て来たエーゲスが一番強そうだ。
「オイッ! 荷物を置いて行くか、命を置いて行くか選べ!」
ああ・・・完全に盗賊だ。
相手は5人。荷物を置いて行くのは良いが、丸腰になった瞬間に襲われるな・・・
異世界に来て最初のピンチが人間に襲われる事とは・・・悲しくなる。
ステータス的には全員の首を撥ねる事も可能だとは思うが、俺はまだ人殺しをした事が無い。日本で普通に暮らしていたら一生経験しないだろうけど。
異世界とは言え、殺したくは無いな。どうしよう・・・
「オイッ!! 聞いてんのか!!」
エーゲスが激おこだ。
俺はエーゲスの真横までダッシュして、彼の左腕に鉈で峰打ちをくらわせた。
「「 え? 」」
エーゲスも俺も全く予想していなかった。 腕が”ボトッ”と落ちたのだ。
俺はエーゲスを蹴飛ばして、残り4人へと向かう。収納魔法からバールを取り出し4人の腕に峰打ちしまくった。
バールの峰ってドコだよ!と自分自身に思いながら、腕が切断されない程度の力で4人全員の両腕をへし折った。
5人の盗賊がうめき声を上げながらうずくまる姿を見て、
「聞け! 立ち上がったら殺す!」
と宣言し、収納魔法から取り出したロープで折れた腕を無理矢理後ろ手に縛りあげた。
一番重症のはずのエーゲスがいつまでも五月蠅く騒いているので、仕方なく右腕も折ってあげた。
俺とのステータス差は2倍も無かったのに、圧倒的勝利。いや、蹂躙と言って良い結果だ。
異世界でのステータスの差は命取りになるな。出来るだけ鑑定を使って自分よりも強いヤツからは逃げ回るように生きよう。これは戦略的撤退だ。弱虫で逃げてる訳では無いので胸を張って逃げよう!
この盗賊はどうするのが良いんだろうな。このままここに置いて行っても良いが、また悪さしそうだしな。だからと言って今更殺すのもなぁ。
俺が盗賊の処理を考えていると、遠くから光が近付いて来るのが見えた。
★
光は俺から50mほど離れた場所で止ると、馬のような動物から降りて人が近づいて来た。
どうやら3人いるようだ。
先頭の男を鑑定して見ると、
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カーンズ 男 25歳 Lv.22
体力 34/40 魔力 12/12
筋力 29 知力 13 素早さ 24
能力 火魔法【E】剣術【B】
称号 【リーブラ国兵】
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どうやら、盗賊の仲間では無いようだ。
「おい貴様!貴様も盗賊の仲間か!?」
はぁ!? どう見ても違うだろ!! どういう勘違いしてんだ?
「ちっ、ちがいます。たまたま通りかかって襲われたんです!!」
「貴様怪しいな! たまたま襲われて5人全員を捕らえたというのか?」
その通りだよ。たまたま捕らえたんだけど、どう説明したら信じて貰えるんだ?
「・・・その辺にしとけ。俺はリーブラ国兵のマルティクスだ。我々は5人の盗賊を追って来たのだ。名前を訊いて良いか?」
3人の中で一番偉そうな人が話しかけて来た。
「
「そうか。ヒーロ、それにしても5人とも生かして捕らえるとはな。 一応、デュオを持ってるなら見せてくれないか?」
「デュオ?」
マルティクスが首から下げられたプレートを見せてくれた。
どうやら大きな街では殆どの人が持っているらしい。街に住んでいない者は冒険者ギルドで発行できるそうだ。
プレートにはギフトという能力や称号も記載され、名前以外は本人の意志で表示、非表示の切り替えが出来るらしい。
記載された情報は改ざんできない様、この国があるクシュリナ大陸のどこかで保管されているらしいが、誰もその場所を知らないらしい。
身分証という意味では、物語に良くあるギルドカードと同じようだが妙なハイテクさを感じる。
「大丈夫だ。君も冒険者ギルドに行ったら発行されるだろう。田舎暮らしの殆どは持っていないのが当たり前だからな」
「隊長、盗賊の処理が終わりました」
「そうか、では出発しよう。君はこれからどうするんだ?街まで行くなら乗せて行こう」
俺も馬に乗るのは初めてだ。
実際、この動物が馬なのか牛なのかもよく解らないが、鑑定ではローバーだ。少なくともロバには見えないが、変わった生き物だ。
俺は移動中、ド田舎暮らしという設定を生かしてこの世界の事を色々と訊いた。
今いるこの国はリーブラというらしい。クシュリナ大陸には他にも多くの国が在り、時々戦争をしてるようだ。
通貨は銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨とあるらしい。食費や宿賃を聞く限り銅貨1枚は10円に相当するようだが、実際に市場調査をしないと良くわからないな。
商売をするには冒険者ギルドで作ったデュオを持って商業ギルドで登録する必要があるようだ。商業ギルドは国の管理下にあるので、あまりアクドイ事はしてないらしい。
街が見えて来た。時々戦争をしているからだろうか、街は城壁で囲まれていた。
街並みは中世に近いように思える。建物は木と石とレンガで作られているようだ。街の大きさに対して歩いている人の数が少ない。明るく成ったら賑わうのだろうか。
「右手に見えるのが冒険者ギルドだ」
「はい!ありがとうございます」
マルティクスと別れて冒険者ギルドに入った。
中にはムキムキの戦士やローブを着た魔法使い?のような人がいるが、その多くが吞んだくれている。まぁ夜だから仕方が無い。
猫耳やエルフなどは見当たらない。この異世界は人間しか居ないのだろうか?
ギルドの受付で登録している時に重要な事に気が付いてしまった。
「鑑定!」
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Lv.22(NEXT 11/50)
体力 59/60 魔力 34/37
筋力 56 知力 42 素早さ 41
能力 転移魔法【S】鑑定魔法【B】
収納魔法【S】言語理解【S】
称号 【来訪者】【社畜の魂】
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そりゃあ、そうだよな・・・
マルティクスや盗賊とも普通に会話が出来てたんだから。
いつの間に取得したんだろうな? 持ってて良かった言語理解!
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