第3話

 俺はバットを構えて音がした方を注意深く観察する。

 サッカーボールくらいの白い動物が見えた。


「鑑定!」

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 ホーンラビット 雄 Lv.3


 体力 5/6 魔力 0/0


 筋力 5 知力 2 素早さ 7


 能力 なし


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 ウサギなのか? 思ったよりは弱そうだな。だが無理に戦う必要は無い。

 次の瞬間、ホーンラビットは俺に気が付いたのか勢いよくこちらに向かって来た。


 っ!! 思ったよりはやっ、、、くはないな・・・。

 普通のウサギがどのくらいの速さなのかは知らないが、俺の想像よりも2倍は遅かった。

 だが、頭部には角が生えており刺されるとヤバそうだ。

 頭部目掛けてバットを振り下ろすと、ホーンラビットは倒れて動かなくなった。


 直後、ホーンラビットが姿を消しアナウンスが流れた。

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 ホーンラビットを倒しました。

 経験値 3を獲得

 ホーンラビットのジェムを獲得

 ホーンラビットの肉を獲得

 ホーンラビットの角を獲得

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 って、待てよ、今獲得したアイテムはどこに?

 まさか・・・


「鑑定」


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 火色ひいろ 一一かずひと 男 36歳 


 Lv.21(NEXT 33/50)


 体力 59/59 魔力 29/35


 筋力 54 知力 41 素早さ 40


 能力 転移魔法【S】鑑定魔法【B】収納魔法【S】


 称号 【来訪者】【社畜の魂】


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 収納魔法【S】を「鑑定!」



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 収納魔法【S】

 

 容量;最大魔力の4乗g

 時間経過無し

 必要魔力無し


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 や、やはり! でも収納魔法の取得条件はなんだったのだろう・・・

 考えられるのは教会関連か? 教会の近くで倒した事だろうか。

 それとも、異世界では取得しているのが当然なのだろうか。


 理由は考えても解らないが、これは使えるぞ!

 もちろん異世界でのドロップ品もだが、地球で重い荷物を運ぶときとかにも使えて便利だ。異世界との交易を始めるにも便利そうだ。

 容量制限は有るようだけど・・・? 最大魔力の4乗で単位がグラム、、、って事は35の4乗で・・・150万。

 1.5トンって事か! 4乗に比例するなら今後はトンデモない量になりそうだ。

 夢が膨らむ! ニヤニヤが止まらない。


 だが、浮かれてばかりもいられない。もうそろそろ異世界に来て1時間くらい経つ頃だ。今回の目的は異世界と地球との時間経過を調べる事で、余計な危険は犯したくない。


 建物の中へ入り、置時計を見ると1時間経過していた。

 すぐに自宅へ帰ろうと思ったが、出入り口が開いたままだ。

 俺は並んでいる長椅子を4つ収納魔法に収納して、出入り口の隙間を埋めるようにバリケードを作った。これで野生動物は入っては来れないだろう。


「転移!」



 自宅へ戻った俺は、すぐに置時計を確認した。


「ん? 時間は進んでいるが・・・6分?」


 つまり、異世界での60分は地球での6分って事か。異世界は10倍の速さで時間が経過している事になる。

 どういう原理なのかは、サッパリ解らないが、そういう物だと思う事にしよう。


 ★


 今はホームセンターに来ている。異世界の森を通って、人が居る場所まで安全に行くための道具を買いに来たのだ。

 一番の問題は野生動物だ。ウサギだけなら問題無いが、もっと大型の動物がいた時の為に武器が必要だ。


 まずはリュックだ。異世界の夜は暗いので、ランタンや懐中電灯を固定して点灯させながら歩けるタイプのを探そう。

 当然、予備の電池も大量に購入する。収納魔法があるので多少重たくても大丈夫だ。

 カセットコンロにヤカンと鍋。予備としてライターと着火剤。麻紐と丈夫なロープ。

 一応、折り畳み式のノコギリとブルーシートも購入する。

 問題の武器だが・・・

 左手にライトを持つ事を考えると、武器は片手で持てる物に限られるので、鉈とバールを購入した。

 雨具の事も考えたが、もし雨が降って来たら探索を中止して帰る事にしよう。傘やカッパを着ての戦闘は危険だけでメリット無い。俺は”いのち大事に”で頑張るのだ。


 隣のスーパーで水と食料も購入した。収納魔法に入れて置けば腐らないようなので、大人買いだ。


 一通りの買い出しが終わり自宅へ戻ると14時だった。

 明日の仕事を考えると、探索出来る時間は残り5時間~7時間だろう。異世界の時間で50時間~70時間に相当する。

 最悪を考えて野営の準備もしたが、どんな野生動物がいるのかも解らない状況では野営は極力避けたい。時間は充分に有るが、野営をするくらいなら帰る事にしよう。


「転移!」



 異世界に到着したが、相変わらず暗い。

 朝から6時間経過しているので、異世界では60時間・・・2日半経過した計算になる。

 異世界に来るのはこれで3回目だが、なぜか毎回夜だ。俺の運が悪いだけなのか、自転周期が遅くて夜が長い惑星なのかは解らない。


「まずは人間のいる場所を探さないとな・・・」


 流石に地球人と同じ姿というのは都合が良過ぎるだろう。それでも、長椅子の大きさから考えて体のサイズや習慣は地球人に似ていると予想している。

 一番の懸念は好戦的な種族で、俺の事を食料だと認識される事だ。もしもの時は転移で逃げるしかない。



 ホーンラビットを倒しながら森の中を歩く。

 水や食料を食べつつ3時間歩いて道を見つけた。道と言っても舗装されている訳では無く、土を踏み固めただけの道だ。よく見ると輪達わだちのような痕跡も確認出来る。やはり地球と似たような文化があるようだ。


 しばらく道なりに歩いて行くと暗い木々の間から人影が現れた。

 人間のような動きをしてる人影を鑑定してみると、


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 エーゲス 男 32歳 Lv.20


 体力 30/34 魔力 7/7


 筋力 32 知力 11 素早さ 23


 能力 剣術【B】 


 称号 【元バルジ帝国兵】【盗賊】


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 どうやら人間のようだ。

 この異世界にも人間がいると解って一安心だ。

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