第3話 勇者の住む村の騒動
〜勇者の住む村・現在〜
「さて、勇者はどこにいるだろうか。」
初めて勇者を見つけ、生かすことを決めてから3年、私はビータスの根城と村を行き来する生活を続けていた。勇者と会いはしているが、魔法をかけ夢で何者かに会っていることにしている。特に顔を覚えられないようにして、いずれ別れがあると思って。
「....ん?村人がこれだけ集まっているのは珍しいな。こんなことは、今までなかったはずだが。」
村人が集まる場所を覗いてみると革命軍の旗を掲げた者たちがいた。
「ようやく、戦争が終わったのか?」
「勝ったんだよな?革命は成功したんだろ?だから帰ってきたんだろ?」
「....あぁ、勝って帰って来たよ。」
「ねぇ....アニモはどこ?どこにいるの?」
革命軍の前に、取り乱す勇者の母の姿が見える。
「...アニモ、あいつは良いやつだった。悪いな、モル。あいつは戦死した。遺体だけは何とか手に入れたかったんだが、王国軍によって燃やされて見つからなかった。....すまない。革命軍の本部からだ、この金を受け取ってくれ。」
「....分かってた....分かっていたの。あの人から手紙が届かなくなった時から....大丈夫、覚悟は....かく..ご..はしていたから。」
涙を流す勇者の母モルの背をさするフィリを見ながら私は考えていた。
「....勇者の父は戦死したのか...一家の大黒柱亡き今、フィリを母1人で育てるのは難しいだろう。番を新たに探すか、養子に出すぐらいしか無いだろうな。村の仲間が助けるのも難しいだろう。....しょうがないな、助けてやるか。フィリよ、お前が私の前で笑った、あの時の褒美をやろう。生かすと決めたのだ、生活を助けてやらねば。ビータスの奴なら人間の金を持っているだろう。」
その場から離れ、飛び、ビータスの根城へ向かった。
〜ビータスの根城〜
ビータスの根城である洞窟に着くと、入り口でビータスが待っていた。
「お早いお帰りでしたね。何かありましたか?」
「ビータス、確か人間の金を集めていたよな?急いで袋に分けて金を準備してくれ。」
「分かりました。急いで準備を致します。」
流石ビータスだ。何も理由を聞かずに準備をしてくれた。ありがたい限りだ。良い配下を持ったな私は。
〜数時間後・洞窟内部〜
「....すまない...ビータス。また夜に出る。」
ビータスは私の指示の下、多くの小袋に小金を分け入れ準備をした。下級の配下も使ったが、大部分はビータスがやった。....本当に有能な配下だ。ビータスには全てを伝えた。勇者の父親が戦死したこと、勇者の母1人では生活が出来ないこと、私が目をかける勇者が養子に出される可能性があること、私が考えていることを。
「う〜ん....それだと....だとしたら...。」
ビータスが深く考えている姿を見たことがなかった為、私は気になり声をかけた。
「どうしたビータス?何かあったか?」
「....閣下は窓のところに金の入った袋を置くと言われましたが、勇者の母親が受け取ったとして、その金を使うとしたら、かなり限界が近い時だと思いまして。」
「....なるほどな、確かに勇者の母親になる者は聖人の可能性が高い。限界が近づくまで使わない可能性もあるな。」
私が再考しているとビータスが話しかけてきた。
「....愚考だと思いますが、1つだけ方法を見つけました。」
「....ほぉ?何だそれは?」
「....閣下が直接渡すことでございます。」
「私が直接?....確かに私なら正体を完全に隠す事が出来、村に入り込めるな。そうするしかないか....そうしよう。....ビータス、そろそろ行ってくる。またお前に色々と頼ることになるだろう。すまないな。」
私はビータスとの話し合いを終え、再び村へ飛んで向かうことにした。
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