第2話 過去・王国

       〜過去・王国〜

 

 王国と聖教国の国境にある分離壁を越え侵入した。

 

 「さて、国境付近に忍び込んだが....勇者はどこにいるんだ?まずは街で情報収集するか....よくよく考えたら何故俺がここまでしないといけないんだ?可笑しいよな?....開け地獄門ポルタインフェロールム。出でよ、我が配下達....勇者の情報を集めてこい。行け。」

 

 下級の配下に命令し情報を集めることにした私に声が聞こえる。


 「閣下、私も下々の者と共に動いた方が良いでしょうか?」

 

 声のする方へ向くと見覚えのある者がいた。


 「下級の配下達しか召喚した覚えが無かったが、お前を呼び出していたか。すまんな、ビータス。お前の力は危険だからなぁ....隠れて地上で暮らすことは出来そうか?」


 「数年であれば確実に、数十年になると天の者に気づかれるかと。」

 

 「流石に数十年も時間が経つ事はない。長い休暇を得たと思ってくれ。」


 「承知いたしました。しばらく休ませていただきます。」


 幻影のようにビータスは消えた。

 

 「...去ったか....配下達の情報を待つか。」


 数時間後、情報を集めた配下達が帰還した。


 「...部下達が全員帰還したのは良いが、勇者の情報は無いな。革命軍の話は面白いが....地道に探すしかないな。行くか。」


 勇者の情報が無いことにイラッとしてしまったが、しょうがないので配下達を魔界へ戻し王国内を探すことにした。




     〜4ヶ月後・とある村〜

 

 とある村を上空から見ていると、瞳が反応し光が見えた。


 「見つけたぞ。ビータスには悪いことをしたな。あの言い方だと、5年程休暇があると思うだろう。あの家のオーラは間違いなく聖なる気だ。魔王の願い、今叶えよう。透明化ペレスピクス。」


 村の門へ行くと門番達が話をしているのが聞こえた。


 「夜警の人数増えないかなぁ。」


 「無理だろ、王国軍と革命軍の内紛で男手が足りないし、女共は力が弱い者ばかりだ。数人で頑張るしかないだろ。」


 門番の話を聞きながら私は村の中へ侵入した。


 「何人いても俺のような者からしたら変わらないがな。さてと、オーラの出てた家は...あそこだな。」




 「....フィリ....大きくなるのよ。彼が戦争に勝って帰ってきたら、貴方にとって過ごしやすい国になるからね。...ふぁぁ、私も寝ようかしら。あなたの隣で寝るわフィリ。」




 「確実に寝たが一応...サムノスれ。さて....勇者よ....お前には死んでもらうぞ。」


 殺そうとした瞬間、ふと思った。


 「....ここまで手間をかけて殺すのは初めてだな.....最後に顔を見ておくか?」


 私は勇者が纏う布を少しずらし顔を見ることにした。布をずらすと、私は勇者と眼が合った。


 「....驚いたぞ、勇者よ。多少魔法の影響を受け寝ていると思ったが、起きていたのか。まぁ、良い....殺すか。」

 

 手を掛けようとした瞬間、勇者が思わぬ行動を起こした。


 「キャッ、キャッ。」

 

 私は驚き固まった、こんなことが起こるはずがないと思っていたからだ。


 「....此奴、笑ったのか?この私に向かって?ふ、ふふふ、ははは、初めて見たぞ。私の前で笑う者など、兄弟達ならありえるが、それ以外の者が私の前で笑うなどあり得ない。」


 「キャッ、キャッ」

 

 掛けようとした手を下ろし私は決めた。


 「....殺すのは惜しいな。生かしてやろう。....ビータスの根城にでも向かうか。」


 その時の私は軽い気持ちで、後でも殺せると思っていたのだろうが、魔王の願いを叶えるチャンスはこの時点で無くなった。これから長い付き合いが始まるからだ。


 

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