第10話:少しだけ弱気なメルバ。
その後、早生とメルバは、何事もなく意見が食い違うとか、揉めるとかって
こともなく少しずつお互いを理解し合っていた。
すこぶるいい感じで。
でもメルバ目当てに猫屋敷が頻繁に俺のアパートを訪ねて来るようになった。
まったく迷惑な話だが・・・早生は今更、メルバのことを彼女だって言えない
ままだ。
こんなことならスーパーで会った時、俺の彼女だってはっきり言って
おけばよかったと早生は思った。
(よく考えたら妹にしておくメリットなんかどこにもないんだ)
(もしネコのクチから夏にバレてもその時はその時のこと)
(嘘や誤魔化しはよくない・・・絶対そんなのは悪い結果になって俺の元に
帰って来る)
(自分が撒いた種、自業自得ってことになる)
(人に気兼ねして、なんでメルバを妹にしておかなきゃいけないんだ・・・)
(いっそネコにはホントのことを言ってしまったほうがスッキリしそうだ)
(そうじゃないとネコの行動はエスカレートしていきそうだし・・・)
ある日メルバが言った。
「私、どうなっちゃうんだろ?」
「なにが?どうなるって?」
「早生には彼女さんがいるし・・・現役の彼女には勝てないよね?」
「どうしたの?弱気だね・・・夏には負けないんじゃないの?」
「勝つも負けるも、これって早生の気持ち次第でしょ」
「たしかに、そうだな・・・俺の責任重大だな・・・」
「本当いうと僕にも今の自分の気持ちが分からない時があるよ」
彼女、夏がいるのにメルバに魅かれてる自分もいる・・・。
彼女がいるのに他の女性に思いを寄せるなんて・・・それって 完全に浮気
じゃないか?
まさか自分が、そんな気持ちになるなんて思いもしなかった。
「私が悪いのかな・・・」
「メルバは悪くないよ・・・」
「それなら、ふたりの女性を天秤にかけてる俺が一番悪いんだと思う」
「でも、その原因を作ったのは私でしょ?」
「人はね、その時はベストだと思って起こした行動でもその時の条件や環境に
よって、やむなく思惑が変わってくることだってあるんだよ」
「誰も自分の未来は見えないからね・・・」
「見えたら過ちは犯さないと思うけど、でも思い通りにいかないのが人生だよ」
「それにさ、メルバは俺の命を救うためにこの時代に来たんだろ?」
「その使命忘れてる?」
「忘れてはないけど・・・」
「ずっと俺にくっついてるんだろ?・・・そばを離れないんじゃなかった?」
「そうだったね・・・そうそう」
「私、何弱気になってるんだろ・・・」
「俺もちゃんと答え出すよ・・・」
「メルバが未来へ帰らないなら、俺も覚悟決めなくちゃ」
「俺もメルバもこの時代で生きてかなきゃいけないんだから」
「どう?また気晴らしにまたデートしようか?」
「うん・・・いいねデート」
早生はそのうちメルバか夏、どちらかを選ばなきゃならない時が来るだろう。
つづく。
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