第11話:噂をすれば影。

早生はメルバを連れてまた街に出た。

最初の頃に比べて今は家に閉じこもってることも少なくなっていた。


猫屋敷は相変わらずメルバ目当てで早生のマンションに遊びに来ていた。

だから早生はネコと夏が来る時はメルバには近所のカフェに行ってもらっていた。


そんなだから必然的に猫は夏とも顔を会わすわけで、女好きの猫は

夏にまで鼻の下を伸ばしていた。

夏のことは以前にも早生と夏がデートしてる時会ってるから猫はよく知ってる。


「おまえいいな・・・夏ちゃん相変わらず綺麗だわ・・・あんなべっぴんが

彼女でいいよな・・・」

「めっちゃナイスバディーじゃん」


「なんだよ、夏のことが気になるのか?」


今がいい機会だと思って早生はメルバのことをバラした。


「あのな・・・いい機会だからバラすけど・・・メルバが俺の妹ってのはウソだ」

「いいか、メルバは俺の妹じゃないんだ・・・」


「なに、言ってんの?」


「事実を言ってるだけ」


「なんだよ・・・それまじか?・・・つまんねえの」

「なんでそんなウソついたんだよ」


「いや〜夏とのことがあったから、メルバが俺の彼女だって言えなかったんだよ」


「なんだそれ・・・おまえそれ浮気じゃないかよ」

「二股かけやがって」


猫はブツブツ文句言って帰って行った。


(これでスッキリした、こうなったら猫はもう来なくなるだろ)


早生はもし猫のクチからメルバのことが夏にバレても今更、どうでもよくなっていた。

もう来ないと思っていた猫から意外なお願いが・・・。


「あのさ、おまえメルバちゃんと夏ちゃん二股かけるつもりか?」


「いや・・・そんなつもりはないよ」

「正直、今の俺はメルバに気持ちが傾いてる・・・夏とは、もう長い間セックス

すらしてないからな・・・たぶん長くないと思う」

「別れるなら夏のほうだろうな・・・夏がなんて言うか分かんないけど」


「あのさ・・・もしそうなったら俺が夏ちゃんもらっていいか?」

「え?・・・まじで言ってんのか?」


「まじまじ・・・俺が夏ちゃんを引き受けるから・・・」


「まあ・・・夏が猫屋敷でもいいって言ったらいいんじゃねんか?」


「でもってなんだよ・・・俺は実は夏ちゃんみたいな子がタイプなんだ」


「そうかよ・・・女なら誰でもいいくせに・・・」


「俺の子をヤリモクやヤリチンみたいに言うな、早生」


この時の早生はめちゃ打算的になっていた。


(猫が夏を持って行ってくれたら、これ以上ないない展開)

(やっぱり俺は汚い人間だ・・・だけどどうしようもない時だってあるんだ)


さて街に出た早生とメルバ。


「あのね・・・早生とのデートはとっても楽しいんだけど、こう言う時って

あのスーパーで会った猫屋敷さん?みたいに誰か早生の知り合いに偶然

会ったりするんだよね」


「ああ、それはあるな・・・なんでこんなところでってやつな」

「今日、火曜日でしょ・・・夏さんに会ったりして・・・」


「まさか〜、それはないだろ」


って呑気にそんなことを言ってたら噂をすれば影ってよく言うよね・・・

まさにそれだったね。

早生とメルバが買い物を終えてアパートに向かってる時だった。

ふたりの背中越しに女の声がした。


「早ちゃん?」


まさかと思って振り向くと・・・まさかの夏だった。


「あは、やっぱり早ちゃんだった・・・」


「夏・・・ここで何してるんだ?」


「今日は美容室お休みだからね・・・でお買い物・・・それより早ちゃん

こそ・・・」

「しかも、めちゃエロっぽい女ずれで・・・」

「横にいる子、どう見たって女子だよね・・・しかもなに?どこでそんな

色気ムンムンな女拾って来たのよ、股からエロフェロモン出てんじゃん」

「それともたまたま、同じ方向に歩いてた他人同士?」


「あの・・・これには、深い訳があってさ・・・」


「それってルール違反じゃないの?」

「私だけって信じてたのに・・・早ちゃんってそんなことする人だっけ?」


「ちゃんと話そうと・・・」


夏は俺の言葉を無視した。


「あなた、お名前は?」


「メルバ・ブランシェです」


「ふ〜ん、メルバちゃん」

「あなた、早ちゃんとどういう関係?」


「あの・・・私は、早生の命を救うために未来から来たんです」


「はあ〜?・・・」


「メルバ、そんなこといきなり言ったって信じやしないよ」

「だから、説明させてくれないか?」


「立ち話もなんだから、その先のカフェでゆっくり話聞きましょ」


で、早生とメルバト夏、三人はカフェに入った。


つづく。


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