第4話:キューブから現れた猫。
「そ、じゃ今日からよろしくね、早生」
「私、早生を守るからね」
メルバはまるで早生の彼女みたいにもう馴れ馴れしいし、タメグチだった。
「あの、泊めてくれるでしょ?」
「まあ、いくら未来の化学技術が進んでるからって過去の時代のホテルとか
予約なんかできないだろうからね」
「じゃ〜泊めてもらっていいのね?」
「この状況で出て行けとは言えないからね」
「泊めてあげるけど・・・当然、女性用のパジャマとかないから俺のトレーナー
で我慢して」
「あのね、いろんな部分で準備不足だよ・・・その・・・メルバ」
「タイムスリップでも旅行には違いないんだから着る物くらい持って来とか
なきゃ・・・」
「だって急いでたし観光旅行じゃないもん」
「で、俺のことは?自己紹介とか説明しなくても全部知ってるんだよね」
「うん、知ってる、未来で一緒にいたからね・・・お尻にあざがあることも、
あと1日に何回自慰するとか・・・」
「自慰って・・・なんでそんなどうでもいいこと知ってるんだよ」
「で、今付き合ってる彼女いるでしょ?」
「うそ、夏のことも知ってるのか?・・・まいったな」
ってなことをしゃべってるとキューブから「ニャ〜」って猫が一匹出てきた。
「あ、ごめんねミカンちゃん、放っておいて」
「ね、ねこ?」
「あの、その猫、君の?メルバの猫?・・・だよね」
「うん、この子ミカンって言うの、可愛いでしょ?」
ミカンは茶トラ・・・毛の色がオレンジ色だからミカンって名付けられた。
「みかんもクローンなの・・・未来にも本物の猫もいるんだけど、レアで値段が
高くて・・・」
「クローンでも本物の猫と遜色ないからね」
「あはは・・・そうなんだ」
残念なことに早生は猫がすこぶる苦手、しかも動物アレルギーと来てるから、
それがクローン猫でもたぶん同じだろう。
ミカンの存在は今後のネックになりそうだった。
だから、これは半分でもいいから夢であって欲しいって早生は思った。
早生のベッドに現れた50センチくらいの大きさの四角い箱「タイムキューブ」
そのキューブに乗って未来からやってきたって言うメルバとみかん。
まあ、せっかく俺の命を救うためだって・・・それが事実なら未来に帰れとも
言えない。
(だけどさ、いきなりやってきてまだ知りもしない俺の部屋で一緒に寝るのか?)
(新しいベッドなんか増やす余裕ないし・・・)
(しかもこれから毎晩・・・一緒に生活?・・・同棲するんだ)
(俺のこと怖くないのかな?
俺が暴力的で女を見たらすぐ襲うような男だって思わなかったのかな?
俺が変質者とか異常者だったらどうするつもりだったんだよ。
ああ、そうか俺がどう言う人間かメルバはもう知ってるんだった)
(まあ襲ったりなんかしないけど・・・それでも、いきなり俺の部屋に
メルバみたいなエロっちいい子がいたら落ち着かないよな)
無防備なメルバは緊張感なんかまるでなくてミカンと戯れていた。
「あのさ、俺も全面的にメルバに協力するつもりだけど、どうすればいいか、
指示してくれる?」
「1週間後、事故に見舞われる現場に行かないようにしましょ?」
「それでとりあえず事故から回避できるから・・・」
「あのさ、俺ってどんな事故に見舞われるんだ?」
「歩道を歩いてる時に、建築現場の足場が風にあおられて、足場が崩れて落ちて
来るの」
「その下をたまたま歩いてた早生の上に落ちてきて・・・そう言うこと」
「なるほど・・・俺はその日、その現場にいなきゃいいんだ」
「とりあえずね」
「でも問題はもっと複雑・・・その現場で事故を回避しても、その余波はきっと
他のところに現れるからね・・・気をつけないと早生はまた事故にみまわれる
可能性あるから・・・」
「だから、いつでも私が一緒にいるから・・・それが未来の早生との約束だよ」
「事故遭遇までまだ日にちがあるからそれまでは私、料理だってできるから
家事は私に任せて・・・」
「ああ・・それは助かる、独り身は
(メルバはいくら、くっついてくれててもいいけど問題は猫だけだよな・・・
なるべく距離保とう)
(だけど、待てよ・・・考えてみたらメルバが俺のところに来たってことは
少なくともメルバの存在は俺の運命を変えたってことになるわけだろ?
そう言うことだろ?)
メルバが来なかったら早生の運命も変わらずこのままの人生を生きて行くはず
だったのはたしかだ。
早生の未来は大きく変わらなかったとしても、変わったことには違いない。
でも未来は未知。
変わったことさえ早生にもメルバにも誰にも分からない。
(いいや、そんなこと言ってたらそれこそキリがないだろ。
運命の分岐点なんてどこにだって転がってるんだから・・・。
ただこうなった以上、俺はメルバとミカンとうまくやって行くしかなさそうだな)
つづく。
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