第3話:バイオロイドな女。

そこでメルバは自分の時代、100年後に何が起きてるか早生に分かるよう

説明しはじめた。


「え?俺を救いに来たって?・・・そう言った?」


「そうです、あなたは、早生はこの2024年の一週間後に大きな事故に見舞われて

脳に損傷を受けて生死をさまよった挙句、全身麻痺によって体が不自由になる

んです」


「私の勤務してる研究所の所長さんが、実は早生なの・・・未来の早生だよ」

「本当なら!00年も未来なら生きてるはずはないんだけど、未来の医療技術は

今より進んでいて早生は延命処置を受けてまだ生きてるのね」


「だけど不老不死じゃないから永遠に生き長らえる訳じゃないでしょ」

「早生は今、寿命を迎えてるの」

「そこで早生は自分の過去を振り返って思ったのね、もし自分の体が自由に

動けてたら人生は大きく変わっていただろうなって・・・」


「本来なら自分自信、あなたを事故から守るために、この時代に来るべき

ところなんだけど、そうなるとタイムパラドックスが起きるからね」

「同次元に同じ人間が存在することはできないの」


「生命力の弱い方が消滅していなくなるから、そうなると未来の早生は

不利よね・・・たぶん、あたなのほうが精力ありそうだもん」

「それにもうひとつ・・・普通の人間ではタイムスリップ時の衝撃に

耐えられないからね、この時代に到着するまえに死んじゃうから」


「そこで2024年の今のあなたに事故のことを知らせるためと事故からあなたを

守るために未来の早生が私をこの時代に送り出したって訳・・・」

「私は早生の事故を未然に防ぐために余裕を持って一週間早めに来たの・・・

ここまで分かった?」


「うん、大体のことは・・・」


「今、君、人間じゃタイムスリップ時の衝撃に耐えられないって言ったけど

君も人間だよね・・・無事だったの?」


「私、人間じゃないから・・・」


「人間じゃないって?・・・じゃ〜なに?・・・ロボット?」


「違います・・・私はバイオロイド・・・私はもともとタイムスリップに

耐えられるよう強化された肉体を持ったバイオロイドなの」

「私はいろんな国の優秀なDNAを持ったハーフだよ」

「タイムリープ計画の一環として生まれたの」


「そうなんだ・・・え?でもメルバさん、人間なんだよね」


「そうだよ・・・人間だけど普通の人間とは違うの・・・」

「分かりやすく言うとクローンだね」

「私の体の中にはナノマシンって小さなお医者さんがいて常に私の体を

チェックしてくれていて異常が見つかったら修復してくれてるの」

「どんな場所でもどんな環境でも生きていけるように、だから病気にもならないの」


「あ、それと私のこと、さんはいらないから・・・メルバって呼んで」


「わ、分かったメルバ・・・そうなんだ・・・なんだか未来の話みたいだ」


「だから、未来のお話だってば」

「そう言うことだから、私このマンションで早生と一緒に暮らすから」


「え?・・・俺と?暮らすって?」


「そりゃそうでしょ・・・事故以外でもどんなアクシデントに見舞われるか

分かんないでしょ?・・・一週間後の事故から早生を守れたとしても、逆に

その反動でまた新たな事故に見舞われないとも限らないから、だからいつも

一緒にいないと・・・金魚のウンチみたいに・・・」


「まあ、早生を救った時点で、あなたもあなたの周りの運命も変えちゃうかも

しれないけど、あなたを救うためだからそれはしかなないの」


「ああ、そうなんだ・・・たしかに・・・そう言うことになるのか?」


(そしたら夏の運命も変わっちゃうのか?)

(つうか・・・メルバがここにいたら夏が来た時、どう対処しよう?)


「なにか問題でもあるの?早生」


「いやいや・・・とくに問題とかないし・・・」


「そ、じゃ今日からよろしくね、早生」

「私、早生を守るからね」


メルバの言動はまるでずっと早生と一緒に生活してた彼女みたいだった。

まあ、未来において未来の早生といたんだからそうなるのは不自然じゃ

なかった。


つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る