第2.5話 帰り道(2)
街灯と家から盛れ出している光が照らす中俺と明香里は家へと向かい歩いていた。
「ねぇコウ、今度さおりんには改めて何かお詫びしないとだね」
「そうだね。転校初日に色々巻き込んじゃったしな」
「だから明日の放課後にお詫びの品を買いに行かない?」
「いいけど。何か当てはあるのか?」
「うん。この前こんな時に使えそうなクッキーを売ってるのを見たから」
「わかった。明日の放課後な」
俺と明香里の会話が途切れ、沈黙が続く。
(どうしよう、めちゃくちゃ気まずい……)
つい先程明香里とは本音で話、仲直り?する事が出来たが、それでも俺は4年間もの間、意図的に明香里を避けていた。その事実が申し訳無さやこの気まずさの原因になっているような気がした。
「小学生以来だよね、こうやってコウと二人で一緒に帰るの」
「そうだな……」
「もう!気まずそうにしないでよコウ!」
明香里は俺の横に来るといきなりぶつかってきた。が、それに勢いは無く腕と腕が触れ合うくらいのものだった。
「こうやって隣に立つと私たちって小学生の頃から色々変わったよね。身長とか交友関係とか」
「そうだな。小学生の頃と比べると明香里と俺は沢山変わったよな」
「変わらなかった身長も今では俺の方が高いし、昔は大人しかったのに中学くらいから明るく活発になって、今ではクラスの中心人物だもんな」
「凄いでしょ。でも私の変わったところはそれだけじゃないよ」
「昔苦手だった勉強も出来るようになって今ではクラス2位を取ったことあるんだよ。それ以外にも髪だって染めたし、メイクも覚えた」
「それに、自分で言うのは恥ずかしいけど可愛くなったと思うし、告白とかもされるようになったんだよ」
明香里は自分が変わった所をずらずらと並べていき最後の所だけは恥ずかしそうにしていたけど、一息つくと真剣な顔つきになった。
「こんなに私が変われたのはコウの存在があったからだから私はめちゃくちゃコウに感謝してるの」
「だからコウは罪悪感とか感じなくていいから!」
明香里は俺の目を見て自分の気持ちを真正面からぶつけてきた。それは明香里からの激励で、この言葉を心の奥深くに刻んだ。
それからは今まであった気まずさは少し和らぎ俺が最近読んでる本の話だとか、俺が昼休み毎回教室を抜け出して何処に行ってるのかとか色々聞き出され気づけば俺の家の前に到着したがーーー
「こんな夜遅くに私一人で帰らせる分けないよね?」
と明香里に言われ明香里を家まで送り届ける事になった。
「あっそうだ!今更だけど今日は無理やり連れてきてごめんね!」
「後、カラオケはいつか一緒に行ってあげるから練習しようね!」
明香里は「ニヒヒ」という擬音が合いそうな笑顔をしながらこちらに手を振り、「それじゃ!じゃあね!」といい家へと入っていった。
俺は明香里が見えなくなるとポケットからスマホを取り出し時刻を確認した。22時17分気づけば歓迎会が終わり約1時間と20分程時間が経っていた。ここから俺の家に着く頃には22時40分を過ぎてそうだな。俺はそんなことを考えながら家まで歩いた。
「ただいま〜」
「おかえり」という言葉はこの時間になると帰ってこない。母親はこの時間になると基本的に寝ているからだ。
俺は暗闇の中をスマホのライトで照らしながら自分の部屋へと向かった。
部屋につくと俺は部屋の電気をつけ、バッグをベッドに投げ捨てそのままの勢いでベッドに倒れ込み天井を見上げた。
「今日は疲れたな……」
朝に見た懐かしい夢から始まり、何故か転校生が来るし、歓迎会には連れ出され、気づけば転校生を巻き込んで明香里との仲直りをした。
「流石に今日1日で色々起こりすぎだろ……」
俺は投げ捨てられたバッグの中から1冊の本を取り出す。それは【シミュレーション仮説】に関する本だった。
【シミュレーション仮説】人類が生活しているこの世界は、すべてシミュレーテッドリアリティであるとする仮説のこと。
もっと簡単に言うとこの世界は現実じゃなくてゲームの中の世界なのかもしれないという仮説の事だ。
もしこの本に書いてあるかのように俺らが誰かによってシミュレーションされているのなら、今日1日はイベントが起き続けきっとシミュレーションをしているプレイヤー様は頭を抱えることになっただろうな。それとも意図的に起こしたのならそのプレイヤーは馬鹿だとしか言えないな。
俺は取り出した本を本棚に戻し、制服から着替えお風呂に入り、上がる頃には23時20分頃を示し、流石にこの時間から何かをする気力は無くベッドで横になり眠りについた。
あの日の君はもういない 名無し @junjun0720
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