♯2 心を射止めたのは誰か
巴が現在クラスで一番自然に話せる男子といえば
(———ああ、なるほどね)
ある日、巴は天啓を得た。木下の魂胆に思い当たってしまった。これもまた直感である。そこで、その手の機微に敏感な
巴のクラスにはよく
「佳凛ちゃん、どう思う? 確率としては6:4で微妙に芽留ちゃんかなって」
「…………いや。違うと思う」
「え? 樺恋ちゃんのほうかな?」
「木下くんが好きなのは花音ちゃんだよ」
「ええーー! なに、そういうこと」
言われてみれば腑に落ちる。
「つまりはロリコン」
おい。セイウチくん、君、言われてるよ! 佳凛による痛烈な揶揄など知る由もない木下へと巴は視線を向ける。平和そうにあくびなどしていた。
——いや、ていうか。
「佳凛ちゃん。今のって、むしろ花音ちゃんの悪口なのでは……」
ちっちゃいと言われただけで怒るのに、ロリなんて。本人の耳に入ったら楽しい……じゃない、恐ろしいことになる。
「何の話かな……?」
「か、花音ちゃん……!」
やだ、素敵な笑顔。なんかこわ。
「眠いねえって話だよ」
ささっ、さすがカリン様〜! 顔色ひとつ変えずに模範回答。これは一生着いていくしか!
心の中で盛り上がる巴をよそに、花音は見かけ上穏便に佳凛に詰め寄る。
「なんかさ、ロリ……? とか聞こえたんだけど……?」
佳凛はハァ、と物憂げな溜め息をひとつ。
「花音ちゃん。確かにキミはちっちゃいけれど、そういう系統の言葉に敏感になりすぎだよー。もっと心に余裕を持ちな? ちっちゃいからって、心まで小さくしちゃ——」
「ちっちゃいちっちゃい言うなーーー!! 私はあんたよりお姉さんだーーーー!!!」
あーあ、と巴はこめかみを抑えた。これは血が流れるかもしれない。一生着いていくなんて言わないでよかった(思ったけど)。
「眠いねえ……」
自分に被害が及ばぬように、誤魔化すように。巴は机に突っ伏した。
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