禁忌の概念生命 『モディフィクス・アルテリオン』

65話ー① 未知の遺物







 あれから二日……僕たちは神界に機密とされる“存在”との接触を許可された。

 だが許可されたのは接触だけで、外に連れ出せるのかどうかは未だ何も知らされていない。

 合流場所はギルド内の転移ゲートを使った先で、正確な地理的場所は分からないようになっている。


 エリー、ルシア、ネオン、そしてエテルノ。

僕たち四人はそれぞれ異なる地点から転移し、濃い霧に包まれた場所集められるらしい。

 この霧――予想の範疇は出ないが、おそらく第六惑星アグノーストスのどこかだろう。



「よく来たな……お前達。」



 重々しい声が霧の中から響く。そこに立っていたのは……四代目全神王その人だった。



「お久しぶりです。四代目におかれましても、お元気そうで何よりです。」


「最近は……その……」



 ルシアは戸惑いがちに言葉を濁した。彼女が心配しているのは、四代目が僕たちの行動......

 機密存在を求める要求を快く思っていないのではないか、ということだろう。



「気にするな……できれば私も、もう一度会いたい……」


「お任せください。僕とルシアで必ず実現させてみせます。」


「私たち……最善を尽くすことをお約束いたします。」



 ――その時、四代目がほんの少しだけ、嬉しそうな表情を見せた。 察しのいいルシアは表情が微かに引き締まる。

 これから会う存在が、四代目にとってどれほど特別な存在なのか瞬時に悟ったのだろう。



「ふむ……揃ったな。」



 四代目の言葉に合わせるように、転移ゲートが光を放ち、ネオンとエテルノが現れる。



「ケヒヒヒヒ……被検体、被検体、キャハッ。」


「姫ぇぇ……空気読みから覚えましょ。」



 四代目が嬉しそうな顔を一瞬覗かせた直後に『被検体』とか言いやがって......

 お陰で四代目がいつもの顔に戻っちまっただろうが......

 先ほど見せた柔らかな表情は、ネオンの一言で完全に消え去ってしまった。



「全員揃ったな。では、付いてこい。くれぐれも離れるな。迷えば、二度と戻れなくなるかもしれない。」


「「はい!」」


「姫ぇぇ。不安だからおぶってくよ~乗って乗って。」


「大気のサンプルゥゥ。イヒヒヒヒ......」



 正直エテルノのネオンに対する扱いはとても助かる。

 彼女が緩衝材としての機能を持つなら、ネオンを組織に入れるデメリットをある程度緩和できる。

 もちろんまだ、組織運営前の憶測の域を出ないのだが......


 ――霧の中を歩き始める。視界はほとんど遮られ、一寸先も見えない。

 その中を進むこと約10分、やがて目の前に巨大な遺跡が姿を現した。

 まるで何かに飲み込まれるような重圧感が、空気に滲んでいる。


 遺跡の正面には円形の巨大な扉が構えていた。

 時間と風化を感じさせるその構造は、異様な存在感を放っている。



「これは……」


「ここが第0惑星の入口だ。長い神界の歴史を通じて、この扉を突破した者はただの一人もいない。開けるぞ。」



 四代目の言葉と共に、扉が回り始める。 ゆっくりと回転する扉が発する音は、どこか歪で不協和な響きを持っていた。

 金属でも岩でもない、未知の物質が摩擦し合うような、耳障りな音。



「ネオン……分かるな?」


「キヒ、既存の金属音しないぃ。岩に近いオトォォ。未知未知未知!!」



 明らかに、僕たちの知るどの物質とも異なる摩擦音だった……。金属でもなく、岩でもない。

 耳を通り抜けるその音は、重く鈍い響きの中に奇妙な余韻を残している。そして、この音を隠そうとしていない。

 むしろ、これを聞かせることで「侵入者が現れたところで問題はない」と示しているかのようだった。


 もし僕がこの場所を設計していたなら、音や材質の性質を偽装し、侵入者を欺こうとしただろう。

 しかし、この場所は違う。そんな手段を取る必要すら感じさせない――まるで圧倒的な自信が透けて見えるようだ。


 ここを作り上げた人物は、単なる設計者ではない。

 遥かに深遠な知恵と、計り知れないほどの知謀を持った存在である可能性が高い。

 そう確信しながら、僕たちは中へ足を踏み入れた。



「ルーク……これ、どういうこと?」


「技術形態が……神界とは完全に違う。」


「キヒヒ……調査、調査調査……」



 遺跡の内部は外観そのままの退廃した風景が広がっていた。至る所に苔が生え、亀裂から静かに水滴が滴る。

 何もかもが静まり返り、ただ水音だけが耳を打つ。


 ――と、その時。四代目が短く言葉を放った。



「何か来るぞ……」


「「!?」」


「なるほど......姫こっちに!離れんといて!!」


「はぁぁい~。」



 言葉と同時に、遺跡の奥から重く暗い闇が迫り来る。その黒はただの暗がりではない――

 生きているかのように脈動し、周囲の全てを飲み込んでいく。


 逃れられない終焉。そんな暗黒が僕たちを覆う。


 ――そして次の瞬間、この世の深淵に飲み込まれるかのように......暗黒に消えた。








 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★



 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 謎めいた遺跡......第0惑星とは一切関連のない、第六惑星。

 そして主人公たちに待ち受ける試練とは?


 次回、ついに姿を現す深淵の一端......ルークとルシアの選択は?


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は

 【応援】や【レビュー】をしてくれると超嬉しいです!!



 【【お知らせ】】中盤執筆の為、しばし毎日投稿じゃなくなります。



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