64話ー② ZEXシステム






「どーも、こんちゃーす!」


「エテルノおb.......お久。」


「……随分改造が進んだね。オバ......エテルノ。」



 そこにはメガネをかけたボンキュッボンの美女が立っている。

 青から赤へのグラデーションがかった髪、ピチピチのタイトスーツ――その姿は何とも年上の色気を備えている。



「おっほ〜。こっちが噂のゼレ坊のお嫁さん?めぇっちゃ可愛い……」


「初めまして、ルシアです。いつも旦那がお世話になってます。」


「話は聞いてるよ〜。システムとかプログラム得意なんだってー。これから頼りにしとっぞー!」


「はい……よろしくお願いします。」



 ルシアは外向きモードで応対しているが、どこかぎこちなさが見える。

 それにしても、エテルノがシステムの話をルシアに振るなんて……エリーが焦っているのだろうか。

 エリーはこれまで、ルシアをこうした危うい事に、頑なに巻き込まなかった。



「それで?彼女は今どこに?」


「あー?ウチの姫?姫なら奥で引きこもって研究してるよ?」


「おけ。とりま、引き継ぎ。話ある。」


「……かなり切羽詰まってる感じやね?おけおけ。任せんしゃい!!」



 僕たちはエテルノの案内で、胎児が揺らめく培養槽や、赤ん坊のような鳴き声が響く空間を通り抜ける。

 とにかく不気味な数々の間を通ってさらに奥へと進む。



「おーい。姫ぇぇー。連れてきたよ友達ー!」


「……ケヒッ。ケヒヒヒ。きき来たの?」


「……ボソ。ルーク、この子ヤバくないかしら?」


「ボソ、そりゃそうだ。例の神界から追放された子なんだから。」



 振り返ったのは、外ハネショートヘアの黄土髪を垂らし、目の下に濃すぎるクマが浮かべた少女。

 髪は乱れ、服装も整っていない――彼女はネオン。かつて神界から追放された異端者であり、人格破綻者だ。



「キヒッ。綺麗な眼球……欲しいぃ。」


「ゾワゾワ……ル、ルーク!!何か私狙われてるんだけど!?」


「お生憎、ルシアの眼球は渡せないよ。体の隅々まで僕のだからね……」


「ぅぅ……バカ……」



 まぁ、本当は頭の中で穴の奥まで、とかいう卑猥な単語が浮かんだのだが......秘密にしておこう。

 それにしてもネオンの目の奥には、底知れない狂気が宿っている。



「グハッ......リア充ぅぅぅ......死ぬぅぅぅぅ。」


「お!何か知らんけど姫、瀕死じゃんけ!ルークカップルの勝ぉぉ利ぃぃ!!」



 彼女の異様なテンションに場の空気がさらに混乱していく。

 ちなみにエテルノがここに居座っている理由は謎だが、噂では特殊体質を持っているという。詳細は知らないが。



「そういえば送ったヴァラル対策組織の幹部スカウトの件の返答は?」


「ケヒヒヒ。入るよ入る入る入る入る。利点ばっかり嬉しい、キャヒヒヒヒヒ。」



 うん怖。何で普通に受け答えができないんだよ……

 てか笑い方キモすぎだろ笑笑 こいつは絶対に人前に出さんとこ......



「即答なのね……昨日のアルクさんとは大違いだわ。」


「おっほー?アックルーの所から行ったの?よぉく仲間にできたじゃん!」


「実際大変だったよ。」


「あっは〜。でしょーね〜。アックルーはああ見えて結構色々考えてそうだしなー。」



 エリーが話を遮り、真剣な表情で口を開いた。



「とり、本題。よろ~。」


「キヒヒィィィ。出番出番出番出番。こ、このシステムは特殊な装置で超高エネルギーニュートリノを生成して、超高密度の共鳴場を形成するぅぅ。この場では、ニュートリノ同士が極めて高密度で共鳴しあって、周囲の非物質情報に干渉可能な「共鳴場」を生むぅ。この共鳴場は、「現実の基盤」とされる情報次元にアクセスする通路として機能して、特定の「概念」をエンコードする技術を用い、意識や概念なんかの情報を「実体化」できるかも?これを特定のコードに変換して共鳴場に投入。そうすると、共鳴場内で概念が現実世界に反映され、存在そのものを「改変」する準備ができるのぉ。その後にね、対象の「概念の位置情報」を測定してニュートリノ・インパクト技術で、生成された共鳴場から対象にニュートリノを衝突させて......そうするとニュートリノは対象の情報体に作用し、物理的な構造じゃなく「概念」という根本的なレイヤーを「改変」できる。存在の性質、適用される法則もまとめて再構築できるだけじゃなく......。$#'%)($%=)(%)$()(%="(#')'($"'$#」



 いや......長い長い長い長い。そして聞いても意味が分からない......

 そもそも接続語が間違ってるし、てかこれは......使った技術をツラツラ順番無視で話してるだけでは??



「まずコミュニケーション学勉強してこい。」


「私話すの苦手。ネオンも無理。ならおb......エテルノよろ。」


「オバサン言うな!まだ坊や達の……あーー......本題に入りまーす!!」


「た、頼むわ......」



 さては僕らの○倍くらいしか、生きてないって言おうとして、あまりにも数字がデカすぎてやめたな?

 ちなみにこの人の年齢は……アファルティア様よりも上らしい。超絶年上だ。



「このZEXシステムは、理や概念とかそういう物理法則でどうにもならない存在に、仮想の肉体を付与してこっちの世界法則に引きずり込む技術なのさぁ!!」


「なるほど......つまり概念存在に物理法則を適応させる技術か......」


「でもねぇ......まだ実用段階どころか、試験段階にも到達してなくて......」


「それは一体どういう事なのかしら?」



 なるほど......どうやら今回の件は、単なる説明会では終わらなさそうだ。

 僕たちをここに呼んだ理由がありそうだな......


 エリーがすでに計画の大枠を立てていることは明らかだ。

 その中でルシアの能力が必要になる可能性が極めて高い。



「簡単よう~。だって実験対象の概念存在が調達できないんだもさ!」


「キヒヒ、今、今は仮説、予想、それ形にしただけなんですぅぅ。ケヒヒ。」


「対象が居ないから、そもそも動作するかも分からない訳だ......でも、当てがあるんだろ?」


「そそ!あるよ。でもねぇ......確証は無いし、何せこっちの姫は追放された身だからねぇ?」



 エテルノが軽い調子で言うが、その背後に潜む緊張感を見逃すことはできない。

 この話には危険が伴う――いや、それどころか一か八かの挑戦そのものだ。


 僕は思案する。この件が神界での影響力を高める可能性もあれば、逆に僕の立場を揺るがすリスクもある。

 できればここで僕の王道に、傷が付くような事はしたくないのだが......



「お二方~?天上神界に第0惑星があるって知ってた?」


「......知ってるわ。」


「お?ルシア珍しいね?そういう情報はいつも、え!?みたいな事が多いのに。」


「......何を探してるかも分かったわ。」


「さささささすが、オスサイコのこここ、こい恋......キヒ!」



 ルシアが鋭い反応を見せた。珍しく僕の方がさっぱり話に付いていけない。

 そしてスカウトに来たはずのネオンを置き去りにし、天上神界の秘匿存在が明らかになる。








 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★



 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 狂気ともいわれた研究者はぶっとんでいるが、以外にも大人しく?

 そしてリア充を見ると、脳が蒸発する陰キャだった?


 次回、遂に最強のメンバー候補の情報を手に入れる?


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は

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 【【お知らせ】】中盤執筆の為、しばし毎日投稿じゃなくなります。

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