第61話 アンチヴァラル

61話ー① 運命の分岐点:神界の機密解除......





 意識は取り戻したが、僕らは重傷につき.......まだ病室のフッカフカのベッドに横たわっていた。

 周囲の回復術士や専門医の様子から察するに、生死の狭間を彷徨っていたのだろう。


 ――だが、そんな最中に気づいた異変がある。



「ルシア……気付いてる?」


「やっぱりそうだよね……これって。」



 そう言いながら、ルシアは手のひらをそっと開く。

 そこから眩い光の粒子が放出されているのだ。



「光子エーテルが……根源共鳴なしで使えるようになってるね?」


「一生戦えない身体になる覚悟もしていたのに……代償を負うどころか、私たち進化してる。」



 この奇跡的な変化に、僕たちはしばし言葉を失った。

 扱える量や操作の精度は、根源共鳴時には及ばないが.......通常時でも発現が可能になっていた。

 メリットは絶大なんてレベルじゃない.......


 魔力やエネルギーの制約を越えた、エネルギーの多重使用が理論上できるはずだった。

 いや.......そもそも魔法理論では不可能な事象も、引き起こせるかもしれない。


 もちろん再現というのが正しい表現ではあるのだが……



「もし……魔法や魔術の安定性に、呪術の利点だけを付与することができたら?」


「それだけじゃないわ。理論上でしか存在しない机上の空論や、フィクションにしかない超常の力すら……再現できるかもよ?」


「しかもだ。根源共鳴以外でも扱えるなら……練度を上げる効率が段違いだ。」


「まだまだあるわ、私たちが成長すれば『根源共鳴』も掛け算式に強化される......」



 このとき、僕たちははっきりと感じ取った。自分たちの才能を......

 目の前に広がる新たな力の可能性に、全身が震えた。



「いけるよ、僕たちなら。」


「ええ……もっと高い所に行ける。アウルフィリア様の領域にだって届くわよ。」


「どうせなら超えたいな。アウルフィリア様ですら神界最強で、世界最強じゃ無いみたいだし。」



 確かな手ごたえが胸の奥から湧き上がる。なんせ僕は一度、『最強』の称号を諦めている。

 しかしこれでまた『世界最強』の領域へと、駆け上がる未来を夢見ることができる......かも。



「じゃあ……目標は初代全神王にしましょう?」


「いいね!面白くなってきたな......」


「のんびりしてたら置いていくから。」


「任せてよ。そういう雑魚を、余裕で追い越すのが特技だから。」



 そんな軽口を交わしながら、しばらくの間は療養に専念することにした。

 病室ではこっそりキスをしてやったり......とにかく二人きりの時間を楽しんだ。


 ......何せ動けないからね!!








 ――――1ヶ月後――――



 療養中にはガリブや他の友人たちが見舞いに来てくれた.......

 治療中なのに見舞い品に酒を持ってきたのは、流石に未開の原人だ。


 そして僅か1ヶ月後......僕たちは驚異的な速さで回復し、ついに退院を迎えることができた。

 その回復の速さに回復術師たちは、あからさまに顔を引きつらせ.......ドン引きしているようだった。



「すっかり退院だね〜!」


「......ぅぐ。」


「何だそりゃ?何に反応した?」


「......プイッ」



 そうこうしていると……まだ退院してから2〜3分しか経っていないというのに、早速ギルドから連絡が届いた。

 いや情報早過ぎないか?ストーカーでもされているのだろうか??まあ、無茶を振ってくるのはいつものこと......

 では無いな、基本無茶ぶりしてくるのはソロモン様だけだ。



「早速で悪いけど行こっか。」


「うん......」



 僕たちは転移ポータルを使い、ギルドへと向かった。


 ギルドに到着し、いつものように応接室に入ると、そこには思わぬ顔ぶれが待っていた。

 4代目全神王はもちろん、アファルティア様、アウルフィリア様、さらにはソロモン様までが勢揃いしている。


 そう、目の前に並ぶのは天上神界の中でも選ばれし者たち……神族の精鋭中の精鋭だ。

 その荘厳な空気に少し緊張しつつも、僕たちはその場に向かって礼を尽くした。


 ......そして最初に口を開いたのは、4代目全神王だった。



「ルーク・ゼルトルス並びにルシア・ゼルトルス。この度の遺跡調査の件、ご苦労であった。」


「「はっ!」」



 ――そして4代目は僕の運命を大きく動かす、始まりの一言を伝える......



「この度の件を受けて、天上神界は新たなる専任組織.......『ヴァラル対策特務局』を創設する運びとなった。そこで……お前たちをその組織のトップ2に任命したい。」


「慎んでお受けいたします。」


「承知いたしました。」



 しかし、僕達は2人して言葉を詰まらせることなく即答した。

 僕は夢に近づくために、そしてルシアはさらなる力と情報を得るために。

 奇しくもヴァラルに関連する事柄で、僕らの決意が初めて合致した瞬間だった。



「詳しい組織の管轄と位置については、後ほど通達する。幹部の選定はお前たちに一任しよう。」


「承知いたしました。」


「この特務局の設立は、神界中に大々的に報道される。新たな新星の誕生と共にな。」


「!? .......そ、それはまさか。」



 僕たちにとっては確かに好都合ではある。

 最上位神格に昇進するための模擬戦で印象を残し、森林の調査任務でもニュースになった。

 加えてこの件を報道をしてもらえれば、僕はアイドル的な立ち位置から脱却できる。


 しかし、これは裏を返せば......



「ヴァラルの存在を公表する。これまで隠されてきた初代や2代目の歴史、神界で起こってきた真実.......そして真都の隠蔽など、その全ての機密を解除する。」



 瞬間、場の空気が一変した.......

 これは未曽有の大パニックになる......四代目の支持率だってただじゃ済まない......

 神界の常識が壊される.......何より世界が大きくうねり出すだろう。

 


 ただ一つ言えることは.......



――――時代が変わる。








 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★



 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 ヴァラルや初代の機密が解除される事が決定され......

 天上神界は新たなる時代へと突入......する??


 そして遂にルークとルシアは、ヴァラルに対抗する光としての運命を背負いだす。


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は

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 更新は明日の『『20時過ぎ』』です!




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