第38話 猫耳少女と大老猫

38話ー① 第一惑星アイリーン






 訓練を初めてから2週間が経過した。


 その間、天道夫婦の道場へ訪問したり、武器や魔道具などを掻き集めたりしていた。

 今は霊薬や回復薬、解呪薬など集める為に第1惑星『アイリーン』に来ている。



「……和むわね。私この惑星好きだわ。」


「第3惑星と少し似てる部分はあるけれど、こっちは何と言うか広々としてるよね。人口も少ないし首都という概念もないしね。」



 第1惑星アイリーンには、高い樹木がほとんど存在しない。

 少し緩急のついた地形に、背の低い草花の草原が広がっているのだ。


 住居はトンネルを掘る要領で丘の中腹に水平の穴を開け、その中に装飾や壁、床や天井などを作っている。

 通称「小人の隠れ家」と呼ばれる、独特な建築様式を持っているのだ。


 魔法や魔術、科学は一切使用されていない。

 人々は畑を耕したり、森の動物を狩るなどの原始的な生活をしているのだ。


 12ある惑星の中でも1番平和な星だと言われており、住人の幸福度もぶっちぎりで一位だ。



「こんな所に霊薬があんのか?俺は信じらんねぇよ。」


「そうか?あたしはこういう所こそ掘り出し物があると思うっしょ!」


「お?そうか?ベレスが言うならそうなのかもな!」


「あたぼうっしょ!!」



 バ......バカな!!原人共の意見が食い違っているだと!?

 僕は今世紀最大レベルの衝撃を受けた。


 多分明日は槍が降る......



「で?どの扉がお店なんだろうか……」


「あそこで釣りをしている小人族に聞いてみるわ。」



 そう言うとルシアは、小川に釣り糸をたらす小人に声をかけた。

 小人は小川の横の丘に寝そべって、のんびり空を眺めている。



「すみません。少しよろしいでしょうか?」


「んぁ~?お客さんかい?どーしたん?てかあんた寒くないんかい?」



 小人は釣り糸をそのままに、状態を起こして話し出した。



「神族の肉体なので気温は問題ないんです。お気遣いありがとうございます。」


「神族階級の方かえ。お偉いさんだこりゃ。」


「お気になさらずに~。今は何を釣っているのでしょうか?」


「今は春が来たばっかりでよ。雪解け水が混じるんやけど......そん時しか出てこん魚がおるんよ。」



 ルシアは好奇心からなのか、全く関係ない方向に話を広げ始めた。



「雪が降るのですね。さぞ幻想的で美しい光景なのでしょうね……それでその魚というのは?」


「綺麗さよここの冬は。是非次は冬にも遊び来てくれね。冬初めのお祭りは大賑わいだよ。あんたみたいなべっぴんさん達ならみんな大歓迎さよ。魚の名前に関しては分かんないね。とにかく白くて綺麗な魚よ。昨日は一匹釣れたけど今日はダメね。」


「是非伺いますね。」



 え!?こんな原始的な方法に引っかかる魚が神界にいるの!?!?


 ともかく......名前も知らない魚を釣っているらしい。

 にしても雪解け水にしか現れないというのは不思議な特性だ。ぜひ捕まえてバラしてみたい。



「それで?何か聞きたいんだっけか?」


「ここには薬草や薬液を売っているお店はありますか?良ければ場所をお教えて欲しいのですが......」


「あっちの方にある赤くて丸い扉は見えっか?いや扉は全部丸いさね……」


「何かとても可愛い扉ですね......」


「よぉ分かっとる。赤くて猫の絵が書いてある扉よ。あそこが雑貨屋。何の薬かは知らねぇけんど、売ってそうな店はあそこだけだろうさ。」



 指を指した方向には赤い丸扉に、茶色の猫の絵が描かれている家があった。

 見た限りかなり新しいようにも見える。最近引っ越してきたのか?



「あの扉ですね!ご丁寧にありがとうございます!申し遅れましたルシア・ゼレトルスと申します。」


「ゼレトルスさんね。またおいでなすってなー。ここはいい所やから。」


「はい、失礼します。」



 そういいルシアはこちらに歩いて戻ってくる。

 全員神族なので話は全て聞こえており、早速そこに向かう事になった。



「にしてもルシアっちは人当たりがいいなぁ。あたしらだったらオイおっさん!とか言っちまうっしょ!」


「だな!咄嗟に敬語使えんのお前らすげぇぜ!!俺らなんて前の日から予行練習しないとタメよタメ!」



 知能を筋力で潰された肉ダルマ共め......

 一体僕とルシアがどれだけ尻拭いさせられたと思ってんだ!!


 実際2人はその脳筋さで多くの場所で失礼を働いたり、反感を買ったりしている。



「使えるようになれよ。親友として言うけど使えないなんて論外だからな?」


「わりぃわりぃ。気をつけるぜ。」


「あいよ~っす。」



 あっ、ダメだこいつら絶対分かってない......

 そんな原始人を無視して言われた場所に向かうことにしたのだった。

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