31話ー➂ 迷いを捨てよ
そうして出発前日の夜まで僕らは高級ディナーを食べたり、準備や情報収集に勤しんだ。
情報収集に関してはこれといって有力な情報はなく、この任務の危険性を再度実感した。
「ルシア。一昨日はソロモン様の前で、断ろうとした僕にああ言ってくれてありがとう。」
「ルークはさ......私の夢があるって言ったら、命をかけられる?」
「当然かけられるよ。あそこまで即答できる自信はないけどね......」
「私達は片割れよ。愛する人を死なせてしまう覚悟は、常日頃から持つべきだわ。」
その通りだ。
たとえ僕一人がどこかで死んだとして、それはルシアの死にもなりうるのだ。
「そうだね……でも君を失うと思った瞬間固まったよ……思考では分かってても、僕はルシアを死なせたくないらしい。」
「今更よ?あなたは常に安全策を取って、多くのリスクを踏まないように行動する。慎重ってそれだけ臆病って事でもあるの。」
はっきりと臆病者と言われて少し心にきた。
ルシアは上げて落とすのが本当に上手い。
「あなたの過去も知ってる。失うという事に恐怖心があるのも、リスクを極端に避けようとする事も。でもそれに何度も助けられたわ。だからそのままでいて、また私を助けて欲しいの。必要なリスクは私が取る。だから無用なリスクはルークが取り除いて。」
「あはは。かっこいい嫁だな。そゆのって普通僕が言うことじゃないの?分かった。リスク取りは任せるよ。」
ルシアの聡明さにいつも助けられる。
僕は細かい事を緻密に突き詰めるより、全体のバランスを取る方を優先する。
「そんなかっこいいものでもないわ。ルークは本当に追い詰められれば私より冷静で、私より動ける。私は……本当に危ない時は助けて貰ってばかりなの……」
「そこはメンタルと慣れさ!命の危機に瀕した数の違いってやつ?潜ってきた修羅場の数も戦ってきた場数も、死を覚悟した窮地の数も違うからね。」
だからこそ僕は慎重になりすぎるのだろう。
一つの判断ミスや、些細な情報漏洩が「死」に繋がる事を知っているからだ。
しかしこの間、多少のリスクでも、長期的に有利になる選択しようと考えを改めた。
「ルシア。とりあえず今日は明日に備えて精神を休めよう。心が不安定だと上手くいく事も上手くいかないからね。」
「あなたが言うと何か説得力があるわね......それは自身の経験則から?」
「あぁ。生死にはとても大切な要素だよ。」
こうして僕らは自宅のある浮島に帰った。
その夜は最後かもしれないと思った為、夫婦の営みも忘れず行った。
あまり激しくはできないけども……
次の日僕らはギルドに向かった。
本来ならば目的地に直行するのだろうが、今回は偽装工作が必要だからだ。
「ソロモン様。予定通り来ました。」
「よく来たね。今から僕の神法で君達のドッペルゲンガーを生み出す。余程の実力者や君達をよく知るものでなければ気づかないだろう。そしてこのドッペルゲンガーに本当に任務をクリアしてもらう。こちらも本来君らからしたら高難度なものだ。」
恐らく魔道神ソロモンはこういった力を使い、今現在でも色々な場所で成果を出しているのだろう。
「いいかいルークくんルシアちゃん。接触しそうになったら無理せず逃亡するんだよ。近づきすぎなくていい。それとこのクエストが終わった暁には、ドッペルゲンガーにクリアして貰った方の任務を大々的に国民に報道する。見出しはそうだなぁ......新最上位神!昇格直後に異例の大活躍!かな?」
「それは……いいですね。評価が更に変化しそうです。」
そこでアファルティア様も口を開く。
「くれぐれも無理をして近づいたりしないようにして下さいね……私達十神もグランディルバルドとアウルフィリア以外の3人が万が一の時の為に待機していますが……駆け付けるまで持たないでしょう。」
「分かっています。覚悟の上で僕らはここに居ますから。」
「これまで色々と私達2人によくして頂きありがとうございます。」
そして3人で作戦を確認した後、遂に予定の時刻となってしまった。
「時間さ2人とも。また会える事を心から願っているよ。僕が秒読みをするから0と言うのと同時に隠蔽を掛けてくれ。僕やアファルティアが渡したものや自身の神術、買ってきた魔道具の隠蔽効果を全て発動させるんだ。」
「分かりました。」
僕とルシアは秒読み終わりと同時に隠蔽効果を一斉に発動させた。
その瞬間、魔道神ソロモンが作り出したドッペルゲンガーの僕らが現れた。
後は敵に「この場面」を映像として監視されていないかどうかだ。
そこはもうギルドのセキュリティを信じるしかない。
「よし。ひとまずコンマ1秒のズレもなく、ドッペルゲンガーを作り出せた。後は隠蔽神法をかけた僕の転移ゲートで、現地の惑星周辺まで転移してもらう。恐らく飛翔で現地に移動をするよりも見つかりにくい。」
「......行こうルシア。」
「そうね。行きましょう......」
僕とルシアは転移ゲートを潜った。
しかしこの決断は......
ルシアに回復不可にも思える、致命的な傷を負わせる結果となる。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
31話ー➂をここまで読んでくださりありがとうございます!
ついに近づく最悪の運命......
これまでのほのぼのとした話とは変わってこれからは、暗くなるかも??
そしてついにヴァラルに近づく手がかりが??
もし面白い、続きが気になる!と思った方は【♡応援】や【星レビュー】をしてくれると.....超嬉しいです!!
何かあればお気軽にコメントを!
遂に次回は31話の最終回!!!
更新は明日の『『22時過ぎ』』です!
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