29話ー➂ 超神速抜刀術『神雷』
「なるほど......確かに大した腕前。しかし私を仕留めるのにはまだ足りない。」
「凌いじゃったかぁ……ただ無傷とはいかなかったようだね。」
鳴神聖は「身体強化なし」の剣撃だけで、これらを全て凌ぎきったのだ。
だが無傷とはいかなかったようで、口元に血を拭った後がある。
しかし内傷に関しては、どの程度の傷を負ったのかは悟らせて貰えない。
「当然相手を油断させるブラフの可能性もある。」
「まずその首を切り落とします。雷神線!!」
「出来るものなら!動体視力超強化!!」
鳴神聖は雷の魔力を纏い、一直線に飛び込んで刀を振り抜く。
あまりの速度に残像が見える。近接戦闘だけで戦えば、一瞬で勝敗は決してしまうだろう。
しかしオールラウンダーの僕には、そんなものに付き合う必要などない!
「動体視力を強化したところで......」
「残念!僕は天才なんだ!!見えさえすれば、感覚である程度対応できる!!」
剣での撃ち合いをしている最中も、常に魔法での追加攻撃を仕掛ける。
距離が取れれば『原初神の破壊槍』や『龍神王の咆哮』などといった神術で畳み掛ける。
相手が慣れてくれば、あえてこちらから仕掛ける。
それら全てと同時並行で魔力封じをしたり、毒や弱体化などのデバフで足止めをかける。
防御神術の展開が間に合わなければ転移魔法で逃げ......
それでも躱しきれなければ、直接剣で攻防をする。
「くっ.....中々攻め切れない!?」
「手数の多さには自信があってね。」
僕やルシアは消耗を気にせず、転移魔法や神術を無駄打ちできる。
しかし鳴神聖にはそれが不可能だ。
とは言っても......最上位神序列4位まで上り詰める実力者だ。
長期戦に持ち込めば勝てる!というほど現実は甘くはない。
しかし長く戦えば、こちらが有利になるのは間違いない。
「斬り払え!雷煌千撃!!」
鳴神聖は魔力で数百メートルに伸ばした刀身を、超高速で振り抜く。
驚くことに、弾幕魔法や罠などを纏めて斬り払ってしまった。
下方も含め全方位を斬り払ってもなお、こちらの手数が僅かに上回る。
鳴神剣聖に、次の攻撃が直ぐに降り注ぐのだ。
「あなたの戦法は、魔力を使った身体強化と刀での剣撃に起因する。さらにここは空中!魔法で足場を作って空中を移動するあなたにとって、激しい移動をすればするほど......魔力を大きく消費する!」
「......」
空中戦において、空中を移動するには主に2つのやり方がある。
1つは飛行魔法で飛び回る方法。
そしてもう1つは、足を出す場所に、魔法陣で足場を作り空中を走って移動する方法。
飛行魔法は移動速度が上昇しても、消費魔力はそれほど増加しない。
しかし足場を作る場合、足の回転速度が上がれば、その分多くの足場を作らなくてはならない。
本来気にするほどの消費量ではない。
しかし最上位神の中でも、魔力量の少ない鳴神聖にとっては死活問題なのだ。
「足場の魔法を節約し始めたな!踏み込みの精度がさっきより甘い。捌きやすくなってきた!」
「……ここで魔力量の差が出ますか。つくづく才能の差は恐ろしい。」
魔力量は鍛錬で上げることができる。しかしそれは激的にではない。
平均して100年で10%前後だ。元々の魔力量が多い者も、多少なりとも鍛錬する。
そのため生まれつき魔力の少ない者が、追いつくのは難しいだろう。
僕は戦いながら鳴神聖を煽った。実の所、長引けば国民からの印象が悪いからだ。
「僕は生まれた時点で、今のあなたの1000倍近く魔力量を持っていた。この差は埋まらない。」
「それでもこのまま戦えばあなたは私が勝つ。それは分かってるはず。だからそうやって煽るのでしょ?」
鳴神聖の言い分は概ね正しい。
このまま戦い続ければ、粘り勝ちされるだろう。
まだ切り札や、一発逆転の手段を向こうも持っている。
そして圧倒的な戦闘経験から、その使い所をまず見誤らないだろう。
つまり僕の集中力が切れ、一瞬でも隙を見せれば......すぐにひっくり返される。
そして僕はまだ、鳴神聖の隙を見抜けるほどの観察眼は無い。
このままではマズイ……
戦闘経験の差は命の奪い合いにおいて、時に生まれ持った素質より重要だ。
「でも分かった。長期戦には持ち込まない。手段を選ばない父の教えではあるけれど......夫の流儀には反する。この戦いは今も見ている夫に捧げる!全力の真っ向勝負で.....叩き潰すわ!!!」
「なら正面から打ち破って僕は......最上位神になる!」
そう言って鳴神聖は刀を納刀した。
正確には納刀させることを許してしまったのだ。
「納刀。帯電。領域発動。」
「......」
「超神速抜刀術【神雷】」
「なるほど……それがかの有名な……」
超神速の抜刀術『神雷』
それは彼女を、最上位神序列4位にしている所以でもある......
発動させれば視認さえ不可能と言われる、最上位神最速の一撃......
第二策の準備ができていない現状でこれは......絶体絶命のピンチだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで29話ー➂を読んでいただきありがとうございます!
ついに明かされる鳴神剣聖の超神速抜刀術『神雷』
にもかかわらずルークはまだ第2策の準備が!?
絶体絶命の窮地に主人公はどう立ち向かうのか!?
もし面白い、続きが気になる!と思った方は♡応援や星レビューを付けてくれると.....超超嬉しいです。
何かあればお気軽にコメントを!
次回の最新29ー➃(29話最終)
更新は明日の『『22時過ぎ』』です!是非ご覧ください!!
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