24話ー➁ 見えてんだな?ヴァラル......
――別区域担当、中位神のパーティ――
「くそ!!数が多すぎるぞ!!」
「こっちの回復は間に合わない!今すぐ回復術師に見せないと、この子は危ないよ!」
そんな会話が耳に入ってくる。
「大丈夫ですか!助けに来ました!!上位神のルークです!」
僕らが助けに駆けつけたのは、中位神の6人パーティーだ。
パーティーの内、既に3人が重症を負っており、回復も間に合っていない状態だった。
「すまない!!仲間を助けてくれ!自分らレベルの回復魔法では、手の施しようがない回復阻害なんだ!」
「分かりました。エリー!回復、魔法、を掛けてくれ!その他は各自魔物の数を減らすんだ!」
「おいルーク。策はあんのかよ!もう根源共鳴は使えねぇぞ!」
確かにそうだ、もう二人は根源共鳴を使えない。だが策はある。
「簡単だ!増援が来るまで持ち堪えればいい!ルシアは僕らの区域の魔物を逐一確認してくれ!防衛システムで、迎撃できない数になったら戻る!」
「もうやってるわ。まだ大丈夫よ。」
そうして僕らは、万単位の迎撃魔法を放つ。
そして縦横無尽に駆け巡り、各々の武器で敵の数を減らした。
だがこの区域は魔力核弾頭で減らしていない。
なので、魔物の数が極めて多く、中々減っている気がしない。
そうして僕らは5分弱、中位神達と共同戦線を張った。
「ルーク!あと数分で私達の区域の魔物の数が、迎撃システムの防衛力を上回るわ!!」
「くっ......こっちの数も減りきっていないのに。」
先程に比べれば、かなり数は減ったのだろう。
しかしこのままこの場を離れてしまえば、消耗している中位神が堪えられる保証はない。
「自分らの事はいい!行ってくれ!!何とか持ち堪えてみせる!」
「分かった......すまない!皆戻ろう!」
「おけ。」
まぁこういう事もあるかぁ。
やむを得ないが、もしダメでも......見捨てるしかないな。
素直に納得し、見捨てる判断に賛同したのはエリーだけだったが......
そうして僕らは、自分の担当区域に戻ることになった。
――再び担当区域に戻り......――
「ルーク......私達が根源共鳴をすれば助けられる。彼らを助ければ、選挙のとき少なからず有利になると思うわ。判断はルークに任せる。でも私は助けたい。」
これは長年共にいるルシアが、僕に意見する時の方法だ......
自分がやるべきだと思う事を伝え、
メリットの提示をした後に......
自分の意思と思いをストレートに投げかける。
論理的に思考をするタイプの僕に、意見を通すために彼女なりの結論。
正直いつも、一考の価値があると思う内容ばかりだ......
しかし僕は、その答えを何となく濁した。
「......考えてみるよ。」
......この前とは状況が違う。
この前はアファルティア様の結界があり、外から状況が見えなかった。
それでも天翼王を超える実力者からは、見られた可能性は大いにある。
だが今回は違う......
結界などない。完全に外部から丸見えなのだ。
するとガリブがとある異変に気付く......
「おいルーク!段々と増えてきてねぇか!?」
「まさか、第2波でもあるっていうのかよ......」
「ルーク!!やっぱり私達が......」
第2波......だと!?まさか......
大型破壊兵器が使用される事を考慮しての戦略?
「ルークっち!さっきより多い! これはもう、あたしらでも無傷は無理っしょ!?」
「おにぃ。H3確保。ここ見捨てる?」
「H3、OK。エリー、流石に見捨てるのは最終手段だ。」
「ん。おけ。」
そもそも自然発生した魔物を全部集めても、第2波の数は現実的じゃない......
これは......魔物そのものを、人工的に生み出す技術を持っているな......
「ルーク!!!」
「......ごめんルシア。今回は使えない。」
またはそれに似た、劇的な速度で魔物を増やす技術......
どちらにせよ、第2波タイミングが良すぎる......
「は、はは。見えてんだな?ヴァラル。この状況が!!」
「え?」
クソ......マズったな。
恐らく黒幕に神術が使えるのがバレた。
しかしだからこそ、これ以上手の内を見せる訳にはいかない!!
そしてそう決意した刹那、星中に響き渡るほどのアナウンスが聞こえてくる。
「増援が到着致しました。ただちに撤退を行って下さい。」
「て...撤退!?増援が来たのに合流せず撤退するのか!?」
「ルーク......どういう事?」
「とりあえず従うしかない。全員撤退だ!」
その後、僕らは撤退しテントを立てた野営地に戻った。
相変わらずシレティムの大地は荒涼としており、岩肌がむき出しになっている。
しかし一つだけ以前と違う事がある......
......長い黒髪の、見知らぬ女性が立っているのだ......
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