17話ー➁ 相性最悪!?魔道神と天翼王?





 その直後、僕は背後から恐ろしいほどの殺気を感じた。



その殺気はまるで鋭い刃のように背中に突き刺さる。

僕とルシアは一瞬で死を覚悟するほどだった。


しかし、その殺気は僕らに向けて放たれているものではない。

ソロモン様に向かって放たれているのだ。



「ソロモンさん?あなた何を勝手なことをしているのですか?」


「あは、アファルティアじゃないか。久しぶりだね。」



 その殺気の主はアファルティア様だった。

彼女がいつ現れたのか、まったく検討もつかない。


 気づけば、もう真後ろに立っていたのだ。

これが彼女の時空操作神法なのだろうか?



「嫌な予感がして来てみれば。若くて未来有望な二人を危険な場所に送るとは何事ですか?」



 ああ、助かる!ホントにこの人は女神だわ。

ルシアも隣でホッとした顔をしている。



「いやぁ、これは二人の成長のためなんだよ?劇的に成長するかもしれないだろう?」


「あなたは単に、魔道のデータ収集と、二人がどう対処するかを見たいだけでしょう?もっともらしい理由で嘘をつかないでください。」



 なんてこった……

この優男は、ただの好奇心で僕たちにやらせようとしてたのかよ。


自分の研究のために、他人に命を賭けさせるなんて……

とんでもない神様じゃないか……。


 すると魔道神ソロモン様は少し考え込んだ後、口を開いた。



「うーん。分かったこうしよう。二人で受けなくていい。誰か同行人を付けていいよ。それならどうだい?」


「……かしこまりました。お受けします。どんな方法でも大丈夫なのですね?」


「もちろん。元々無理難題を投げたのは僕だからさ。」



 何人か心当たりがある。

相手との予定が合えば、勝率を五割に引き上げることができるだろう。


 二割ではあまりにリスクが高すぎるが、五割ならギリギリ挑戦する価値がある。


 そもそも、ここで五割の生存率で生き残れない者に全神王の座は務まらない。


 運もまた実力の一部だ。実を言えば、さらに勝率を高める切り札もあるが……

それは最後までに温存しておきたい。



「アファルティア。これで文句ないよね?彼も決断したことだし、もう君に止める権利はないよ?」


「えぇ、問題ありません。」



 そして、アファルティア様は満面の営業スマイルを浮かべ、ソロモンに向けて優雅に微笑んだ。



「私が同行しますから。」


「「!?」」


「おぉ?君が同行するの?うわぁこれは一本取られたな。どんな方法でもいいってOKしちゃったからさ。何とも君らしい方法だ。」



 僕も流石に驚いた。ここまで気にかけてくださるとは……


 え?五割の綱渡りはどうしたって?

アファルティア様を同行させられる僕の強運も実力のうちさ。



「では行きましょうか、ルークくん、ルシアさん。」


「え?今からですか!?一応準備はできていますが……」



 僕らは念のため準備を万全にしてギルドに来ていた。

作戦も一応考えてはある。しかし、実のところ今日出発する予定はなかった。


もう少し情報収集をしたかったのだ。



「今から行きましょう。丸一日空いている日は今日を逃すと二週間後になってしまうので。」


「分かりました。ご同行ありがとうございます。」



 ルシアも申し訳なさそうにアファルティア様にお礼を言った。

恐らくアファルティア様は数少ない休日を、僕達のために使ってくださっているからだ。



「せっかくの休日を潰させてしまい申し訳ありません。アファルティア様、本日はよろしくお願い致します。」


「いえいえ。こちらこそ同僚がご迷惑をおかけして申し訳ないです。」



 そう言ってアファルティアはソロモンを睨みつけた。



「あははは。そう怒るなってさ。可愛い顔が台無しだよ?」


「既婚者の私にそのような発言は品位に欠けると思います。」



 そうして僕ら二人はアファルティア様と一緒にギルドを後にした。


 ......ん?アファルティア様って既婚者なのか!?

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