26話ー➁ 呪術師の観光ガイド?しかも幼女?




「そこのおにぃさん。私をガイドに雇わなぁい?」



ふっ。既婚者に軟派を仕掛けてくる、馬鹿な女はどこのどいつ……

振り向いた先には、美しい金の刺繍とユリの模様の狩衣を着ている幼女が立っていた。


その髪の毛は毒々しいほど濃い紫色で、少女が長い髪を紙?のようなもので結っている。

身長は恐らく140くらいだが立烏帽子でかなり盛っている。


しかし油断はできない。この見た目で僕より年寄りなんてザラだ。



「どうして声をかけてくれたのかしら?」


「おねーさんと私の髪色が似てるからだよぉ。始めてなら私が案内するよ!」


「ふーん。で?ホントのところは?」


「ちょっと、ルーク……」



実際体内に魔力はほとんど感じないが......

いきなり声を掛けてきた理由が不可解すぎる。



「うーん。お友達にね会いに戻ってきたの。でもついつい寄り道しちゃったらね。魔導船に乗るお金が……なくなっちゃって。」


「じゃー案内お願いするわ。半日よろしくね?」


「うん!任せて!」



ルシアのお人好しが発動した。

まぁ見たところ、害意は全く無さそうだし良いとするか。



「じゃー美味しいお蕎麦屋さんでも行こぉー!」


「ふふっ。行きましょ。」



ルシアはすっかりメロメロにされている気もするが……

まぁ警戒するのは僕の仕事って事でいいか。



「君の名前は?僕はルークでこっちはルシア。」


「私は千冬だよぉ!よろしくねぇ!ほら着いたよ!」



僕は知識として蕎麦について読んだことはあるが、実際に食べるのは始めてだ。


店の外観は小綺麗でこじんまりとしていた。



「こんにちわー!」


「へい。らっしゃい。」


「ざるそば2つとかけそば1つお願いしまーす!あと全部にえび天とかき揚げも!お皿分けてね!」



いや、この子人の注文を勝手にするのかよ。

まぁオススメってことなのかもれないけど.......


中々に独特だぞこの餓鬼……。

そうして僕らは席に着いて話し出した。



「お姉さんがかけそばね!おにいさんと私はざるそば!ざるそばはまぁおにいさんが交換こしてくれるでしょー!」



この子僕がルシアにざるそば分ける前提で話してる……



「分かったわ。ありがとうね。そういえば千冬ちゃんはどこに住んでるの?」


「うーん。私ね。呪術師なの。だから特に定住してないんだぁ!」


「呪術師なのねー。千冬ちゃんはどこの惑星に行きたかったの?」


「第8惑星のディアフィリウス!!」



ん?呪術師って定住しないのが一般的なのか?それは初めて知ったぞ。



「そんなのねーじゃー案内費用は往復分払わないとねー。」


「ほんとぉ!ありがとうー!ニコォ」


「ぐっ可愛いすぎるわこんなの……」



ルシアは完全に子供をあやす感覚で接している。

そうして話している内に蕎麦がやってきた。



「どうぞー食べて食べてぇ!」


「いい香りね……多分啜るものよね?」


「うん。蕎麦は啜って食べる食べ物だよ。」



僕とルシアは傍を口にした。

何とも言えない風味と歯ごたえが広がりとても心地がいい。


またアクセントとして乗っているネギも程よい食感と味の変化を与えている。



「……私これは好きだわ。持って帰ろうかしら。」


「天ぷらもどぉぞ!何かおにいさんは食べ方知ってそうだね。」


「あはは……食通は最初は塩をつけるって読んだことがあるよ。」


「天ぷらに作法は無いよー!その人の好きに食べていいんだよー。美味しい食べ方とかはあるかもだけど。」



ルシアは黙々と食べている。

どうやら柏餅とは違い、蕎麦はかなり好みのようだ。



「千冬ちゃん。君は呪術師としての腕前はどの程度なの?」


「モグモグモグモグモグモグ。」



おいガイド。何やってんだ......



「私の腕前?最強ー!!」


「そうなんだ。なれるといいね最強に。」


「??絶対になってみせるよー!」



その後蕎麦を食べ終わったあとも街を案内して貰ったり、鰻に半ば無理やり連れていかれたりした。


半日ずっと居たが本当に敵意はなく、最初の触れ込み通り街についてよく知っていた。

そのため、より観光を楽しむ事ができた。



「ごめんね千冬ちゃん。本当はもう少し案内してもらいたいのだけれどもうすぐ夕方になるしそろそろ行って欲しいわ。危なくなるから。」


「うん!分かった!今日はありがとう!お礼にこれあげる!」



そう言うと彼女は懐から何やら呪文のかかれた呪符を取り出した。


見た目はかなり危なっかしい。もはや呪物だ。



「はい!お守りの呪符!役に立つかは分かんないけど記念だしあげる!」


「自分で作ってくれたの?ありがとう大事にするわね。」


「いつか君が最強になったらこの呪符を持って会いに行くよ。とりあえずこのくらいで往復分くらいはあるはずだよ。」



もしそうなったらコネクションとしては素晴らしい。



「はーい!ありがとうー!じゃーまたねー!親切なおにいさんとおねえさん!!」



そう言って彼女は手を振りながら足袋でペタペタと走り去っていった。


夕暮れと和風の街並みが相まってとても印象的な別れに思える。



「……可愛かったわ。タッパに詰めて持って帰ろうかと思ったくらいよ。」


「おわまりさん……ここです......」


「大丈夫よ。2割冗談だから。」


「うん。ガッツリアウト!?」



言い分だけ聞くと完全に性犯罪者だ。



「もちろんそれも冗談よ。さ。教えてもらった宿にでも泊まりましょう?明日は道場を訪ねるんだから。」


「......そうだね。2日続けて別の場所を観光したのは始めてだったから楽しかったよ。」



その後、僕らは千冬ちゃんに教えて貰った旅館に向かうのだった。


平和な時間は、刻一刻と失われているとも知らずに......





☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


どうもこんにちわ。G.なぎさです!

今回は平和な観光回です!


次回はついに謎の老人が教えてくれた道場へ?

今後の展開に大きく関わる重要キャラも登場!?


そして千冬の「お友達」とは?


熾烈な運命の中、最後のとも言える平穏。

これから主人公達を巻き込む運命とは!?


次回第26話ー③は『 『 明日22過ぎ 』 』更新です!!

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