9話ー③ 圧倒的な蹂躙の結末
「第17階梯 神術 原初神の雷槍。」
僕は両手を高く掲げ、空中に巨大な魔法陣を描いた。
そこに現れたのは、赤橙色に輝く雷の槍。
槍の長さは5メートルにも及び、その雷はこの世の電撃を一か所に集めたかのようで、驚愕の一言に尽きる。
そして周囲10キロメートルにわたって無数の放電が奔り、その圧倒的な雷撃は木々や大地を瞬時に蒸発させた。
光と影が入り混じる中で、赤橙色の雷が天を裂くように煌めき、全てを焼き尽くす。
その壮絶な光景は、まるでこの世の終わりのようだ。
「なんだ!何なんだこの力は!化け物がぁぁ!!ぐぁあああああああああ」
「滅ぼせ。原初の雷。」
その掛け声と共に、10キロを破壊していた雷撃がすべて中心の槍に集約し、
超高密度となって呪術師に向かって放たれた。
原初神の雷槍は、一瞬で呪術師を消し飛ばし、その結界さえも貫通した。
槍の放たれた軌跡は遥か彼方まで貫き、無限に続くかのように彼方の空に消えていく。
その力強さと美しさに、周囲の風景は完全に変貌した。
圧倒的な威力を周囲に残った破壊の跡が静かに物語っている。
「凄い!!想像以上だ。やはり神術と魔術ではレベルが違うな!」
だがいくつか誤算があった。
発動時間の短さや威力は当然申し分ないのだが……意外と周囲への被害が尋常じゃない。
上方向に打ったのにも関わらず、森林地帯のは直径10kmは草1つ残らず蒸発してしまった。
更に初めてという事もあって制御があまりに難しい。
探知できる範囲の外まで余裕で飛んでいってしまった。
本当は制御をして、途中で空中に放電させる予定だったのだが......
しかし......この威力を持ってしても、十神柱にはかすりもしない。
彼ら相手に最低限戦うには、こちらも切り札を切る必要がある。
それにしても......
「これは......やらかしたな。」
僕が演算で計算しきれていない距離に、文明とかあったら多分滅ぶ!
「……アファルティア様に土下座しよ。」
そう決意を固めて僕はその星を後にした。
僕はまず通信魔術でルシアに連絡を取った。
「ルシア。終わったよ。今から帰る。」
「ルーク?無事?話聞かせてね?」
どうやらルシアはガブリとベレスを守らず、シカトかけた事実に気づいたようだ。怖い。
帰りたくない。絶対怒られる......
とりあえず僕は、エルガブリとベレスが治療を受けている医療機関に向かった。
宇宙の星々は相変わらず美しく輝いている。
医療機関に到着すると、ルシアが2人の容態について説明してくれた。
「2人とも命に別状はないって。治療したからあと30分で全快するみたい。」
「それは良かった。」
あと30分で全快!?魂に破損があったよな?
幾ら2人が脳筋だといっても、その速度での回復は不自然だ。
きっととてつもなく凄腕の治療術士及び治療技術を持った誰かがいる。
是非とも話を伺いに行きたい。今すぐにでも!
「ねぇ。何であの時2人を守らなかったの?ルークは私より早く気づいてたんでしょ?」
「咄嗟に二人の前で実力を出す事を躊躇したんだ......」
僕はは2人だけで、ギリギリ爆発を耐えられると踏んだのだ。
この部分で僕は完全に判断ミスをした。
「あのまま生身で受けてたら即死だった。私が咄嗟に守らなかったら今頃......仲間を何だと思ってるの?」
「言い返す言葉もありません。」
ルシアもかなり強い。自分の身を守って他の人を守れるくらいには……
「あなたなりの意図がある事は知ってる。あなたが実力を隠す為に、非情な行動をするもの分かってる。あの2人も当然感づいてる。」
「......」
実際に僕の本当の実力はエリーやルシア、アファルティア様くらいしか知らない。
僕は2人に実力を偽り続けているのだ。
しかし彼らは実力を隠しているのは察した上で、命を預けてくれているのだ。
「親友は敵じゃないわ。保身と親友の命を天秤にかけないで。反省してよ?」
「……ごめん。後で2人にも謝るよ。」
事実、今回の僕の行動は浅はかだったと反省している。
長年仲良くしてくれた親友夫婦より、好奇心と保身を優先してしまったのだから。
「私はあなた達兄妹がどんな境遇で育って、あなたが何を背負っているかも知ってるわ……でも......これはダメなの。」
「……」
「次からの行動で示して欲しいわ。」
「分かった。いつもありがとう。」
そう言って僕は、回復途中の2人の様子を見る為に傍に駆け寄った。
私の夫、ルークは壊れている。
彼は保身と好奇心のバランスを自分で制御できない時があるのだ。
ルークは命に明確な順位をつけている。優先順位1位の相手を助けるためなら、2位を切り捨てることに一切の躊躇がない。
でも私は知っている。
ルークは本来、そんな人ではなかったことを......片割れだからこそ分かるのだ。
何かが彼の心を壊してしまったのだと。
ルークの精神力は信じられないほど強い。
だからこそ、彼は自分の限界までその負荷に気づけない。
私は、いつか彼の心が壊れて、電源が切れたように動かなくなるのではないか?
そんな気がしてならないのだ......
あの日誓った。ルークの心は私が守ると。
......固く心に誓ったのだ......
にも関わらず不安で押しつぶされそうな私がここにいる......
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