7話ー➁ 未知の結界森林 テルモパレス
少し時が経ち、僕らは最終確認のために、ギルドの一室を借りて集まっていた。
部屋には半透明のディスプレイが壁に埋め込まれ、ホログラムが宙に浮かんで情報を映し出している。
「んで。クエスト説明、頼むぜ!おめぇらがどうせ確認してっから、なんも見てねぇんだ!」
「んま。こんな応接室用意されてるくらいだし?ルークっちがあたしら呼ぶくらいだから割と危険なんっしょ?」
実際今回の任務は調査がメインだ。
依頼内容には可能ならば討伐と記載されている。
少し前にBランク帯の下位神6人パーティが消息を絶っている。連絡もなしにだ。
「今回の敵は未知数だ。結界を発動しているようで、外部からの監視をすべて遮っている。更に何の連絡もなく、Bランクの下位神6人が一斉に消息を絶っている。」
「私達が依頼されたのは、その地点の調査と結界術の解除よ。依頼地のテルモパレスは元々ただの森林地帯よ。誰も住んでいない森だから、結界が発現するまで何も発見できなかったみたい。」
知性の高い魔物なのか、それとも知的生命体なのか?
意図的に結界を張ったのか、無意識に作り出したのか?
結界内に新たな魔獣や妖怪の類が潜んでいるのか、それとも結界の主が一人で全てを支配しているのか。
何一つ分からないことが、任務の難易度を一層引き上げている。
謎が謎を呼ぶこの状況で、僕たちは慎重に行動しなければならない。
「下位神が連絡する間もなく全滅か……確かに俺ら上位神案件だな!」
「そもそも魔法や魔術の保証もねぇかんな?呪術や科学での結界かもしれないし。こんだけ情報がないと、ルークっちでも現地に行ってみないと詳しい事分かんないわなー。」
この二人、馬鹿だと勘違いされがちだが、決して馬鹿ではない。
今回は僕が説明をすると踏んで、あえてサボっていただけだ。
戦場では冷静な戦術判断と機転の効いた行動を見せ、長年にわたり冒険者一本で生計を立てている夫婦だけのことはある。
そんな素質や経験に加えてこの二人には、勝利を手繰り寄せる運もある。
そして僕は魔術で彼らに作戦のデータを転送した。
「作戦は今、情報転送で送った通りだが、十中八九これ通りにはいかない。何かあれば各自臨機応変に判断してくれ。」
「ベレスに準備不足のものが無ければ今すぐ行きましょう。」
ベレスは昨日の任務から一度も家に帰らずに来ているため、ルシアは万が一の時のために確認を取った。
その慎重さ、念には念を入れる性格は、僕たち二人ともそっくりだなと感じた。
「ルシアっちありがと。でも蛇頭が収納に入らんくなるくらい準備してるし問題なし!」
その言葉を聞いて僕らはギルドを後にした。
目的地に向かう道中。
今までベレスと談笑していたガブリが、真面目な顔で語り掛けてくる。
「んで?ルーク。目的地周辺には俺らは何で近づくんだ?もう考えてんだろ?」
「うん。乗り物を使うと近づく前にバレる。今回は戦争ではなく調査だから、隠蔽魔法を施して転移魔道具で飛ぶ。バレないために転移の位置は少し遠くに設定するけどね。」
今回の任務の主目的は調査だ。
要塞攻略や宇宙基地攻撃のような大規模な作戦とは異なる。
そのため、隠密効果を付与して、可能な限り敵に気付かれないように慎重に接近するのが最適解だ。
「座標演算終了だ。転移魔道具起動するから、各自隠密効果をかけてくれ。今回の任務は諜報や暗殺ではないから、二人は全力で隠蔽はせずに魔力を温存しろよ。」
今回の任務は、あくまで気付かれにくくすることが目的だ。
全力の隠密魔術を使う必要はない。
僕やルシアは魔力量が多いから多少の無駄遣いも問題ないが、親友夫婦はそこまで魔力量が多くない。
無駄遣いをすれば、長期戦闘になった際に支障が出る可能性があるのだ。
「よし!行こう!!」
「主人公の親友ガリブの嫁 ベレス・エルナードのイメージイラスト」
https://kakuyomu.jp/users/nagisakgp/news/16818093078316822437
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます