2話ー➃ デカすぎたゴーレム!?





 その瞬間、エリーの身体強化のレベルが数段上がった。 

おそらく下位の身体強化魔術から、中位の魔術に切り替えたのだろう。 

  



 ちなみに魔術も魔法も、位階が上がるほど強力になり、その最高は357位階。 

 また、魔術の上には神術、魔法の上には神法という上位の術が存在している。 

  

 そして僕と同じ、深緑の魔力がエリーの全身を覆った。 

彼女は手に持っていた短剣を仕舞い、亜空間からリーチの長い神槍を取り出す。 

  

 槍を構えた瞬間、突き刺すような殺気がベヒモスに向けられた。 

彼女の戦いのギアを一段階上がった。 

  

  

「ついでに正確な核の位置も探せる?さっきのは大雑把だから。」 

  

「ん。おけ。」 

  

「よし頼む!」 

  

「うぃ。」 

  

  

そして僕は自身の魔力を練り上げ、五つの魔法陣を地上に展開する。 

  

  

「召喚魔法。ミスリルゴーレム!!」 

  

  

 僕は第256位階に位置付けされている召喚魔法で、身長100mのゴーレムを5体召喚した。 

  

 これらのゴーレムは、のそのそと動くその辺のゴーレムではない。

俊敏に動く優秀な兵士たちだ。 


100mという巨大なサイズにする必要がなければ、数百、数千体と呼び出せる魔法なのだが…… 

  

  

「ゴーレム1から3!!前衛で物理攻撃に集中、連携して敵の動きを封じろ。敵の注意を散漫にさせるために、各自が異なる角度から攻撃を仕掛けて混乱させるんだ!4と5は後方から魔法支援。敵の防御魔法を解析し、隙を見つけたら初見の魔術攻撃を打て。あとその時の反応は僕に共有するように。よーし!各自散開!多方面からプレッシャーをかけ続けろ!」 

  

  

 ミスリルは天界でも上位に食い込むほど硬い金属だ。 

それをベースにしたゴーレムだから並の攻撃では倒せない。 

  

 少なくとも知性のある魔獣ならばこれまでと同じ対応は絶対にしない。 

  

 グギャアアアアアアアアアアア 

  

 星霊ベヒモスはミスリルゴーレムに手を焼いている。 

にも関わらず防御に使う魔力量を増やしただけで、魔法の種類そのものは変えていない。 

  

 攻撃自体も効いているし、ダメージも負っているようでかなり消耗している。 

ここまで追い詰められているのに何も戦略を変えてこないなら、敵に知性がないのは確定だ。 

  

  

「効いてるな。畳み掛けてやる!第252位階魔術・流星散弾雨!!」 

  

  

 上空に数万を超える魔法陣が展開される。その中から色とりどりの球体が連続的に発射される。 

  

 その光景は虹色の流星群のようだ。 

高速で動き回るミスリルゴーレムに当たらないよう操作するのは大変だが、効果は絶大。 

  

  

「ここまでしても討伐できないかぁ。ダメージも臓器まで届いてるか怪しいし。」 

  

「おにぃ。どーする?ちょい、本気出す?」 

  

「いや、これ以上はリスクだ。」 

  

「了ー。」 

  

  

 正直に言えば僕1人でも、エリー1人でも倒せる。

ただここは誰に監視されているかも分からない。 


 必要最低限の力で対象を討伐できるに越したことはない。   

そうこう考えている内に妹から通信神術で連絡が来た。 

  

  

「おにぃ。核の位置、確定。おにぃの予想通り。下腹部。」 

  

「やっぱりそうか。だけどあいつの周りは魔力密度が高すぎる。並みの遠距離魔術じゃ核を貫けない……」 

  

「うん。高位魔術以外、無意味。警戒もされる。だから無理。」 

  

  

 エネルギーの密度が高すぎると魔術は分散する性質がある。 

猛毒の中に弱毒を入れても効果がないのと同じ理屈だ。 

  

 ちなみに戦闘が開始してからの会話や指示は、全て言語を圧縮する通信神術で行っている。 

 コンマ0秒の世界で戦闘する僕達には、普通の速度で会話をする間などない。 

  

ちなみにこうして話しているが、常に高速戦闘をし続けている。 

  

  

「ベヒモスが魔力を使えるのって厄介だな……地雷魔術は前もって仕掛けないと意味がないし。別の手を考えよう。」 

  

「地雷、奇襲向き。直接攻撃ベスト。」 

  

「分かった。援護するから核をぶち抜け!!流星散弾雨はお前には当てないから。」 

  

「あい!適当な魔法......殺す。」 

  

  

 僕ら兄妹は神族の中でも器用なので、前衛も後衛も同程度の練度でこなせる。 

膨大な歴史の中、天界では様々な戦略が考案された。 

  

 パーティ戦略や役職特化修練、宇宙空間での立体戦術など、全て上げればキリがない。 

結果行き着いたのは全ての立ち回りをこなせる、万能型こそ最強という定説だ。 

  

  

「魔力。集める。支援よろ。」 

  

「兄ちゃんに任しとけ!防御は全部引き受ける!!真っ直ぐ突っ込め!!」 

  

  

 僕は自分の防御、回避、攻撃を全てこなしつつ、完璧なタイミングで妹の周囲に防御魔法を展開する。 

 妹は回避も躊躇もせず、真っ直ぐベヒモスに向かって飛び込んでいく。 

  

  

「よし。いいぞ!!そのまま決めろ!!」 

  

  

 そう言った瞬間......


咄嗟の防御魔法では防ぎきれないほどの、超高出力のエネルギー砲が飛んできた。 

  

 だがこれも想定通りだ。


 そんな状況の中......僕は勝利を確信した。 

  

  

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