2話ー③ ベヒモスとの激戦
「何だよ……これ。」
エリーは油断で咄嗟の回避が間に合わず、半身が焼け爛れそのまま地面へと落下していった。
「ベヒモスが熱線だって……?」
ありえない。ベヒモスは体の構造的に熱線が吐けるような臓器は存在していない。
「ドラゴンじゃあるまいし……誰かに改造されたのか?もしくは……」
そんな愚痴を呟きつつ、僕は再度放たれる熱線を躱してある事に気がづいた。
あれはベヒモスの口からではなく、体の外側から発射されている……
つまりこれはただ体の構造から繰り出されるブレスではない。
魔術か魔法……そのどちらかだ。
「くそ!!想像以上にめんどくさいな!」
妹の心妹の心配をしなくていいのかって?
心配ない、妹はすぐに再生して戻ってくる。
「油断。不覚。」
「いいから集中しよう!!身体強化をしていないとはいえ、超強靭なエリーの肉体を傷つける威力がある!!」
「皮膚、筋肉。ちょい焦げた。それだけ。」
僕は自分の神剣を抜いた。
大きさは一般的なロングソードだが銀色の刀身には数多の宝石が埋め込まれている。
柄や鍔も美しい装飾が施されている超一級の名剣だ。
「エリー!防御魔法で援護頼む!」
「おけ。」
近づく僕に対して狂化星霊ベヒモスは力任せの弾幕を仕掛けてきた。
どうやら侮られているようだ。その程度の攻撃で倒せると思っているのだろう。
「なら最速で距離を縮めてやる!!」
弾幕の数が多く、全てを一人で捌くと攻撃の手が遅くなってしまう。
避けると時間をくってしまう。
無理に避けずに僕とエリーの防御魔法で最短ルートを確保し接近した。
そして緩急をつけて接近し、超一級の神剣をベヒモスの首に叩きつける。
ガキンッ。
響いたのは鈍い金属音だった。想定通りの硬さだが、僕は念のためベヒモスから距離を取った。
「この硬度……通常の物理攻撃では歯が立たないな。でもベヒモスの外郭の強度は把握した。」
すると離れた場所で敵の弾幕を捌きながら、援護しているエリーが通信
「どー?核の場所......分かった?」
「あぁ。下腹部にエネルギーが集中している箇所がある。多分そこが核だ。」
これまでの行動から推察しても、論理的な作戦立案ができる程の知性がある可能性はかなり低い。
しかしまだ完全な確証は持てない。
「エリー!身体強化魔術を使って追加攻撃を仕掛ける。前提条件に確信が持てたら核を一気に破壊しよう!」
「了。」
この世界において魔法と魔術は明確に区別されている。
魔法は抽象的で感覚的な力だが、魔術は違う。
魔術は厳密な理論と計算に基づいており、イメージ力やセンス、才能によって効果の大きさが左右されることはない。
魔術とは、魔法を合理的に解明し、数式的に誰でも使えるように再現したものだ。
どちらにもそれぞれの利点があり、優劣を付けるのは難しい。
一般的に魔術の方が扱いやすく、発動に要する時間や魔力も少ない傾向がある。
魔法は想像力や才能、熟練度によってその効果が大きく左右され、発動前の妨害や予測が難しい。また応用性が非常に高い。
一方、魔術はその利便性と安定性から、同時に複数制御しやすく、一定の効果を担保できるとして広く用いられている。
僕は自分に身体強化魔術をかける。
筋肉の繊維一本一本が力を増し、反射速度が飛躍的に向上するのを感じる。
さらに、手にした神剣にも魔術を施す。
銀色の刀身は緑色の魔力の刃を纏い、その長さは刀身の十倍にまで伸びる。
「これならどうかな?さっきとは違うぞ!」
髪色と同じ深緑色に輝くその刃は、まるで星の光を宿しているかのようだった。
天上神界では、魔法と魔術を敵や状況に応じて使い分ける。
それぞれの利点を理解し、戦術の幅を広げることが重要なのだ。
「十文字!光線斬!!」
僕はあえて攻撃を口にしたが......
ベヒモスに複雑な思考を持つ、知性体特有の脳の電気信号はない。
加えて魔力を必要以上に派手に見せたにも関わらず、これまでと全く同じ方法で防御をしてきた。
知性がない可能性がさらに上がった。
「エリー、前衛交代。こっちは援護しつつ敵の行動パターンを制限する。」
「了。敵の命、削る。」
エリーの周囲が、僕と同じ深緑の魔力で充満される。
爆発的に膨れ上がった魔力に、流石の狂化ベヒモスも気づいたようだ。
その瞬間......膨大な殺気が妹から放たれる。
そしてエリーの肉体強化魔術が数段上のものに跳ね上がった......
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