第19話 時空の支配神

19話ー① 降臨、天翼王アファルティア!




 原初熾星王の肉体は既に跡形もなく崩壊している。


 しかし、突如として小型ブラックホールが出現し、常識では考えられない速度でどんどんと巨大化していく。



「い、一体どこまで大きくなるの......」


「原初熾星王は古い銀河を司る存在……多分超巨大銀河の中心にあるブラックホール並みの質量になるまで成長し続ける……」



 その時、アファルティア様が僕たちの元に現れた。



「お疲れ様です。まさか原初熾星王を倒すどころか圧倒してしまうなんて。」



 まるで目の前で巨大化する、ブラックホールのことなど気にしていないようだ。



「アファルティア様……あのブラックホールはどうしますか?僕達が対応......」


「いえ、私が対応いたします。本来であれば原初熾星王自身の銀河にいるので問題ないのですが……このままではここの銀河の法則を、自身の世界の物理法則に変えてしまいかねません。それと死んだ後にブラックホールとなるのは原初の名を冠する熾星王だけなのですよ。」



 なぜ原初から残る熽星王なのかが腑に落ちた。あれは完全なる循環と調和だ。

ただの熽星王ならば死んだ瞬間銀河と共に終わりを迎える。


 しかし、原初の名を冠する個体は違う。

死ねばブラックホールとなり、また新たなる銀河を創り出す。


 そしてその新たなるブラックホールがまた成長し、再び原初熾星王が降臨するのだ。



「しかしおかしな点があります......本来ここまで急速にブラックホールが成長する事が無いはず......」


「ヴァラルが何か改造を加えたという事でしょうか?」


「恐らくは......このブラックホールの巨大化が止まれず、あと数日巨大化し続ければ私でも対応できません......」


「アファルティア様でも対処ができないなんて......」



 確かに巨大化する速度は尋常ではない。

いくら宇宙や銀河によって物理法則が異なるとはいえ、これは不自然だ。


 恐らくヴァラルが手を加えたのは、原初熾星王のこの部分なのだろう。

暴れていたのは怒っていただけなのかもしれない......



「まだお二人とも、十分に対処できる余力はありそうですが......他にどんな罠があるかも分かりません。私が対処してしまってよろしいでしょうか?」


「は……はい。」


「……お手数をお掛けします。」


「いえいえ。若い者を守るのが先神の務めですので。」



 事実、ブラックホールをどうにかする手段はある。

しかし、重要なのは勝敗ではない......


この展開を僕や予想できなかったという点なのだ。


 僕の作戦ミスだ。


 時間的制約を気にして消費魔力を加味しない短期決戦にせず、消耗を抑えた長期戦にすればより安全に勝ていただろう。



「天翼開放」


「「!?」」



 その瞬間、膨大な魔力が周囲に放たれた。

それはこれまでに感じたことのない規模で、空間を震わせるほどの圧倒的な力だった。


 そして、彼女の背から広がる翼は、まるで宇宙の果てまで届くかのように壮大で美しい生成色の魔力を帯びている。


 その三対の翼からは魔力の塊ともいえる羽が溢れ出ており、辺り一帯に幻想的な風景に包み込んでいる。


 アファルティアの魔力量は今の時点で、天武前の僕達の魔力量を凌駕している。



これが天上神界の武力の頂点......十神柱の力......。



「こ、これが天翼......神名の由来になるわけだ......」


「綺麗……」



 するとアファルティア様は少し嬉しそうに答えた。



「嬉しい限りです。翼を褒められるのは私の出身種族では何よりの誉れなのです!この天翼は私の魔力の結晶なのですよ?」



 しかし、ブラックホールはそんな話をしている間にもどんどん巨大化していく。



「では、そろそろ対処しますね。」



 アファルティア様は翼を広げて言った。



「時空よ、止まりなさい。」




その瞬間......


世界の時は停止した。



吸い込まれていた残骸や周辺の惑星の動きまで、全てが完全に静止したのだ。


彼女のたった一言で、創世から流れ続けたであろう時は歩みを止めた。

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