第15話 禁断の理外干渉

15話ー① ルシア悪い子ちゃんデビュー!?






 狂化黒龍の討伐から3日が経ち、僕たちは久しぶりに休息の時間を得た。

しかし、ただのんびり過ごしている余裕はなかった。


 寝室の椅子に腰掛け、目の前に浮かび上がるモニターに集中しながらヴァラルの情報を収集していた。


 そんな時、隣のベッドからふわりとシーツが揺れ、ルシアが起き上がってきた。



「んん……ルーク?何かあったの?朝ごはん?」


「寝ぼけてるね。朝ご飯はまだ作ってないよ?」



 もうこの際、ボケ具合を録画してやるか?



「じゃあ、お風呂?」


「お風呂に入りたいの?」


「やだ。入らない!」



 いつもツンタイプ故にこのギャップは堪らない。

結婚してるから、このまま襲ってしまってもノープロブレム、合法だ。


 しかし、情報収集があるので今は控えるとする。



「ヴァラルと呼ばれる奴の情報について調べていてね。何か手がかりでもないかと思って。」


「ぅぅ。ごめん。起きる……」


「いや、別に無理して起きなくても……」



 ルシアは自身に電撃の魔術を放っていた。



「ぅぅぅ。あっ。」


「くそ。エロいなこの野郎。」



 痛みで目を覚まそうという作戦なのだろうが......

ベッドが焦げているあたりポンコツだ。


「ごめんなさい。起きたわ。」


「おはよう。随分とどエロい起床で。」


「う、うるさいわね……」



 いや、まずベッドを焦がしたことに気づいてくれ……。

 そう思いながらも、ルシアがこちらに顔を向けて尋ねてきた。



「それで?私に何か手伝えることはある?」


「うーん、それじゃあ神界の蔵書データベースをハッキングしてくれ。」



 正直なところ、現行のデータではヴァラルの名は童話の中にしか見つからない。


 しかし、童話に記されている情報では、参考になるような具体的な手がかりは得られないのだ。



「はぁ!?ルーク、あなた何言ってるのか分かってるの?」


「あぁ、100も承知だ。神界の蔵書と言っても、小さな書庫の末端データなんかでいい。君はハッキングに関しては天才だろ?」



 ルシアはプログラミングやデータハックの分野では天才的な才能を持っている。

彼女はバイトでホワイトハッカーとしても活動しているほどだ。


 天上神界立の中央蔵書のデータベースは流石にリスクが高い。

しかし彼女ならば、小さな蔵書の末端のデータくらい難なく閲覧できるだろう。



「あなたの脳内CPUで出来ないの?あなただってハッキング得意でしょ?」


「……僕はハッキングしすぎて、ブラックリストに載ってるんだよ。それに君の方が得意だし……」



 僕は秘蔵の書物を読みたい欲求に負け、これまで何度もあらゆる書庫をハッキングしてきた。

そして3億年前......


欲望に駆られて天上神界立の中央蔵書のデータベースに、手を出してしまい......瞬時にバレてしまったのだ。


 さらに言えば、僕はデータベースに侵入することはできても、閲覧記録を消す技術には疎い。

まるで荒らしのような行為だ。我ながらやり口が犯罪者である。



「はぁ……私はやらないわよ。普通に犯罪じゃない......」


「頼む。これは僕のためだけじゃない。それに困ったら助けてくれるんだろ?」



 実際のところ、ヴァラルの情報自体が完全に隠蔽されているわけではない。


 ヴァラルに関連する事柄に機密事項が絡んでいるため、やむを得ずその存在が隠されているだけなのだ。



「あーもう!分かったわ!その代わり覚えてなさいよ。貸しだから。」



 うちの嫁チョロ……。



「ありがとうルシア!助かるよ!」



 そしてこのハッキングで......運命が動き出す。

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