輝冠摂理の神生譚~箱庭と神界を蝕む絶対悪~
G.なぎさ
プロローグ 全ての消失
プロローグ 全ての消失
世界は変わった……。
在ったものは失われ……そして何も残らない。
天が裂け、大地が叫んだあの日の光景を、僕は絶対に忘れない。
静寂が突然に破られ、平和な日常が無情にも砕け散った瞬間だった。押し寄せる悪意と混沌。天上神界を覆い尽くす無数の影。その悪意は……一瞬の間に全てを変貌させてしまった。
常識、や日常、未来、文明......これまで積み上げてきた全てのものを、その時間や思いを嘲笑うかのように破壊していく。
無数の命が瞬時に消え去り、かつて栄華を極めた輝かしい都市はその姿を変えた。石造りの建物は瓦礫と化し、広場を埋め尽くしていた人々の歓声は悲鳴へと変わる。
希望の光が次第に薄れていく世界に……僕はただ抗うことしかできなかった。何も成すことができなかったのだ。
心に深く刻まれている。大切な人々との日々が音を立てて崩れ去る様を。
彼らの顔が今でも脳裏に焼き付いている。平穏を守るために、僕は何をすべきだったのか?答えは未だに見つからない。
理解の及ばぬ何かが現れた時、僕たちは絶望することさえ許されなかった。
あれは、あらゆるものを無に帰す。今となってもそれが何なのかさえも分からずにいる……。
無力さに打ちひしがれ、次々と消えていく仲間たちを見送るしかなかった。彼らの犠牲が無駄でないことを願うことしかできなかったのだ。
多くの犠牲と引き換えに、確かな成果を手にした。しかし、彼らの犠牲が無駄ではなかったと問われれば……分からない。
「それでいい。それでもいい。僕は……」
戦いはまだ終わっていない。この世を蝕む悪意との決着は未だついていない。
過去を振り返っていても未来は掴めない。進み続けるしかないのだ。たとえどんな結末になろうとも。
失ったものは二度と戻らない。犠牲になった同士の……彼らの笑顔が脳裏に張り付いて離れない。
彼らと共に過ごした時間、共有した喜びと悲しみ。その全てが僕の神生に重くのしかかる。
天上神界のために、自分のために、戦い続けた……それで得られたものはほんのわずかな平穏だけ。
失ったものの方が圧倒的に多い。けれど、彼らの犠牲を無意味にしたくはない。
まだ奴は世界に蔓延っている。すまし顔でのうのうと生きながらえている。
未来がどうなるのかはわからない。それでも、皆前に進むしかないのだ。
そしてあの日の記憶が、僕の心を突き刺す。しかしそれでも歩みを止めるわけにはいかない。
空を見上げると、かつての青空が広がっていた。あの日と全く同じ……雲一つない美しい晴天の青空だ。
しかしあの日とは違う空に見えるのはなぜだろう……あの日と何が違うのだろうか?
「必ず……必ず、意味を持たせてみせる。」
誰に向けたものでもない、自分への誓いだ。これから待ち受ける未来がどんなに厳しいものであろうと、僕たちは決して諦めない。
この世に蔓延る悪意は必ず……僕が打ち払ってみせる。
未来永劫だろうと、この天に僕が居続ける限り……貴様の悪意は認めない。
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