第2話 深緑の兄弟と狂化の星獣

2話ー① 惑星文明の滅亡





「おにぃ。招集。」 

  

  

 そう言って声をかけてきたのは妹のエリーだ。 

彼女は同じ研究施設で僕の妹として改造された。血の繋がりはない。 

  

  

「マジか、久々の休日だったのに。」 

  

「私も。潰された。」 

  

  

 彼女は無気力そうな顔で、言葉を一語一語区切って投げかけてくる。 

  

以前はもっと普通に話していたが....... 

いつの間にか聞き取りにくい話し方になってしまった。 

  

  

「でも……休みの人を出勤させるほど緊急事態ってことだよね?」 

  

  

 僕は冒険者ギルドで冒険者として活動している。 

最上位ではないがそれなりの実力を持ち、重宝されている。 

  

 天界の冒険者ギルドは、福利厚生がとてもしっかりとしている。 

よほどの緊急性がない限り、休みの人を引きずり出すことはない。 

  

 命の危険を伴う仕事もあるにはあるが、組織としてはかなりホワイトだ。 

  

  

「狂化星霊ベヒモス。今上位冒険者いない。」 

  

「最近多いよな。そういうことなら仕方ない。報酬は弾んでくれるだろうし。」 

  

  

 魔獣の発生率はここ1000年で3倍近くに膨れ上がっており、これは明らかに異常な値だ。 

 僕は人為的な策略が背後にあると予想している。 

  

  

「急いで準備するからここで少し待っててくれ。あと、長距離転移用の魔道具は持ってる?」 

  

「持ってきた。急いで。」 

  

「了解。すぐ行く。ダルい.......」 

  

  

 僕は本をしまい、急いで本邸へと飛んで行った。 

  

  

:出発してから少し後: 

  

 僕らは広大な宇宙空間を、飛行で高速移動していた。 

  

 目的地の経路には宇宙ガスや恒星が存在する。 

そのため、最低限の防御魔術を施す必要があるのだ。 

  

そして僕は妹に問いかけた。 

  

  

「飛びながらでいい。口頭で討伐対象の情報を教えてくれ。」 

  

「ベヒモス。全長800m前後、狂化状態。生態系、破壊中。数時間で星の生態系、完全破壊、する。」 

  

「情報少な......まぁ問題はないか?過去の戦闘データも活かせば対処できそうだな。」 

  

  

 星霊ベヒモスは魔獣ベヒモスとは異なり難易度が極めて高い。 

そして狂化しているという事はより強化されており、惑星文明はほぼ壊滅状態だ。 

  

 それは並みの惑星文明にとっては滅びそのものであり、こうして天上神界が介入するのだ。 

情報では生態系が数時間内に破壊されるとあった。 

  

 生態系破壊ということは、惑星全体の生命が壊滅的な被害を受けているという事だ。 

もっとも魔物に標的とされやすい、知性生命体の生存者はもう存在しないだろう。 

  

  

「おにぃ。使用可能圏内。魔道具イケる。」 

  

「座標の特定だね!ちょっと待て!」 

  

  

天上神界はその高度な技術力を持って、数光年単位の距離をワープできる魔道具の開発に成功している。 

  

 そしてその中でも、長距離転移魔道具と呼ばれる魔道具は、数十万光年という膨大な距離を一息に移動できるのだ。 

  

しかし価格も高く、使用後は使い捨てとなる。 

コストパフォーマンス最悪の代物だ。 

  

  

「座標算出の魔術は僕が使うよ。時間がないからね。」 

  

「私、それ嫌い。」 

  

「嫌い?ちゃんと使えるだろう?」 

  

「うん。じゃなきゃ死んでる。嫌いなだけ。」 

  

  

 実を言ってしまうと、もっと長い距離を移動できる転移魔道具は存在する。 

しかし今回は手持ちの転移魔道具で移動できる範囲内まで飛行する方が早いと判断した。 

  

転移魔道具は誰でも買えるような代物ではない。 

手続きや、申請などに掛かる時間を鑑みると、今あるものの転移範囲まで飛行する方が早いのだ。 

  

  

「計算まだ?」 

  

「トイレ行っていい?」 

  

「おにぃ??」 

  

「冗談!今終わった。いくぞ!進行方向にゲートを開く。減速せずに飛び込め!」 

  

  

 長距離転移魔道具には3つの情報を設定する必要がある。 

  

まずは「0」と定める中心の座標。 

次に目的地の座標。 

そしてゲートを使用する位置の座標だ。 

  

 特に使用地点の座標計算が難しい。それは使用する僕達が高速で移動しているからだ。 

ミスをすれば既に通りすぎた地点にゲートを開いてしまうことになる。 

  

  

そして極めてどうでもいい情報だが......僕らに神族に排泄は必要ない。 

  

  

「よし!着いたぞ!!軽く惑星全体を調べて。」 

  

「......文明滅亡、確認。」 



結果は......絶望的だった。


既にこの惑星の文明は滅亡している。


......たった一匹の怪物によって......

  



僕らは眼前に広がる緑の巨大惑星と対峙する。  

 






「主人公の妹、エリー・ゼレトルスのイメージイラスト」

https://kakuyomu.jp/users/nagisakgp/news/16818093077729795816


★★★☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆




どうもこんにちわ。G.なぎさです!

エリーのイメージイラストは近況ノートにあります。


第2話ー①を読んでいただきありがとうございます!

今回は狂化星霊ベヒモスとの戦闘です。


星霊とは、その惑星の意思を色濃く受け継いだいわば星に作られ、選ばれた生命の事です。


 そして今回のベヒモスは、その星霊を取り込んだ凶暴な個体です。

 

ベヒモス自体が元々星霊だったわけではありません。


次回!ついにベヒモス登場!?だけども何かがおかしい?

惑星規模で繰り広げられるベヒモスとの戦い!開幕!!


ぜひご覧ください!

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