44話、造船所


港町エフェレアに到着した。

門はほぼ顔パスでスルーして、我々はすぐに一番大きな建物に向かった。


「あの大きなのがこの町の教会ね! 一時間くらいお仕事だから、その間はヴァルを連れて近くの観光でもしていなさい!」


「わかりました!」


教会に到着。馬車と馬を預け、騎士たちと聖女様は中へと入っていく。

私はヴァルさんと外へ出る。まずは軽く観光だ。


「どこか、見たい場所はあるか?」


「なにがあるかがわからないので……」


「たしかに。そうだな、このあたりで一時間でとなると、造船所のあたりか?」


「造船所! 見てみたいです!」


ヴァルさんについていき、海側に向かう。

教会よりは小さいが、ほかの建物より大きな建物に着いた。


「ここが造船所。建物の中には入れないが、ほら、あそこに船が並んでいるだろう」


造船所の海側、砂浜にたしかに船が並んでいる。


「あれがほぼ完成品だ。最終チェックをして、海に浮かべる。……丁度ひとつ、進水式をはじめるところか」


運良く、一番いいところを見られるようだ。

しかもこれは部外者も参加できるという。勿論、参加する。


「おお、すご……」


「何度か見ているが、やはり壮観だな」


船が、陸から海へと押し出される。近くを軽く運航し、船首をこちらへ向ける。

その船首に向かって、一人が瓶を投げつける。

しっかり船首にぶつかり、瓶が粉々に。盛大な拍手が起こる。

これもまた、いつの日かの聖女様の残した文化なのかなあ。


「瓶が粉々になれば、航海は上手くいく、だったか。そういうまじないがある」


「割れなかったらどうなるんですかね」


「そんなことが無いように、『投擲』のスキル持ちが瓶投げを担当しているらしい」


「あ、そうか、スキルがあるんですよね」


こういう需要もあるんだな。スキル、色んな事に使えるなあ。


「進水式の記念に、その船で使われた木材などの端材の加工品が売られていたりするのだが…… ああ、あそこだ。かわいい木工品があるぞ」


言われ、そちらへ向かう。

たしかに色々と木工品がある。あの船と同じ材木でつくられてると思うと、なんだか良いな。


「じゃ、これを買っていきましょう。聖女様、喜んでくれるかなあ」


「自分のではなく、聖女様の分を最初に選ぶとは。さすが聖女様の専属になるだけはあるな」


まあね?

ふふ、喜んでくれるかな、スライムの木工品。

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