22話、王城の書庫


朝から準備して、今日もまた城へ向かう。

ロスはお留守番だ。ラズリが買い物なんかに連れて行ってくれるという。


ラピスを連れ、外へ。城までは少し遠いが、たまにはということで徒歩で向かう。


「人通り、いつもより多くないですか?」


「そうですね、今日は休日ですので、皆様どこかへ向かわれるのでしょう」


あ、休日平日の概念もあるんだ……

たしかに、城とは反対側に向かう人が多い。みんな買い物とかかな? でも貴族も自分で店とかいくのか……?


「昔、買い物が好きな聖女様がいらっしゃったと言われておりまして。その影響か、貴族の女性は自ら店へ足を運び、自らで物を買う、という習慣がございます」


昔の聖女様の影響か。

この国は聖女様の影響による文化がとても多い。食べ物から習慣まで、いろいろと。


「聖女様って凄いんですねえ」


「ええ、我が国の象徴でございますから」


象徴かあ。聖女様も、学生から急に国の象徴になって大変だろうな。疲れを癒すようなスキルが手に入ったら、沢山つかってあげよう。




城へ入り、書庫へ向かう。

城前でヴァルが待っていてくれていたので、用事で別れたラピスの代わりに案内をしてもらう。

書庫の前でヴァルとも別れ、私ひとりで書庫へ。


見渡してみる。利用者は、今のところ居ないようだ。

本がとても多い。大きな図書館くらいはあるのではないだろうか。


ジャンル毎に分かれているので、魔物系のある棚はすぐにわかった。

そこから、スライムを専門に扱う本を探してみる。


「お、スライム研究者の本…… スライム専門の研究なんて、する人いるんだ」


スライム専門の本を見つけた。運がいいな。

さっそく、席について読んでみる。


スライムには、数百の種類がいるようだ。多いなあ。

勿論、メタルスライムや、属性付きスライムがいたり、大きかったり小さかったり、他の魔物に似た形のものもいるようだ。

生息地も、世界中、どこにでもいる。空や海にもいる。空……?


「浮いてるってこと……?」


「いや、空を飛んでるのさ。鳥のようにね」


うわっ! 急に後ろから話しかけられた。びっくりした。

振り向くと、そこには超絶美形の男性がいた。


「あ、あの……」


「ああ、急にごめんね。僕はイグニス・マーズ・オリオン。この国の第二王子だよ」


お、お、王子様……!?


「こんなところで聖女のお気に入りに会えるなんて。それに、それ」


「スライムの本、ですか?」


「そう! 僕もね、スライムが好きなんだ! ふふ、同好の士、ってやつかな。嬉しいね」


な、なんだか面倒な気配を感じるぞ。私は別に、スライムのオタクではなくて……

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