19話、大量のレッサースライム


レッサースライムは、手乗りサイズで小さく、そして動きも遅く、弱い。

踏むだけで倒せるくらいの雑魚で、討伐依頼なんかも一度も出たことがない。ノーマルスライムは、稀に需要があるらしいが。

しかし、それが数百集まると……


「どれだけ集まろうが、レッサースライムはレッサースライムだな」


数百集まろうと、人間に害を成せるほど強くない。

せいぜい、身動きのとれない人間の気道を塞ぐ、くらいが勝ち筋だろう。そして、それはその人間が咳をしないという前提でのみの勝ち筋だ。あまりにも弱い。


「二百匹、テイム終わりました。さすがにもういいかな……」


「よし、では城に戻ろう」


百以上、という依頼だったが、二百もテイムした。

聖女様のメイドから借りた大きな背負籠がいっぱいだ。


「ロス、帰るよ」


「……すらいむ」


なんだろう、籠の中のレッサースライムを見ている。


「触りたい?」


「さわりたい、です」


「ほら…… どうかな? ぷにぷにで可愛いでしょ」


「かわいい。ほしい、です」


ほしいとな。二百もいるし、一匹くらいはいいか。うちにも二匹いるけど、それぞれ仕事してるし、愛玩用がいてもいいかな。


「好きな子選んでいいよ?」


「この子、かわいい!」


最初に手に取った子を選ぶようだ。一番綺麗な気がするもんね。

よし、こらからはロスに従うように。と命令しておく。


ぷにぷに、ぷにぷにと、ずっと触っているのを眺めながら帰る。

ひとまず自宅にロスを送り、それから城へ参じる。


「早く済んでよかったですねえ」


「そうだな。危険な体質だが、今回は運がよかった」


ロスの体質についても、聖女様に相談しておこう。

もしかすると、なにかいい案を思いついてくれるかもしれない。





さて、王城の一角、聖女様の館にて。

聖女様は来客の対応があるそうで、しばらく待つことになった。

美味しい紅茶と、スコーンのようなものをいただいて、のんびり待つ。


聖女様の用事が終わったようで、メイドさんに呼ばれ、聖女様の待つ応接室に向かう。

私の前にメイドさん、後ろには護衛のヴァルがいる。なんだか、連行される犯罪者の気持ちだ。なに悪いことはしていないけど!


応接室に到着、すぐに中に通される。

中央奥、大きな椅子に、聖女マリア様が座られている。


「早かったわね! 二日はかかると思ってたわよ!」


「いろいろありまして、運良く済みました」


笑顔の聖女様、かわいい。

ともかく、今回の依頼に関しての話をするとしよう。

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