15話、目覚め


しばらくして、少女が目覚めた。

改めて見ると、小さな角、そして腰の辺りに小さめの羽がはえている。尻尾はないかな? 見えない。


「おはよう。痛いところとかない?」


「……あ、ありがと、ございます」


片言だ。しかし話せている。

ラピスから聞いた話では、魔族と人間ではつかう言語が違うらしい。人間には統一言語があるが、魔族は種族ごとに言葉が違うという。

ならば人間の言葉を話せているのは、教育の結果だろうか。誰が何のために教育したのかはわからないが。まあ、それは今はいい。


「大丈夫? 何が起こったかわかる?」


「ルー、みつかった、それで……」


ルーとはなんだ。怯えているところをみると…… ベアウルフのことか?


「あなた、名前は?」


「わたし、ロス。母、レーネ、です。父、プライド、です」


ロスちゃん、かな。かわいいね。

もじもじしているが、痛がる様子はない。大きな傷などは無さそうだ。よかった。


「ロスちゃん。貴方は、今日から私のものです。わかるかな」


「……どれい、ですか」


表情が固まる。……やべ、やっちまったか?


「もちろん、酷いことはしない。食事も一日三食、私と同じものを食べてもらう。寝るところも用意する。なんなら私と寝てもいい。休みの日もつくろう。いや、今のところ働かせるアテもないから休みみたいなものだけど」


「……おねえさま、必死?」


あはい。早口になっちゃってたか。

しかし、おねえさまか。おねえさま。いいな。いい。


「私はマオ。アマツカマオっていうの。これからもおねえさまって呼んで。おねがい」


「おねえさま、まおー?」


「まお、ね」


「まおおねえさま。助けてくれて、ありがとございます」


ぺこりと。白い髪がさらりとしだれる。うっ、胸が苦しい。可愛すぎる。


「さ、さて。今日からここがロスの家よ。みんなに紹介するね」


「よ、よろしく、おねがいします」


うんうん。きっとみんな受け入れてくれるよ。可愛いからね。

そうだ、お風呂も入れないとな。一緒に入ろうか。使い方も教えないとだからね。

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