14話、契約


「おまたせしました。契約の準備が完了いたしましたので、どうぞおこしください」


準備ができたようだ。小綺麗なおじさんについていき、別の部屋にはいる。

女の子は綺麗な服に着替えさせられていた。髪も肌も、さっきより綺麗だ。傍で女性の従業員が待機している。丁重に扱ってくれてるのがわかる。だが、まだ目が覚めていない。生きてはいるが…… そういえば、傷がいくつもあったはずだが、見えないな。服で隠れたか?


「目覚めないのか」


「さきほど、一度目が開いておりました。余程の疲労か、今はまた眠っておりますが」


起きたのか、よかった。

次起きたらちゃんと色々説明しないとなあ。


「契約内容は、捕虜奴隷のもの。契約期間は無期限、過度な暴力や虐待は無し、主人含め定められたものへの害悪行為は不可能。間違いありませんかな?」


「ああ、いいだろう。やってくれ」


ヴァルさんが仕切ってくれる。私はボーッとしてるだけだ。なんというか、緊張している。


「では、契約者のアマツカ様。お手を。この子の首元に手をかかげてください」


女の子の首元に手を差し出す。

すると、私の手と女の子の全身が薄くひかりだした。

暫くして、光がおさまる。


「契約完了でございます。こちら、契約内容の書類、そしてこちらが請求書でございます。お支払いは……」


「一括でいいだろう。私がひとまず出そう」


「ありがとうございます。では、これで完了でございます。奴隷が目覚めるまで、こちらでおやすみされますか?」


「いや、連れて帰ろう。世話になった」


「またなにかあれば、いつでも」


というわけで、女の子はヴァルが背負ってくれて、私の家に帰ることとなった。

ど、奴隷。はじめての奴隷だ。そりゃそうか。


「あ、代金は」


「聖女様に請求しておく。心配するな」


どれくらいの値段なんだろう。聖女様にはなにかでお返ししないと……



家に帰り、ラピスとラズリに事情を説明する。

ふたりには先に相談すべきだったが、ふたりとも魔族には抵抗が無さそうでよかった。


「悪いのは魔族全体ではない、というのが最近の主流な論説なんですよ。学校教育のマニュアルも、その流れになってきてます。実被害があった世代は、まだまだ魔族というだけで嫌いますが…… これも仕方ありませんよね」


話し方的に、最近は魔族からの被害は無いようだ。

この子が安心して過ごせたらいいな。


そういえば、名前。起きたらちゃんと聞かないと。

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