第20話 国境を越えよう

「あっ。見えてきました国境です。」

「関所を通れないといけないのか。」

「そうですけど?」

「ギルドの時みたいに絡んでくる奴がいるだろ絶対。」

「あ~、確かにないとは言い切れませんね。」

「そういうやつってめんどいのとたいてい馬鹿だと思う。」

「ふふ、否定はしません。」

「まあ、ないと信じて行くか。」

「はい。」


俺は今、死んだ魚の目をしているだろう。


なぜなら、関所ならば列になっているかもなと思っていたが長すぎる。2kmぐらいといえばわかるだろう。ある行商人によると、この列ができた理由はある古代遺跡が国境付近に見つかったんだと。それで沢山の人が見るために国境付近に人が集まっているらしい。何ともまあタイミングの悪いことだと思い、エルはこの行列に並ぶのであった。



3時間後ようやく半分ほどになったが、まだ待たされることになる。

エルがそうなってしまうのの仕方ないことである。周りに人が多すぎるため模擬戦などができないのだから。暇すぎるのだ。


1時間後

やっと最前列か。くそほど待つ羽目になるとは。まあ、瞑想ができたから良しとしよう。


門番の人が聞いてきた。


「次のやつ。はあ、ガキと女か。それで、何しに行くんだ?」


「学校に入学しに。」


「女の方か?それならガキはおいてけ。いらんだろ。」


「いえ、私ではなくエル様です。」


「ガキかよ。どうせ無理なんだからやめとけ。」


「行ってはいけないわけじゃないんだろ。」


「どうせ不合格なんだ。やめて現実を知らずに済むぜ。」


「そうやって出世することをあきらめたんだろ、爺。」


「このガキが。」


「おいおい、いいのか?こんなところでやっても?」


「ちっ。」


「俺も暴力は好きじゃない。だから賭けをしよう。賭けの内容は俺が入学できるか、どうかだ。もちろん俺は出来るにかける。爺さんはさっき俺を散々馬鹿にしたんだ、俺ができないにかけるんだろう?」


「そりゃあな。」


「逃げない担保として俺はワイバーンの血を渡しておく。俺が逃げたのなら売ってくれて構わない。だが、もし俺が賭けに勝った時にはお前の大切な髪をいただきにくるぜ。老い先短い爺に髪はいらねえだろ。」


「俺は爺と呼ばれる年じゃねえ。まだ44だ。」


「そんなことより、この賭けに乗るのか?どうするんだ?」


「いいぜ。乗ってやるよ。」


「そう来なくっちゃな。ワイバーンの血だ。渡しておくからな。」


「ああ。通っていいぞ。」


「行くか。」


「はい。しかしエル様。あんなにいいものを渡してよかったのですか?」


「また会えるだろうからな。その時にあいつの髪をいただく。」


「門番の人がかわいそうですよ。」


「そうだな。髭は残してやるか。」


「あ~あ。あの門番の人も馬鹿なことをしましたね。賭けなんてしなければよかっ

たのにね。それにしても、笑ってしまいますね。」


「本当に馬鹿だよな。」


「入学できなければあいつの勝ちだがな。万に一つもないと思うが。」


「あの人の敗因は相手の実力を測れないことと、ケンカを売ったのがエル様だったからでしょうね。」


「そうだな。」

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