魔王と勇者
第44話 ジンvsライト
ゆっくりとただまっすぐ聖王国を目指していた俺は、無傷のまま聖王国内の城の前までたどり着いた。
聖王国内から城までの道には普通の人間も兵士もおらず、薄気味悪い聖王国内にあるのは死の匂いだけだった。
「ここにいるのか――ライト」
俺は大人数でしか開けられない様な、巨大で鉄製の重厚な扉を一人で軽く開けた。
「やはり城内にもいない、か。不意打ちが好きなライトのことだ、用心するに越したことはないな。
特異能力の
「ヨシ! 城内でも
ゆっくりと灯りが一つも点いていない城内を歩く。
「ここが最上階、この部屋の中に生体反応が一つ」
豪華な扉の前に設置されている看板には玉座の間と書かれている。
「勇者が王様ごっこか? 笑える冗談だ」
クククと笑いながら扉を開けると、玉座の間の最奥に置かれている、煌びやかで派手な玉座にライトが足を組んで座っていた。
「本体で会うのは久しぶりだよね。魔王ジン・シュタイン・ベルフ」
俺を前にして余裕の笑みを見せるライトだが、その笑みには狂気は感じられない。
「まるで魔王の姿だな、元光の勇者ライト・エル・ブリアント。決着をつけにきた」
「まぁまぁ、そんながっつかなくてもいいじゃん。少しお話をしないかい? ここまで歩いてきて疲れてるんじゃないのかな?」
「お前と話す事はない」
銀色の眼で冷たくライトを睨む。
「『超越者』、聞いた事あるよね?」
「ああ、何度かな」
「お前さぁ、この世界のものじゃないだろ?」
「な、なにを言っている!」
俺はライトの意外な言葉に少し動揺した。
「隠しても無駄さ。違う世界から人外の力を持って、その世界の生物の頂点に立つ、すなわち『超越者』、異世界人とも言うらしいけどね」
「異世界人……」
他の人が聞けば馬鹿馬鹿しい話だが、俺にとっては馬鹿にできない話だ。
どういう経緯かは分からないが、ライトは俺が異世界転生した事を知っている。
「合点がいったよ。だってその力はありえない、存在しない力だったんだ。戦わずして負けた俺たち勇者パーティはなにもおかしくなかったんだ。お前という異物がこの世界を歪めた、それだけの話だった」
「だったらなんだと言うんだ? なにが言いたい?」
ライトの笑みに凶悪な狂気が宿る。
「感謝してるのさ! お前のおかげで俺は『超越者』になれるんだ。それに異世界のことも知れて夢が広がったしね」
「夢? お前の様なクズにでも夢なんてものがあったのか?」
ニチャアと邪悪な笑みを浮かべるライト。
「異世界へ行ってまず、魔族、魔物、魔王を皆殺しにする。そのあとに女神や他の神も皆殺しにして、俺は異世界の唯一無二の絶対神となる。異世界の人間どもは俺を未来永劫崇め続けるのさ。それに加えて俺を神と認めない人間も皆殺し、そんなやつは俺が支配する世界には必要がないからね。争いも奪い合いもない、真に平和な世界を作るのさ!」
もはや狂人の域に達しているライトの言葉に、俺は眉をひそめる。
「もうお前の存在自体が矛盾しているんだな。ライト、残念だがその夢は叶わない」
「どうしてかな?」
「お前はここで俺に倒されるからだ!」
俺の闘気とオーラが玉座の間に渦巻き、行くあての無くなった闘気とオーラは城をも突き破り外に飛び出す。
「すごいオーラだねぇ。でも、それぐらい俺にもできるんだよぉ!」
ライトから放たれる邪悪なオーラと俺が放つオーラがぶつかりあい、玉座の間には複数の竜巻が巻き起こる。
「さっさとお前を倒して俺は異世界へ行くよ。超級特異能力(エキスパートスキル)、
ライトが黒い光に包まれて出てくると、装備していた鎧が攻撃的で暴力的なものへと変化するが、以前の姿とは少しだけ変わっている。
「
立て続けに
「
まだ
「
闇帝の
「邪帝の魔虫、女帝の武術、魔帝の魔力、竜帝の竜の力、剣帝の剣技、闇帝の深淵の闇まで俺の力となった。もはや神と等しい存在となった俺に勝てるかなぁ? アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! どうしたの? ねぇねぇどうしたの? 怖くて言葉もでないのかなぁ? アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」
何万もの魂と、聖帝七騎士の魂を取り込んだ元光の勇者、光帝ライト・エル・ブリアントとの因縁を断ち切る決戦が始まる。
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