第37話 ドラゴン
♢
他の騎士団長よりも早く、竜帝が呼び出したドラゴンに向かった帝国近衛騎士団長。
「ドラゴンを倒したら、僕も竜騎士を名乗れるのかな。神話の存在になれる千載一遇のチャンスじゃん」
魔槍を構える帝国近衛騎士団長。
しかし、魔槍は振るうたびに使い手の生命力を奪っていく呪われた武器だ。
それに帝国魔装騎士団長が手を加えた事により、槍の威力にブーストがかかる様になっているが、生命力の消費も激しくなってしまう。
「
帝国近衛騎士団長は
「まずはこの魔槍の威力、確かめさせてもらうよ!」
帝国近衛騎士団長の魔槍がドラゴンの固い鱗を突き破るが、ドラゴンの受けた傷は浅く血も少量しかでていない。
「これがドラゴン、そんな簡単に竜騎士は名乗れないか」
ドラゴンの体に突き刺した魔槍を引き抜いて、距離を取ろうとする帝国近衛騎士団長に向かってドラゴンが灼熱のブレスを吐いて追撃する。
「近衛の! もう少し上がれ!」
ドラゴンが吐き出す灼熱のブレスの前に、帝国重装騎士団長が巨大化させた盾を構えて立ちはだかり灼熱のブレスを受け止める。
「補助魔法、迅雷風烈
二人に追いついた帝国魔装騎士団長はすかさず帝国近衛騎士団長に向かって、力、素早さ超超強化の補助魔法をかける。
「体全体が羽の様に軽いのに、体の中からは信じられないほど強い力が溢れてくる。これが補助魔法の極み? やっぱり魔装の兄ちゃんはすごいや!」
ゲホっと咳をした帝国魔装騎士団長の口の周りには少し血が付着している。
魔具によって無理やり魔法を増幅させた事で、体に負担がかかっているのだ。
「残念ですが私などでは極の魔法は使えません。さぁ、この機を逃さず!」
帝国魔装騎士団長が話し終えると同時に、雷よりも早くドラゴンの元へと飛ぶ帝国近衛騎士団長。
「首が無くてもブレスはだせるのかな?
帝国近衛騎士団長がドラゴンの首へ雷を纏った魔槍を強烈な勢いで振り下ろすと、ドラゴンの首と胴体がいとも簡単に切り離される。
首を失ったドラゴンはそのまま地面へ落下して、少しのあいだ悶えたあとに絶命した。
「まずは一体目! さっきよりも力が湧いてくるし、このまま残りもやるよ!」
残りの四体のドラゴンは仲間が倒された事に驚いて本気を出して連携するが、魔具と呪われた武具によるブーストがかかっている三帝騎士団の連携の前にはなすすべがなかった。
帝国重装騎士団長が魔界の盾でドラゴンの攻撃を防ぎ、雷よりも早い帝国近衛騎士団長がドラゴンの首を落とす。
前面にでている二人の騎士団長を、帝国魔装騎士団長がサポートをする。
これが帝国最強と謳われる、三帝騎士団の本来の戦い方だ。
三帝騎士団の前にドラゴン達はあっという間に殲滅される。
「雷の化身の様な騎士がいると聞いていたが、お前がそうだったのか。どうだ? ドラゴンを倒して竜騎士となった気分は? 力が溢れてきているのではないか?」
ドラゴンたちが倒されていくのを、黙って見ていた竜帝が口を開く。
「僕だけの力じゃない、僕たち三人が竜騎士だ!」
帝国近衛騎士団長の言葉に首をかしげる竜帝。
「竜騎士を誤解してはいないか?」
「え? ドラゴンを倒した者の称号だよね?」
竜帝はやれやれと呟き、竜騎士の説明を始めた。
「竜騎士はドラゴンを倒して竜の力を手に入れた者の総称だ。感じているのではないのか? さっきまでの自分と違う事を」
「そういえば、確かに力が増している気はするけど……」
「それはまだ竜の力を使いこなせていないからだ。竜騎士となって上を目指すためには、さらに強いドラゴンを倒して力を手に入れる事だ」
「じゃああんたの乗ってるそのドラゴンを倒せば、僕はもっと強くなるって事だね?」
帝国近衛騎士団長の言葉に高笑いをする竜帝。
「それは無理だ。竜騎士と言っても見習いレベル、このエンシェントドラゴンは倒せまい」
「そのドラゴンが生きてるって事は、あんたでも倒せないって事?」
「私はドラゴンの最高位
話の途中で竜帝は帝国近衛騎士団長を指さした。
「竜騎士を超えるには、同じ竜騎士を倒して力を手に入れるしかない。私のところには他にドラゴンも竜騎士もいないのでな、丁度いい場面に遭遇できた事に感謝している」
「つまりわざと弱めのドラゴンを倒させて、竜騎士となった僕を倒す事が目的って事だね? 見た感じそんな事しなくてもめちゃくちゃ強いと思うんだけどなぁ」
魔槍を構え直す帝国近衛騎士団長。
「強くなる? そんな目的ではない。私は竜騎士を超え神の力を手に入れ、御方に認められて、本物の『超越者』となるのだ」
「超越者?」
「喜べ下界の民よ。お前の取るに足らない小さな命は、私の糧となる事ができるのだ」
槍を構えた竜帝から、死の恐怖を覚えるほどの殺気が放たれる。
「人間界の竜騎士よ! 私の為に命を捧げよ!」
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