ベルフ連邦の戦い

第28話 聖帝七騎士

 ジン達が帝国に連邦への参加を求めている同刻、聖王国では聖帝七騎士による会議が行われていた。


「王国を追放されてきた兵士が、聖王国へ流れてきたのは幸運だったけど、あの兵士達じゃかませにもならないんだよねぇ。アレぐらいの軍勢なら君のペット達の方が強いんじゃなかなぁ」


 聖帝七騎士の団長、光帝ライト・エル・ブリアントが全身白い鎧の騎士に話しかける

 その白い鎧の端々は金で装飾され、白と金のコントラストが神々しさを醸し出している。


「ペット? まさか私のドラゴン達の事を言っているのではないだろうな? 一斉にけしかけて消し炭にしてやろうか?」

「あー怖い怖い、冗談に決まってるじゃないか。竜帝は本当に冗談が通じないなぁ」


 竜帝の放つ殺気をものともしないライト。

 ライトの不遜な態度に激怒した竜帝が剣を構える。


「もう、やめなさいよ! あんたたちが揉めだすと話にならないじゃない。ほら! あんたも何か言ってやりなさい!」

「……」


 この中で唯一、鎧を着用していない軽装の男に女闘士が話を振るが、男は一言も発しない。


「あーもう! どいつもこいつも話にならないわ! ライトも竜騎士もそれぐらいにしないと、あたしが相手になるわ」

「帝の冠を貰っている僕たちが、争うのはいけない事だと思うのだよ。女帝もそれぐらいにしておきなさい。剣帝も仲間が争うとしてるのだから、こういう時ぐらいは話をして止めないといけないんだよ」


 眼鏡をかけた優男風の騎士が仲裁に入り、竜帝は剣を納める。


「闇帝のそういういい子ちゃんぶってる所も嫌いなんだよなぁ。化け物の次に俺はお前が嫌いだ」

「ライト……もうやめてください」

「うっさいなぁ。魔帝は黙ってろよ!」

「ひぐっ! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「ライト、魔王が復活したからと言って、八つ当たりするのは良くない事だよ、魔帝に怒鳴っても仕方がないのだから。それより僕たちが考えないといけないのは、あの魔王をどう倒すか、って事ですよ」


 闇帝の言葉にライトの落ち着きが戻る。


「あの化け物の事だし、他国と一緒に聖王国へ攻めてくるんじゃないかな。連合組まれるぐらいはどうでもいいんだけどなぁ」


 竜帝が口を開く。


「あの魔王は単体では最強だが範囲攻撃はしてこないのだろう? 聖帝七騎士とその兵で一斉にかかればなんとかなるのではないか?」

「じゃあ竜帝がやれば? 俺はやらないけど」


 また室内に一触即発の空気が流れだす。


特異能力スキルが強いだけなんでしょ? じゃあ竜帝が言っている様に、人界戦術とあたし達でどうにかなんないの?」

「なる訳ないじゃん。もしかして女帝の頭の中はお花畑なのかな?」

「人間界では最強だからっていい気にならないでよね、殺すわよ?」

「……やめろ」


 普段喋らない剣帝の言葉で再び場の空気は正常へと戻る。


「敵の……戦力分析から……」

「魔帝の案に僕は賛成だよ。ライト、敵の話を聞かせてくれるね?」


 舌打ちをしたライトは共和国との戦いで見た事を、他の聖帝七騎士に話した。


「猫耳の亜人、森妖精族エルフはたいした事なさそうだな。しかし三帝騎士団も同時に相手となると話は変わってくる」

「中央軍の亜人は厄介そうね。あたしたちの誰かが当たらないとまずいわ」

「……拙者がやろう」

「その……爆裂魔法の使い手も危ないと思います……私がやりますね?」

「他の雑魚の牽制には人間の奴隷を使いましょうか、前線は全て奴隷で固めて敵の戦意を削ぎましょう。最前線の奴隷には足枷を付ければ、敵の動きや勢いも止まると思うのですよ」

「じゃあ奴隷組織の統括である俺が、奴隷を準備しないといけないなぁ。面倒だし、気に入らないけど、今回は闇帝の案に乗ってあげるさ」


 今までのバウム・ドーラに実験に使われた人間、マリナ・リゼットに捧げられた人間、アルト・ウォルターに辱しめを受けた他国の美女たち。

 これらを集めたのはライトが統括を務める奴隷組織だった。


「前線にもし魔王が出た場合は、邪帝に行ってもらいましょうか。邪帝の特異能力スキルなら少しは足止めが可能だと思うからね。邪帝には後で僕から連絡しておきますよ」


 会議がある程度まとまった所でライトが会話を切り出す。


「これ、みんなに渡しておくよ。これは本物の魔剤、限界まで能力ステータスを底上げしてくれる最強のアイテムさ。あの化け物の超級特異能力エキスパートスキルの対策にもなるしね」

「どこで手に入れたの? それは人間界にも魔界にもないはず……」

「私も見るのは初めてだな」

「色が……怖い……」

「魔剤、これほどのアイテムとなると……。ライト、これはあの御方に頂いたのだね?」


 ライトはニチャアと、見たものが不快になる笑いを見せる。


「そうさ、俺はあの御方のお気に入りだからね。だからこそ俺は勇者であり、聖帝七騎士の団長なんだからさぁ。お前達はもう少し俺を敬った方がいいんじゃないかな? ここでの立場は俺が一番上なんだからさぁ。まぁ魔剤も渡した事だし戦争の準備をしようよ、御方の為に!」

「「「「御方の為に!」」」」

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