第27話 終戦処理
第一次人界大戦終了後に帝国魔装騎士団長の魔具によって、MPが回復したナタリーの転移魔法で俺とラミア、そして壊れた戦士アルト・ウォルターの三人は王国の王宮へと向かった。
王宮への転移魔法は、魔装騎士団長の記憶を借りた事で楽に発動する事ができた。
転移した先の王宮の玉座の間には、虚ろな目をしている女性二人の姿がある。
アルトの髪の毛を引きずりながら進み、女性たちにアルトを放り投げると二人は悲鳴を上げる。
「け、ケダモノ!」
「死んだはずでは!」
女性達は、あはははと笑っているアルトの姿を見て後ろへとずり下がる。
「安心しろ、もうこいつには何もできない。好きにしていいぞ」
俺の言葉に一人の女性が反応する。
「これは……一体?」
「ラミア、説明してやれ」
「ああ、ジン様直々に妾に説明する仕事を与えてくださるなんて……光栄の極みでございますわ」
頬を紅潮させながら俺の事をうっとりとした目で見つめるラミアは、二人の女性に向き直すとその魔眼は凛々しいものへと変化していた。
「人間の女ども、妾がジン様より説明を仰せつかったゆえ、感謝しながら傾聴するがよいぞ。それと妾からの質問に答える事を許可する」
ラミアは事のあらましを二人の女性に説明し、王国の状況と二人の詳しい話を聞いた。
事が理解出来た二人の女性は、俺たちの前で膝を折り、こうべを垂れる。
「銀眼の魔王ジン・シュタイン・ベルフ様に、我々が王族を代表して敬意を表します。本日はどの様なご用件で参られたのでしょうか?」
王国第一王女、アーシェラ・パステルティファが問いかけてきた。
「とりあえず、このアルトの処遇を一切任す。すり潰そうが、焼いて煮て家畜に食わせようが好きにすると良い」
「かしこまりました。この股間王ことアルト・ウォルターは、王国の女性に欲望のまま凌辱の限りを尽くしました。もちろん、このわたくしも例外ではありません。ふさわしい罰を与えようと思います」
「既に壊れているこいつに用はない、好きにせよ」
俺の言葉を聞いた二人の王女は、今まで受けた屈辱を思い出して涙を流している。
しかし、むせび泣く二人にラミアが冷たく声をかける。
「人間といえども貴様達は王族ではないのか? 王族ならばどんな仕打ちを受けようが、どんな辱しめを受けようが、王族らしくある事を忘れるものではない。ジン様の御前で感激に涙するのなら許すが、その様な涙を流す事は妾が許さん」
いまだに嗚咽を上げる二人に殺気を放つラミアを、少し警戒するが放たれていた殺気はすぐに解かれた。
「なにをされたかは知らんが、貴様達は何も失っていないではないか。気品も優雅さも王族としての矜持も、自ら捨てぬ限り無くなりはせぬ。心まで支配されたとでも言うつもりか?」
ラミアの言葉に、二人の王女の虚ろな目には生気と意志が戻る。
「ラミア様の言う通りでございますね。私たちは勘違いをしていた様です」
「全て失ったと思っていましたが、自分で捨てていたのですね」
先ほどまでの奴隷の少女を思わせる様な姿の二人はそこにはなかった。
そこには、王国第一王女と王国第二王女の姿がはっきりとあった。
二人の姿を見て俺はクククと笑う。
「やっとらしくなったな。では、話を続けようか。これから帝国にも赴いて提案する気なんだが、共和国、帝国、教国、王国、この四ヶ国で一つの国としようと思っている。そうだな、ベルフ連邦国とでも名付けようか」
「ベルフ連邦国! なんて素晴らしいお名前なのでしょうか!」
ベルフの名前が組み込まれている連邦国の名前に興奮を抑えきれないラミアは、両手を合わせて偉大な神を見る様な目で俺を見つめる。
「まぁその前に王国の内政をどうにかしないと、だな。ラミア、手を貸してやれ」
その言葉に仰せのままにと頭を深々と下げた後に、ラミアはアーシェラ達に命令を出す。
「人間の女、アーシェラと言ったな? アーシェラ、ストロング・ブル・モンスターの中毒者のリストを作成して持って参れ。共和国で敗走して王国へと帰還している連中は国外追放、王国へ入れてはならぬぞ。人が足りぬ、有能と思える者をすぐにここへ呼び出せ。ジン様を少しお待たせしてしまうであろうから、王国で一番の酒を持って参れ。ジン様へ王国の一番の酒を持ってくるのが最優先と知れ。では、行け!」
アーシェラと第二王女は全速力で王宮内を駆け巡る。
続々と玉座の間には人が集まり、酒だけではなく、料理も振る舞われた。
ラミアの手腕により、あっとう言う間に適材適所な人員配置が決まっていき、夕刻には新体制ができあがっていた。
王宮内の全ての男性幹部は排除され、新体制の幹部は女性のみ。
ベルフ連邦国の王国の代表にアーシェラ・パステルティファ。
ストロング・ブル・モンスターの中毒者は全て国外追放。
王国軍の解体と再編成に伴い、足りない軍事力は帝国から借り受ける手続きを済ませた。
人口が減った王国だったが、他国からの移住者などを募り人口を回復させる段取りを行った。
「まぁこんなとこか。人員配置、組織の構築、これも工場作業員な必要なスキルだからな」
――――――――――
♢
ジンの偉大さと寛容さに心打たれたアーシェラ含む王族の女性たちは、事が落ち着いた後にジンの元へと集まり、今日の夜のお供が決まっていないのなら私達をお選び下さいと言って、ラミアが
元勇者パーティの狂乱の戦士、アルト・ウォルターは、共和国の辺境の山の中にある女人族の村へと引き渡される事となった。
女人族は女性しか生まれない部族で、部族の繁栄の為に山で迷っている男を捕まえて繁殖に利用する。
ここまで見るとなんの罰にもならないように見えるが、女人族は捕まえた男に快楽を与えないために秘術を使う。
それは尿道に大きめの針を突き刺して行うもので、その秘術を受けた男は快楽が堪えがたい激痛と苦痛へと変化する。
女人族に引き渡す当日もあはははと笑っていたアルトだったが、その後の彼がどうなったのかは誰にも分からない。
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