第21話 内線
♢
体長四メートルの巨体から繰り出される
「くっ! ダメだわ。一般の兵士は下がって!」
「帝国騎士団も下がるのだ! ここは吾輩たち団長で引き受ける」
エポナ達の声を聞いた共和国の兵士と帝国騎士団たちが引き下がる。
「魔装騎士団! 私に合わせよ! 最上級火炎魔法、火之迦具土!」
魔装騎士団長の最上級魔法に合わせる様に、後方の魔装騎士団は様々な魔法をアルトに放つ。
火、水、風、土、雷、氷、光、闇、八つの魔法は、まっすぐにアルトへと向かい、アルトに直撃する直前で
「がっはっはっは! 効かぬぞ! 魔法などこの俺には通用せんわ!」
笑いながら
「近寄れないのに、魔法も効かないの? あんなの反則だわ」
「魔法が効かないなら私の補助魔法をみんなにかけます! 補助魔法、迅雷風烈!」
ミーシャはエポナと三帝騎士団長に補助魔法を使うがMPが空になる。
「補助魔法? めんどうなやつ、先に殺すか」
アルトはミーシャに向けて
「お姉さん!」
帝国近衛騎士団長はそう叫ぶと、ミーシャの前に両手を広げ立ちふさがる。
「騎士さん! ダメです!」
ダメだと叫ぶミーシャの声むなしく、
しかしその勢いは止まらず、吹き飛ばされた帝国近衛騎士団長の体は、後ろのミーシャに衝突した。
衝突した衝撃でミーシャは三十メートルほど吹き飛ぶ。
吹き飛ばされながらも帝国近衛騎士団長はミーシャを抱えて体制を変え、帝国近衛騎士団長が下になるように地面へと衝突した。
「騎士さん……どうして……MPも無い私なんて役に立た――」
目に涙を浮かべながら喋るミーシャの顔を、血だらけの手で弱々しく触れる帝国近衛騎士団長。
「泣いて……いたら……美人が……台無し……だよ……」
ミーシャの顔を触れていた手の力が無くなり、その優しく触れていた手は血で滑りながらずるっと地面へ落ちる。
「そんな……騎士さん! 槍の騎士さん!」
泣きながら何度も帝国近衛騎士団長の体を揺するミーシャだが、もうその体には帝国近衛騎士団長の魂は入っていない。
魂のない肉体は決してミーシャの言葉に返事をする事はなかった。
「よくも吾輩のライバルを!」
「私は今までこんなにも憎しみを抱いたことはありません……。魔装騎士団! 全軍突撃! MPも魔具も全て使い切ってもいい、あの鬼を殺せぇぇぇ!」
咆哮しながら三帝騎士団の兵士たちはアルトへ突撃する。
「ちょっと待って! 無理だって! 援軍を要請するべきだわ!」
エポナの提案は帝国近衛騎士団長の死によって激昂している騎士団には届くはずもなかった。
次々と倒れていく騎士団。
だが仲間が吹き飛ばされようが、両断されようが、騎士団の勢いは止まらない。
「ここは吾輩たち騎士団が受け持つ。嬢ちゃんらは撤退しな」
「これは弔い合戦です。後は私達に任せてください」
二人の団長はエポナとミーシャに撤退をうながす。
「あいつらが頭か、先に殺す」
四人が集まっている事をアルトに見られ、リーダー格だと判断したアルトは四人に標的を定める。
「特異能力! 豪斧豪旋風!」
人間形態の時の百倍は威力がありそうな特異能力がエポナたち四人に迫る。
「魔装の!」
「分かっています。魔具、守護の盾!」
帝国魔装騎士団長が小さな盾を放り投げると、盾が巨大化する。
その巨大化した盾を帝国重装騎士団長が持って構える。
「他は後ろにおれ!
帝国重装騎士団長は巨大化した盾を強化して、アルトの特異能力を受ける。
「ぐ、ぐぐぐぐぐ」
旋風が盾にぶつかるけたたましい音と共に、とてつもない衝撃が帝国重装騎士団長の持っている盾に伝わり、帝国重装騎士団長の体が少しずつ後ろへ下がる。
「がっはっはっは! 次で殺すぞ! 上級特異能力! 豪斧無双!」
振り回せば振り回すだけ
「も、もう……持たん! 吾輩から離れるのだ!」
帝国重装騎士団長が叫ぶと同時に、巨大な盾は砕かれ、旋風が帝国重装騎士団長を蹂躙する。
旋風が直撃した帝国重装騎士団長が着用するフルプレートの鎧は、一撃で破壊され、あらわになった鎧の中の無防備な体を旋風が何度も貫く。
「吾輩……吾輩は……」
帝国最硬の男は無慈悲な旋風により命を落とす。
「あと三人」
アルトは
「逃げてもあの旋風からは逃げられないわね。せめてグレンがいてくれれば……」
「鎧の騎士さんまで……私が、私が弱いから……MPさえあれば……」
「正直、重装騎士団長で止められない攻撃を、私がどうこうとはいきませんね……」
「まぁ敵の戦力を見誤った結果だな。彼を知り己を知れば百戦なんとかってな、ビジネスでも重要なことだぞ」
三人は声のする後方を振り向く。
「だが、これから色々やっていく上での課題点が見えた。ライン作業をどう効率化するかとかは得意だが、こういう部分は未知数だったからな」
声の主の姿を見たエポナとミーシャは同時に膝をつきこうべを垂れる。
二人の動きで悟った帝国魔装騎士団長も慌てて二人の真似をする。
「内線をつなげ!」
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