第20話 アルト・ウォルター
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共和国と帝国騎士団の連携に、聖王国と王国の連合軍は崩壊寸前となる。
一度は門前まで攻めよったが、中央はグレン達に抑えられ、右側の聖王国軍は帝国近衛騎士団と帝国魔装騎士団によって崩壊寸前。
左側の聖王国軍は帝国重装騎士団の破壊力にエポナ達の速さが加わった事で、すぐに崩壊するのは目に見えている。
一足先に王国本陣へと向かった帝国近衛騎士団長は、ミーシャの補助魔法を受けて単騎で本陣前約一万の王国兵を掻い潜り、王国本陣へと無傷で到着した。
「やっぱ補助魔法って便利だなぁ。帝国も補助魔法をもっと研究してくれたら、前線の兵士の死亡率も下がると思うんだけど。そう思わない? 元勇者パーティ狂乱の戦士、アルト・ウォルターさん」
「がっはっはっは! よく単騎でここまで来たな! お前が帝国最強の帝国重装騎士団長だな?」
「え? それ先代の話だよね? 今の帝国最強は近衛騎士団の団長の僕だけど」
はて、とアルトは首をかしげる。
「そうだったか。がっはっはっは! 騎士団長ならどれも同じよ!」
「なんだ、伝説の戦士も老いればただのおっさんなんだ。あんたが大将で間違いないね? その首、もらうよ」
帝国近衛騎士団長は槍をアルトに向ける。
「がっはっはっは! 面白い、面白いなお前! 俺と戦ってもし生きていたら部下にしてやってもいいぞ! 美人な女も好きなだけくれてやる!」
帝国近衛騎士団長は先の戦闘、右側で共和国を助けた時も、一切殺気を放っていなかったが、アルトの言葉を聞き、中央で戦っているグレン達にも感じられる程の殺気を放つ。
「あんたは女性を物扱いするタイプだね? そういう奴が! 僕はいっちばん嫌いなんだよ!」
高速で突進する帝国近衛騎士団長の突きを、アルトは
「がっはっはっは! 若いのにやるな! ふうんっ!」
アルトは
「なんて馬鹿力だよ……」
帝国近衛騎士団長はアルトの一撃を槍で受けたが、手が痺れて槍を持っている手が握ったまま動かない。
「がっはっはっは! 体ごと持っていくつもりで、振るったんだがな! 俺の一撃は一つ
槍を後ろへ下げる帝国近衛騎士団長。
「防御ができないなら、攻撃される前にあんたをやるだけさ!
大気をも切り裂く突きの衝撃波がアルトの鎧に直撃した、のだが。
「がっはっはっは! 槍系統の攻撃ではこの鎧を貫けないぞ! 俺の間合いの敵は槍だけだからな、これぐらいは準備する」
「あれは槍返しの鎧! 実在したんだ……」
帝国近衛騎士団長が待つ技の中で最強の
「なら、隙間に槍を通すだけさ! 特異能力!
手に持っている槍の形状が変化する。
「がっはっはっはっはっはっは! その間合いでは無理だぞ?
アルトが
「ぐっ……」
宙に浮いた体はそのまま地面へ転がり落ち、帝国近衛騎士団長は軽い脳震盪を起こす。
ふらつきながらも立ち上がった、帝国近衛騎士団長の後ろから声がする。
「近衛騎士団長、後は吾輩に任せるのだ」
「いえ、ここからはこの私、魔装騎士団長に任せてもらいましょうか」
「何を言うか! 武人たるもの伝説の戦士とあいまみえるのは誉である! ここからは吾輩の戦場だ」
全身フルプレートで覆った、巨大なスピアを持つ重装騎士団長と、体のあちこちに自らが考案し、作り出した魔防具を着用している魔装騎士団長が到着した。
「もう着いたのか……いや、良かったと喜ぶべきだよな」
帝国近衛騎士団長は槍を握り直して、二人の騎士団長に声をかける。
「あれは槍返しの鎧、槍系統の攻撃は通じない。それに
「ほほう、いつも気まま勝手の貴公がその様な事を言うとは。明日は槍でも降るんじゃないのか?」
「ですね、いつも独断専行で後方の我ら魔装騎士団は、いつも迷惑を被っていますからね」
遅れてエポナ達も到着する。
「槍が通じないなら私のレイピアで貫くわ!」
「エポナさん、恐らくあの鎧は刺突系統の攻撃が効かないのだと思いますよ」
三帝騎士団とエポナ達が合流した事により、アルト包囲網が完成する。
「がっはっはっは! さすがにこの数は面倒だ! 久しぶりにアレを使うか」
アルトは
「
アルトの体がみるみる内に大きくなり、身長は四メートル程にもなり、見た目はまさに鬼の様なものへと変貌して
「さぁ、殺してやるぞ」
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